第21話 最後のページに

『私からの手紙です』

そう言って彼女は僕に手紙を渡し小屋をいきよいよく飛び出て森の中へ走っていった。

僕は一歩も動けずただ森の中へ消える彼女の背中を見続けた。

鈴がいなくなり何もすることがない僕は手紙を見るしかなかった。何が書いているなんて予想もできない。正直怖い。だが向き合わなくちゃいけない。恐る恐る手紙を開いた。

『君へ。

この手紙を読んでるって事は私は全てを忘れちゃったってことなのかな?約束したのにごめんね。ちなみにこの手紙は君とここに来て初めてお風呂に入った日の夜に書いたんだよ?そういえば君がなんでここに来たのかは覚えてる?』

覚えている。なんなら最初はその事しかわからなかったんだから。自殺するために僕はここに来た。その時の僕は誰からも愛されずなのに一人では生きていけない。しかも僕は半年後に死ぬ。それなら自分で死んでやろうと思った。

『まず、君の病気は記憶がなくなっていくというものです。それのおまけに心臓も悪く半年後に死ぬらしいです。正直その話を聞いた時は信じられませんでした。毎日お見舞いに行ったのに君の目からは光がなくなっていって、何とかできないかなと思って私はこの森に来た。』

理解できない。僕は病気で鈴の存在を忘れたのは分かるがなんでこの森と関係が。

『この森は自分の寿命を相手に分けられるっていう噂があるって聞いたことがあって私はこの森に自殺をしに来た。今日話したよね?私は自殺をしたかったしそのついでに君が長く生きられるなら私にとっては得しかなかったから。』

バカか。僕がそんなことで喜ぶと...

『それで自殺を死に来たら本当にこの森に君が来て私はどんどん記憶をなくしていって体も弱くなっていって私はもう死ぬと分かったからこの手紙を書きました。辛い思いさせちゃってごめんね』

違う。一番辛いのは鈴だ。鈴は最初何もわからない僕に優しく接してくれて。それなのに僕は鈴が僕のことを忘れたくらいで嫌いになって...。君は僕を助けるために、僕を光らせるために君は自分を曇らせて。この森とともに消えていく。そんなことあっていいのか。

『私がこの森から消えると君はこの森から出て普通の暮らしができるようになってるんだと思います。だから私の分まで頑張って生きるんだぞ?約束だからね』

涙が止まらなかった。鈴は自分のためにじゃなく僕のために...それなのに僕は弱くて、逃げて、忘れて、ぶつかって、

『最後に。1度も名前で呼ばなくてごめんね。実は忘れないようにちゃんとメモをとってたんだよ?えらいでしょ、この手帳の1番最後のページに書いてるよ、見てね。勝手なことしてごめんね。今までありがとう。』

バカ。バカバカバカ。お礼を言わないといけないのは僕だ。謝らないといけないのは僕だ。僕は君をどうしたら救えるんだ。どうすればまた君と...

僕はゆっくり1番最後のページを見た。そのページには僕の名前が書いているだけのはずなのに余計な5文字が書かれていた。

『愛人(まなと)へ。大好きだよ』

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