第98話 2ー3

 日は変わって、平日。その中休みに大峰さんに生徒会室へ来るよう、メールで呼び出しを喰らっていた。こっちとしても言いたいことがあったからちょうどいい。

 ご飯も生徒会室で食べて良いということだったので、弁当は持ったまま生徒会室へ向かう。天海や祐介にも用事があると言っていつもの夕食は断っていた。

 廊下を歩いていると、もう雰囲気だけなら文化祭一色だ。劇をやるようなクラスは中休みでも練習していたり、ダンスをやっていたり楽器を鳴らしていたり。あとはさっさとご飯を食べて装飾を作ったりと彩り豊かだ。


 ウチのクラスは順調に準備が進んでいるため、中休みを使ってまで用意はしていない。始業前に少しと、あとは終業後の放課後で準備を進めている。教室の飾りつけと大きな看板を一つなのでそこまで大変じゃないからだ。

 むしろ服飾班が大変というか。持ち込みの衣装をしたり、買った衣装などもあるが、それらを手直ししたり改造したり。俺やミクはそこまで凝った衣装を着ないので楽なもんだ。ぶっちゃけ買った物を着回すだけだから。

 そんな校内の様子を見ながら、少し離れた生徒会室に着いた。ドアを三回ノックすると返事が聞こえたので中に入る。


「やあ、明くん。珠希ちゃん。いらっしゃい、ボクの城へ」

「いつからここは大峰さんの城になったんですか?生徒会長たる僕の城だと思うんですが」

「ソウタくんは堅いなー。言葉の綾だよ。さあ、座って座って」

「「失礼します」」


 生徒会室にいたのは大峰さんと都築生徒会長だけだった。他の生徒会役員はいないらしい。ミクと二人で返事してから席に着く。この二人とはどういう意味なのか。二人しか必要のない簡単な事柄なのか、この二人ではないといけない重要事項なのか。


「ソウタくん、もうすぐ選挙で会長じゃなくなるじゃん。君の城なのはあと二ヶ月ないんだゼ?」

「それでも今は僕の城なので。二人とも、ご飯を食べるといい」

「では遠慮なく。式神たちはもう食べ終わってますので」


 ゴンたちは授業中に食べさせた。俺たちの護衛は交代制で行って、順番に食べさせていた。今回の話がどういうものになるかわからなかったし、この生徒会室を埋めるわけにもいかなかったという理由もある。

 ゴンだけは実体化して、机の上で寝そべった。俺たちの食事の邪魔にならない場所を選んでくれるのはありがたい。


『で?話は「かまいたち事件」か?』

「ご推察の通り。プロが十二人も殺されるのは異常だからね。ボクたちには関わりなさそうだけど、一応わかったこともあるからその報告だよ」

「ありがとうございます」


 うーむ。調査しているってことがどこからか漏れたか。いや、まあそれはいい。これが知っている情報とかじゃないと良いけど。大峰さんは星見じゃないし。

 頭を下げていると、一つの資料が配られる。その資料はいわゆる、三年前のある事件に関わったプロの陰陽師のリストだった。


「いきなりそれが呪術省のボクのオフィスに投函されていてねえ。何でこんな前の構成メンバーがって思ったけど、調査していく内にわかったよ。解説すると、その灰色の枠が三年前の死亡者。黒色の枠が今回の『かまいたち事件』の被害者。他はまだ殺されていない人だね」


 これは知らなかった情報だ。リストアップされていたのか。三年前の時点で死者も出しているし、二十人近くの大部隊だ。それも場所は奈良県。出撃要請を呪術省に出さないとこれだけの大人数は遠征に出せなかったのだろうか。

 もう、色付きじゃない人間は三人しか残っていない。三年前に死んでいるのが三人しかいないというのが、なんというか。戦える神ではなかったのか、選りすぐりだったのか。

 そこら辺はプロじゃないからわからないな。名前見ても実力はわからないし。この事件の事ちょっとネットで調べたけど、ものの見事に英雄譚として語られているだけで、詳細は全然出て来なかった。関わったメンバーも一人を除いて、まるでわかっていない。


「これは、どこからの情報提供ですか?まさか内部告発?」

「ううん。株式会社芒野ってところの封筒に入ってた。民間企業みたいだね。実績も数多く上げてるし、信用しても良さそう。ボクの正体も掴んでるってことはそれだけ優秀だってことの証左だからね」

「そうですか」


 まあ、大峰さんのことを調べ上げたというよりは、直接戦った相手だから知ってるはずだよな。これを送ったのも姫さんだろう。この情報を得てどう思うか、大峰さんを試しているんだろうか。


「こんな資料が出てきたってことは、犯人の特定は済んでいるんですか?」

「いいえ、まだよ。この生き残っている人が口封じから始めたのか。それともこの英雄譚に巻き込まれた人がいたのか、それすらわかっていないもの。だから、今は三年前の英雄譚を調査中」

「そもそもこの三年前の英雄譚とやら、どういう経緯で起こった出来事なんですか?こういう結果を残しましたっていう報告ばかりニュースで取り沙汰されていて、詳細がどこにも残っていない覚えがあります」


 三年前は本当にこの話題で盛り上がった。現代の英雄登場、とかって新聞で大きく見出しが出ていたほどだ。京都にも優秀な陰陽師がいるんだなと思ったし、おそらく強力な妖を討伐したのだろうと思っていた。

 神社を根城にするとは考えたなーとか思っていたが、当時の父さんが暗い顔をしていたことを思い出す。あの時からすでに知っていたってことだ。


「表向き、このメンバーの誰かが神社の中に住む妖を見つけて、このメンバーを編成して出撃したってだけ。それ以上調べても出て来ないのよね。メンバー以外に被害者がいたのか、周辺住民で行方不明になっている人物はいないのか。それもわからないのよ」

「それでまかり通ってしまうのはどうなのでしょうか……?」


 ミクの言う通り、陰陽術に関わる全ての情報を取り纏めている呪術省でそんな不鮮明な事件の概要しかわからないというのはどうなのだろう。本当にハリボテの塔だな、あそこ。

 あの兄と妹はあのまま逃げて、天竜会に保護されたのだろう。あの神社と一緒にあった母屋で暮らしていたのだろうし、住民票もあの住居にあったはず。学校や市にもそう届け出しているだろうし、少し調べれば四人の人間があそこからいなくなっているはずなのに。

 まだ生きていた兄と妹はいい。ちょっと行方不明になって、天竜会に保護されたと言い訳が利く。でも、二人の両親はそうもいかないはずなのに。そんな杜撰な管理をしているのか、あるいは。


(呪術省が全てを知っていて揉み消したか……。おそらく神と知らず、妖が人間の姿をして紛れ込んでいた。だからそんな人物初めからいなかったことにした。そういうことだろう。……ああ、嫌だな。またどす黒い感情が、腹の底から湧き出てくる)


 この負の感情は貯めすぎたらダメだ。陰陽を司る者として、どちらかに偏るなんて許せない。でも発散するとなると、本当にAさんたちについていくしかないからなあ。それは腹をくくったとはいえ。

 八つ当たりではないけど、大峰さんには元々話すつもりだったんだ。大峰さんにも呪術省が無能だと伝えておこう。


「管理体制が甘いのは脇に置いておきましょう。大峰さん。今回の一件、見逃しません?もう収束しますよ」

「……それは、ここにいるあと三人を見殺しにしろってことかな?随分と残酷なことを言うんだねえ、難波の次期当主様は」

「だって、神殺しをどう許容しろと?大天狗様に喧嘩売る前に、土地神を殺した連中ですよ?五月の事件の一端は彼らにあると言ってもいいのに」

「…………なんですって?」


 大峰さんと都築会長の表情から血の気が失せる。ちょっと過言かもしれないが、大天狗様が襲ってきた理由の一つでもあるのは確かだ。たぶん三年前以外にも土地神を殺していそうだが、契機の一つには違いない。

 マユさんたちも知らなかったんだから大峰さんがわかるはずないか。星見で、しかも神気を感じ取れる人間じゃないとわからない。大峰さんはそういう意味じゃアウトだろう。むしろ神気を感じられて、星見でもある人間なんて俺と父さん、あとはAさんくらいじゃなかろうか。

 他に星見の人を知らないだけだけど。姫さんは今星見ができないとか聞いた覚えがある。


「殺された異形は妖ではなく、土地神だったというだけです。神社で暮らしているのも当たり前ですね。敬われている神そのものなんですから」

「明様に星見の内容を共有させていただきましたが、確実に神の二柱です。むしろこの三人を告発すべきとさえ、わたしたちは考えています」


 気付いてないんだろうけど。神という存在に。

 だから何度も間違える。間違えた後に、次は間違えないようにすればいいのだけど、その反省が見られない。だから大天狗様が出張ることになったというのに。


「……『彼』は、神と気付いていたと思う?」

「気付いていないでしょう。神気に気付けるのは数少ない人間だけですから」

「ああ……。天狐殿や君たちにうっすらと纏われているものだろう?そうか。これ、見える人と見えない人がいるのか。てっきり僕は霊気が見えるからほとんどの人が見えているものだと思ってたけど」

「え、ソウタくん見えるの?」

「むしろ大峰さんは見えないんですか?」

「あいにく眼は良くないんだ」


 へえ。都築会長、神気感じ取れるんだ。大峰さんは感じ取れないと。それじゃあ姫さんに勝てるわけがない。大峰さんも神気はわずかながら持ってるのに、制御がまるでできてないのか。

 姫さんは神気も別格で持ってるからなあ。今ではミクの方が上回っているけど、戦い方とかそういうものも含めたらミクや俺では敵わないだろうし。


「『彼』の眼は知りませんけど、何にせよ自業自得です。『かまいたち事件』の犯人は正義の執行者、と言いたくありませんけど、理はそちらにあると思います。なので、関わらないことをお勧めします。このリスト以外の人を殺したら、その時は殺人犯として捕まえれば良いと思いますよ」

「明くんは星見で、今回の犯人の顔わかるのかなー?できたらお姉さんに、珠希ちゃんにやったように映像で送ってほしいんだけど?」

「そんなことしなくても『彼』の行動を見張っていればわかると思いますよ?狙われる人物がわかっているんですから、もし捕まえるなら網を仕掛けておけばいい。犯人を捕まえてほしくはありませんけどね」


 難波家の立場としても、表と裏の橋渡しとして彼の行動を止めようと思わない。むしろそんな大罪人を現行法で裁けない代わりに裁こうとしているのだから、支援すらしようと思えるほどだ。

 だってこれ、悪霊憑きを保護することとぶっちゃけ変わらないし。でも彼のバックには天竜会というとんでもない組織がいるんだから大丈夫か。


 この情報を持ってどうするかは大峰さん次第だ。俺とミクは今回の一件から完全に手を引く。残った三人は懺悔しながら殺されると良い。それだけ神殺しは大罪なんだから。不敬を通り越している。

 で、だ。「かまいたち事件」は置いておこう。だってこんな話をするために都築会長がいるわけない。だってまだただの生徒会長で、学校に関わる事件ではないのだから、都築会長が解決のために動く理由がない。

 なら、別件があるはずだ。


「『かまいたち事件』の話題も本題ではあるんでしょうけど。生徒会としての本題はなんですか?他の役員を除いたのは『かまいたち事件』のせいでしょうけど、何かしら他にも話すことがあるんですよね?」

「流れを読んでくれる子は楽でいいわね。そう、明くんと珠希ちゃんにはお願いがあるのよ。ソウタくんよろしく~」

「はいはい。二人とも、ちょっとこっちから中庭を見てくれるかな?」


 都築会長に促されて弁当箱に蓋をしてから窓際に立つ。そこから見えたのは作成中の大きな正方形の舞台だ。おそらく吹奏楽部とかが演奏で使うステージだろう。


「見ての通り中庭では大きなイベントも多く予定している。文化祭だからね、芸術的なことはよくやるんだ。講堂ではプロの陰陽師を呼んで講演会も開かれる。ああ、さっきの三人は来ないからかまいたちは来ないと思うよ」

「それは良かったです。まさか文化祭で殺人事件が起こるとなると、印象は最悪ですからね」

「不幸中の幸いだね。で、だ。これは僕が聞いた情報じゃないから確かなものじゃないんだけど。二人はとある芸術が得意だそうだね?何でも家の集まりでよく披露しているんだとか」


 それを聞いて俺たちは大峰さんの方を振り返る。さすがにそんなことを都築会長が知っているはずがないだろう。聞いた話というのも頷けるほど知られていないことだ。だからおそらく情報源たる人物へ視線を向ける。

 大元であろう星斗のことは後でぶっ飛ばすとして。向いた先の大峰さんは口笛を吹いていた。


「……大峰さん?」

「だって聞いちゃったんだも~ん。難波の家系がまさか神官の系列だったなんて知らなくてさ。星斗さんに教えてもらっちゃったんだから、利用しない手はないじゃん?」


 星斗さんって。というか、にやけ始めたぞ、この二十歳。年齢詐称のロリババア先輩がウチの星斗に懸想してるなんて知りたくなかった。星斗は何故婚約者がいると公表していないんだろうか。

 でも今星斗はかなり注目されているから、婚約者がいると知られたら呪術省のイメージからしても不味いのだろうか。広告塔って大変だな。でも教えとかないと大峰さんが悲しむというか……。


 別にいいか、ロリババア先輩だし。五神だし。というか、俺の目から見ても夢月さんに敵うはずがないからな……。なんというか、大峰さんはこうやって頬を緩ませているのを見てようやく女の人と認識したというか。女性としての在り方としたら夢月さんの圧勝だ。

 それに星斗の方がべた惚れ。勝てるわけがない。この人が失恋しても別にどうでもいいかな。俺としたら星斗は夢月さんと結ばれてほしいし。


「……まあ、本家としての務めですから。できますが。それをあの舞台でやれと?」

「珍しいものなんでしょ?ボクらもめったに見れないものだし、せっかくだから見たいなって」

「めったに、ではなく絶対に見られないものですよ?大峰さんが難波の分家に嫁入りしない限りは」

「タマ、難波の分家でも見られない可能性あるからな?断絶とか、そもそも交流をしなくてもいい家とか、当主の意向で呼ばない家もある。タマだって一応分家だったけど呼ばれなかっただろ?」

「それもそうですね。じゃあ大峰さんは絶対に見られませんね!」

「それは遠回しに依頼を断られたってことかな⁉」


 やるメリットが結局客寄せパンダだろう?やる意味ないじゃないか。敬う相手がこの場にもゴンがいるから儀式を執り行うこと自体は意義的なことではあるけど、それを文化祭で、人前でやる意義はない。

 ゴンもそれを聞いて一つあくび。あの祭壇でやらないのであれば、もしくは俺の実家で執り行わなければ、対象はゴンにしかならない。この場合、ゴン次第だ。


「俺たちの神様次第ですね。仮にも神聖なものなので、その神様の要望を全て叶えた上でやらないとマズいですし」

「君たちの神様?それって──」

『オレだな。オレが満足できない舞台なら、許可しねーぞ?』

「お稲荷様奉納しますよ?」

『カッ、安易だな。おい、都築。あの舞台はどこまで弄っていい?』

「予算が許す限りならいくらでも。ああ、間に合うことが前提ですが」

「あれえ?やっぱりボクってスルーなのかい?」


 ゴンには稲荷寿司をあげておけばいいというのは一理ない。それで良い時もあるが、今回は難波の儀式だ。それに神聖なものって言っているのに、物で釣ろうとするなんてダメだろう。それはそれとして稲荷寿司は貰うんだろうけど。


『なんてこったない。オレが入る程度の小さな社と、屋根をくっつけてほしいだけだ。今作ろうとしている屋根を、もう少し舞台より広めに作ってほしいってだけ。難しくねえだろ?』

「その程度ならすぐです。それだけで例の物をプログラムに入れていいので?」

『あとは練習を完全に非公開にすること。だからその時間の確保と、ある物を配る許可くらいか。そうすればこいつらにやらせてやってもいい』


 ゴンが言うある物。迎秋会に関連する物で、配るとなると一つしか思いつかない。いや、種類は二つほどあるけど。


「おい、ゴン。まさかあれ配るのか?」

『子どもはそういうの好きだろ?特にこいつら全員思春期じゃねえか』

「……父さんに確認取らないとマズいだろ。数の問題もある」

『康平ならすでに用意してあるぞ。もうお前らに送る準備も出来てる』

「ああ、クソッ!本当に千里眼と未来視は面倒がなくて逆に面倒だ!」


 父さんの能力が忌々しく思えてしまう。それはつまりゴンが許可を出してしまい、俺たちがやるということが決定づけられているということだ。あーだこーだ言っても意味がないという証左。

 にしたって、何であれを配るんだか。ゴンはそこまで祭りとか好きなイメージなかったけど。


「何でそんな物配るんだよ?」

『受け取れなかった奴らに対して、お前らの教室で売り飛ばす。で、儲けでオレにたらふく飯を食わせろ。そうでもしねえとオレが無償で働くことになる。難波でやるならまだ想いも受け取れるが、今回やったってそんなもの思う奴は皆無だろ?豊穣の神たるもの、等価交換は守らねえとな』

「俺たちはゴンのためなら働くけどさ。ゴンが何でそこまで乗り気なのかわからないんだけど?」

『お前ら、来年も同じように平穏な文化祭が送れると思ってるのか?今年以上に世界が揺れたら学校どころじゃないからな。これでもオレなりの気遣いなんだぞ?』


 今年は激動の一年だからなあ。これ以上となると、たしかに学校生活どころじゃなくなるかもしれない。最後の文化祭になるかもしれないから、できるだけ楽しんでおけってことか。それを聞いた他の人たちは苦笑していたけど。まあごもっともというか、来年が無事であるという保証はない。

 全然解決しない妖の事件にAさんたち。そして神々の今後の動向。人間の間でも起こる事件の数々。これが激化しないなんて断言できないんだから。


『やれることはやっておけ。あと瑠姫。お前も参加しろよ?ここに里美も康平もいないんだからな』

『あちし?まあ、二人がいないならやるしかニャイけど……。っていうか弾く物は?さすがに坊ちゃんたちも持ってきてないし、あっちから送ってもらうわけにもいかニャイはずだけど?』

『それならオレに当てがあるからな。ちょっと貰ってくる』


 そう言っていなくなってしまうゴン。はい、決定。ゴンの言うことなら受け入れるけどさあ。どうせこんなことにお客さんは集まらないだろうから、精々気楽にやらせてもらうさ。瑠姫も強制参加で不服そうだが、ゴンの言葉にはなんだかんだで逆らわないからなあ。

 序列って怖。


「……結局やってくれるって方向で良いのかな?」

「やりますよ。都築会長。本番のプログラムは準備と撤退作業に前後一〇分、演目自体で三〇分。あと、できるなら夕方がいいんですが」

「二日とも時間帯は同じでいいかな?」

「はい。それで調整してくだされば。練習時間はそちらで決めてください。おそらく夜にやることになるでしょうけど」

「それも申請書をこちらで出しておくよ。うん、楽しみにしてる」


 楽しみにされてもなあ。何で客寄せパンダをやるつもりなかったのに結局やる羽目になるなんて。ミクにそんな格好で人前に出すつもりなかったのになあ。


「タマ、決まっちゃったけどいいか?」

「大丈夫ですよ?むしろこれでクラスの売り上げに貢献しましょう?そのままの格好で接客したらもっと売り上げ上がると思いますし」

「……もしかしてタマって結構お祭り好き?」

「はい!楽しみですよ、文化祭」

「ならいいか……」


 それは知らなかった。地元の祭りとかは何回か行っていたけど、人並みにしか回らなかった覚えがある。でも今回忙しくなると、文化祭自体を回る時間が無くなっちゃうんだよな……。ミクとの文化祭デート楽しみだったんだけど。

 ああ、これが決まったこと天海に伝えないと。正確なタイムスケジュール完成してなければいいけど。完成してたら直させるのが忍びない。

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