第2話 烏揚羽

 烏揚羽が飛んでいる

 似合わぬ可憐な花の上を、生きづらき陽光の下を

 嫌われ者につきものな色を纏って

 誰彼からも好かれる揚羽は誇らしげに舞う

 それを傍目に不吉な羽根を持つ彼は

 孤独に影に紛れて飛び去っていく

 何物にも留まる事なく

 何物に捕まる事もなく

 ああ、虫取り籠を抱えた子供でさえ

 彼には目をくれる事もない

 知らぬ間に揚羽は捕まってしまった

 彼はそれを傍目に廃墟の影へと飛んでいく

 

 彼を捕えるものは確かに幸運であろう

 しかし、それに気づくものはどこにもいない


 

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