第15話 心象世界の川底

我が川底には

物言わぬ美女が眠る

胸に落ちた椿を数多抱え

その美しい肢体を川底に横たえている

彼女は微動だにせず

ただその美しさをもってして

私を完全に支配する

彼女は言葉を持たず

ただその在り様を透明な水中に埋める

私は彼女に触れたいと願うが

それに届くことはない

しかも私は知っている

それに届いてはいけないということを

私が生きている限り

彼女は我が心象の川底で

ただ美しく在る

決してその儚い瞼を

開くことなどせずに

私に彼女が描けたのなら

私が彼女の全てを言葉にできたのなら

そう願いながら

私は今も彼女に魅入っている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る