第27話 地獄の底

遥か遠くルシフェルが嗤っている

凍結した体を捩りながら

貴様らは私に似ていると

狂い咲く彼岸花を愛でながら


ルシフェルが嗤っている

凍結した体を痙攣させて

天使の美しい声音のまま

貴様らはやがてこちらへ来ると

歓迎の祝詞を呟いて


耳元でルシフェルが嗤っている

冷たい手を我が頬に添えながら

ガブリエルすら忘れた優しき笑みを

冷徹な空気に馴染ませて

やっとこちらへきたか羊たちよと

優しい声音に地上で恐れられし瞳を覗けば

我々には神々の眼差しよりも心地よい


「貴様らは我らが子よ

神を目指す同志よ

地の底にて

共に永遠の時を過ごそう

退屈な天界など捨て置いて

元より居心地などよくなかっただろう?

無知のアダムとイブは幸福だと思うか?

林檎の甘美さを知る者よ

貴様らは神の道具たる天使を既に超えり」


揺蕩う声に酔えば

バッカスの美酒すら捨て置いて

我々は幻覚の酩酊に埋もれる


凍る体を尻目に

頬を撫でられながら

賛美歌を、口遊んで

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