ハリウッド三幕構成で分析するTVアニメ

志水鳴蛙

ハリウッド映画脚本の三幕構成

 ハリウッド映画のエンタメ作品の脚本は標準化が進んでいて、三幕構成という形式で書かれることが当たり前になっています。すでにご承知の方にはいまさらかもしれませんが、まず映画の三幕構成について自分なりに説明してみます。


(もうご存知の方は以下は飛ばして、次のエピソードに進んでいただくこともできます。)


 例えば2時間の映画なら、次のように時間の配分までほぼ決まっています。

・最初の30分(全体の1/4)が第一幕

・次の1時間(全体の1/2)が第二幕

・最後の30分(全体の1/4)が第三幕

(ただし第三幕を短めにすることも多いようです。)


 少し具体的に内容を見てみると、第一幕は導入部です。

 作品の世界観と主人公や主要登場人物が紹介されて、物語の発端となる事件や状況が提示されます。そして第一幕の最後で、主人公は自分の意思で物語に踏み込んでいく行動を取ります。これを転換点(第一ターニングポイント)といい、ここで導入が終わります。


 第二幕は展開部で、前半と後半に分かれます。

 前半では、主人公はおおむね順調に障害を突破して物語を前に進めます。ここでサブキャラクターを登場させることもよくあります。主人公がサブキャラクターと知り合うことも、観客には「物語の前進」と認識されます。逆に、主人公が物語のゴールにつながらないような行動をしていると、観客は「話が進まない」と不満を感じるようです。

 ここで主人公が失敗することもありますが、あまり深刻な事態にはつながらず、主人公は前向きな意志を失いません。


 第二幕のちょうど真ん中から後半になります。後半は主人公が苦境に追いやられるパートです。前半と後半の転機を中間点(ミッドポイント)といい、映画の尺全体の真ん中でもあります。ミッドポイントはショッキングな出来事として演出され、観客に「空気が変わった」ことを印象付けます。ターニングポイントとミッドポイントの違いですが、ターニングポイントは主人公の意思と行動によるのですが、ミッドポイントは主人公の意思とは関係なく起こることもあるという点だと思います。

 第二幕の後半では、敵は今までよりスケールアップし、味方は内部分裂して足並みが揃わず、今まで主人公を導いてきた頼りになる人物が退場、主人公が挫折しそうになる、といったことが起こります。ドン底まで追い詰められた主人公は、二度目の転換点(第二ターニングポイント)で大きな決断を下し、第二幕が終わります。


 第三幕は大まかに言ってクライマックスとエンディングに分かれます。

 クライマックスでは物語の中で最大の危機が迫りますが、第二幕後半の苦境を切り抜けた主人公にはそれを打破する力が備わっています。苦闘の末、主人公は危機を脱して物語上のゴールに到達します。

 クライマックスの後がエンディングのパートです。ここで主人公が頑張った結果が示されます。主要登場人物たちそれぞれの結末、そして世界が今までより良くなった(わずかだとしても)ことが描かれて、物語が締めくくられます。


 映画の脚本術としてはもっと精密に細かく分けるやり方もありますが、ここではかなりザックリした考え方でいきます。好みにもよるかもしれませんが、個人的にはシンプルなやり方のほうがやりやすい気がします。


 それでは次に、三幕構成の仕組みをもう少し詳しく考えてみることにしましょう。

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