第49話 4ー4
「おや。今回も一人か。私の傍の鬼が見えていないのかな?」
「僕はあなたに、聞きたいことがあるだけだ」
Aと伊吹が待機している場所へ、式神の鷺に乗って現れたのは土御門光陰。伊吹は変わらず興味なさそうに寝そべっているだけ。Aとしても、来訪者が明たちの誰かではなくてがっかりしたところだ。
それ以外の知っている人物が訪れても本当に興味がないだけ。戦闘能力でもなんでもいいので、驚かせる何かがあれば別だが、その興味の対象になったのも二人だけ。それ以外は有象無象だとこの一時間程度で思っていた。
「聞きたいこととは、いつぞや告げた祝詞のことか?あれには一切の偽りがないのだがな。確認してみたところで、私と同じことしか言わなかっただろう?」
「……そうだ。あなたの告げた内容は正しいらしい。だからこそ、尋ねなくてはならなかった。あなたは日本を破壊するつもりか?」
「日本の定義にもよるが。むしろ壊そうとしているのは……ふむ。これも定義によるか。ではお前たちが秘蔵している『婆や』は何と答えた?私と同じ未来を述べ、そして私のことは探れないと答えたのではないか?」
「婆や」とは、土御門が秘密裏にしている星見のことだ。それこそ当代一の星見とされる康平よりも、星見としての才能は上。むしろ、星見以外の才能は全くない存在だ。
その「婆や」はいつから生きているのかわからないが、それだけ長く生きて土御門に仕える存在。その「婆や」が未来視を外したことはない。そんな存在がAと同じ未来を視て、さらにAのことを探れなかったということはAの方が星見の才能があるということになる。
「……そうだ。『婆や』のことも知っているなんて……。あなたたちは呪術省をどうしたいんだ?」
「さっき言っただろう。呪術省は潰す。一千年経っても魑魅魍魎の問題も片付けられない。妖のことも土地神のことも、京都のこともだ。そんな体たらくで今の世を見た安倍晴明はどう思うだろうな?──ああ、土御門に任せて失敗だった。そう言うのではないかね?」
光陰はそう言われても、魑魅魍魎のことしか理解できなかった。魑魅魍魎のことは事実であっても、他の妖や土地神、京都のことと言われても心当たりがなかった。
妖や土地神という言葉は文献に残されていても、その存在が現在現れたという報告はない。京都に関しては何を指しているのかすらわからない。
わからないからその仮定を鵜呑みにする。そんなことできるはずがなかった。
「いや、そんなことはない。今京都が在り続けているのは土御門のおかげだ!軟弱な難波ではこの光景は守れていない!作り上げられていない!」
『そりゃあ、難波の連中だったら賀茂とも協力しねーし、京都を守るなんて考えすら思い浮かばねーだろ。っていうか、今の話は難波と土御門の役割を交代するって意味じゃねえだろ?玉藻の前の封印は、土御門じゃあ論外だ』
寝そべったままの伊吹が呆れながら光陰へ真実を告げる。土御門と難波を交換するのではなく、土御門ではないどこかの名家に任せればよかったという話だ。
ぶっちゃけた話、当時の晴明が土御門を選んだ理由は消去法だ。玉藻の前の封印は難波しか適任がいなかった。かといって京都を放置するわけにも対外的によろしくない。だから土御門に任せただけ。
「ふむ。『婆や』は過去視ができないのだったな?できなくても問題のない術者ではあるのだが。やはり土御門は今とほんの少しばかり先の未来しか見えていない。足元も過去の轍も見えていないのは愚鈍に過ぎるぞ?私が祝詞で告げた通り、まもなく日本に災いが撒き散らされるだろう。──なにせ、今日の出来事で眠っていた存在たちが目覚める。一千年前ですら、霊気と神気の濃度は現在と比べてかなり濃密だった。瑞穂と外道丸程度に手を焼いている現代陰陽師共に、何ができよう?」
「──ッ!やっぱりあなたは未来を視たのではなく、事前に準備していた計画を実行しただけ!」
「どうとでも取り給え。事実、私が想定した未来は現実になった。事象をそこに結びつけるということも一種の未来視ではないかね?なにせ、防ぐ手段も機会もあっただろう?」
光陰が家族にだけ知らせるのではなく、呪術省全体を使ってAのことを探れば何かしらの妨害はできたかもしれない。それこそ、メディアを用いて厳重警戒態勢を敷くこともできたし、さらに遡れば何十年前から活動しているAを止める機会だけならいくらでもあった。
その努力を怠ったのは呪術省と光陰だ。より良い安全を選ばず、Aという起爆剤をずっと放置し続けたのは呪術省側だ。
とはいえ、Aの方も表舞台で襲撃をかます時以外は基本的に裏側に潜って、気配も呪術によって消して存在を感知されないようにしていたが。時たま街にふらっと現れたり、旧知の仲の者たちに会うなどはしていたが。
呪術省がこの数十年で行ったことはAのことを指名手配した程度。その写真や似顔絵も適当で、Aが街中に現れても誰も呪術犯罪者だと気付かないほど。時代が時代とはいえ、そんな杜撰なものを出して追っていましたと言われてもちゃんちゃらおかしい。結果も成果も出ていない。
「『婆や』を超える星見の存在を軽視した結果がこれだ。あと、私が星見かなんて『婆や』の星見を防いでいる時点でわかりきっているだろう?そしてこの現実こそが全てだ。私の駒相手に呪術省は何ができている?これ以降、私を超える存在が群雄闊歩する時代になる。──これで、呪術省とその他の思惑を出し抜いた」
Aは光陰に背を向け、災禍が降り注ぐ京都の街へ向かって両手を広げていた。まるでこの光景を迎え入れているようだった。仮面の下の口角は、ずっと上がったまま。
「さあ、再誕せよ!不本意だが、必要ならば仕方があるまい。私はここを、神魔融合魔境、平安京へ塗り替えよう!一千年という時間の揺り籠よ、混じれ逆巻け産み落とせ!私は神々も、妖すらも利用しよう!正しき理の元に、甦れ。我らが母なる九尾!」
「九尾……⁉まさか、玉藻の前の復活を……⁉」
現代で最も有名な九尾となれば、玉藻の前の名前が上がるだろう。それほど知名度が違う。他にも九尾がいたという記録はあっても、ここまでの大事をしでかして甦らせる存在は他に思いつかないからだ。
そして、同じような方法でその玉藻の前を甦らせようとしていた光陰だからこそ、その研究ばかりしていたからこそ、論理的にできてしまうと理解していた。
「天海内裏!あなたは玉藻の前を世に放つつもりか⁉あれは都を滅ぼそうとした悪魔だ!今この状態でそんなことをすれば……!」
「君の時とは状況が違うと?変わらないさ。君もあの街が百鬼夜行で溢れている最中に玉藻の前を復活させて君一人で討伐しようとしただろう?むしろ今の状況なら、あの時よりも戦力が揃っているではないか。蟲毒を行っているわけでもなし、問題なかろう」
「やめろおおおおおおお!ここで復活させたら、京都が沈む!」
光陰は反射的に呪符を投げ飛ばして、霊気を送っただけ。無詠唱なんてまともにできない光陰では小石を投げつけたのと変わらない。
光陰があの地で玉藻の前を復活させようとした大きな理由は二つ。玉藻の前の魂が眠る地だということと、京都ではないということ。
彼にも郷土愛と土地を管理する名家と同じく土地への誇りを持っている。しかも彼らが管理するのは尊敬する先祖である安倍晴明から任された土地。そんな場所で悪の化身を呼び出す理由はなかった。
だが、彼の反射的な行動によって、この
小石程度の痛みでも、攻撃は攻撃。そして、Aはきちんと始まる前に宣言していた。こちらに攻撃を仕掛けてくればそれ相応の対処をさせていただこうと。
それはどんな意図があれ、攻撃と見做されてしまった。
「伊吹。何故守ろうとしない」
『何で茶番に付き合わなくちゃなんねえんだよ。九尾の復活なんてやろうともしてなかったくせに。そうなるように吹っ掛けたのはお前なんだから、自分で処理しろよ』
「まあな。やる意味がないしこの程度、適当に払える。さて、ではそれ相応の対処をさせていただこうか。伊吹。そこの彼を痛みつけて構わないぞ」
『え、マジ?』
「ああ。ルールを破ったのは彼だ。お前を倒さなくても良いが暴れさせる存在として加入させる」
『イヤッホウッ!あ、でもあれだろ?殺しちゃいけないやつもいるんだろ?』
「例の二人と五神、それらに関する友人以外はどうにでもしろ」
例の二人はAが目をかけているから。五神は京都の結界に関わる。ここで京都の結界を崩壊させては、京都に住む知人が次の日から生活できなくなる。
どうにか生活圏を残して、学校も授業には支障のない程度に壊して夜を終えなければならない。Aにだって制約・制限はある。その中でどれだけの人間がどのようなことをしてくれるのかを楽しみにしているのだ。
切り捨てられる存在は切り捨てる。些事には注意を向けないだけ。
校舎内に放った式神を通して、敷地内にいる生物全員に伝わるように術式を発動させる。
「諸君、頑張っている中ちょっとしたルール変更だ。というよりは、ルール違反をした者がいるので、それなりの対処というやつだ。私の護衛をしていた鬼を投入する。この鬼は倒す数にいれなくていいが、近くにいる者は容赦なく殺すのでそのつもりで」
宣言が終わった途端、伊吹は光陰を掴んで地面に叩き落としていた。折角の暴れられる機会なのでいたぶってから殺すつもりだが、何かの拍子に簡単に殺してしまうかもしれない。
以前は道化として見逃していたAだが、何度も自分の予定を狂わされるのは癪に障る。そのため、今回は伊吹が光陰を殺したとしても何も言うつもりはなかった。
土御門の嫡男だとしても、完全に興味を失っている。Aの求める存在ではなかったことと、このまま呪術省を継いでも変わることはないと判断したためだ。
「つまらないなあ、人間諸君。私が率いる程度の戦力にこれだけ苦労するだなんて。明日からはもっと大変だろう。光にばかり目がくらんで、近くに潜む闇を見失うからこうなる。それに、光とは強すぎる光も容赦なく一絡げにしてしまう。──陰陽を司ることを忘れた人間よ。これは報いだ。これを契機に、もう少し全体を見る眼を養いたまえ」
不敵に笑いながら、Aは千里眼をもって京都はおろか、日本中を俯瞰する。
徐々に神気が日本を包み始めている現状に、気付く者はたった一握り。他の者たちは今目の前にある騒動に目を向けているだけ。
日本は平安の世へ、流転する。
────
近くで物を盛大に壊す音と、その余波か土煙があちこちで起こっている。さっきの宣言と辺りの状況から、やらかしてくれたのは土御門光陰くんだね。まったく、やってられない。瑞穂さんを相手しながらあの鬼の始末までは手が回らない。
何で手を出したのかわからないけど、それで死なれても自業自得のような気がする。さすがに自分で火種を産んだのなら、その対処まではボクの仕事じゃない。そこまで過保護になる理由がない。
ソウタくんと身体を合わせて内緒話をする。瑞穂さんは余裕そうだ。
「ソウタくん、残りの魑魅魍魎は?」
「あと七十体って言ってますよ。三十体くらいしか減ってないですね。おそらく夜明けまであと五時間。ペース的にギリギリですが、大前提として瑞穂さんを倒さないといけないですけどね」
「……もう、やるしかないか。あの子詠ぶと疲れるから、あんまりやりたくないんだけど」
麒麟を呼び出すと本当に疲れる。霊気をかなり持っていかれるのが原因だとは思っているが、本当にそれだけかと疑ってしまうほど疲れる。次の日はベッドから出たくないほどの倦怠感が襲ってくる。
そうは言っても、それしか有効手がないので使うしかない。
「相談終わったん?別に何やろうとしてもええけど、はよしてくれる?こっちは呪術省に絶望与えんといけんのよ。麒麟を無様に倒す方法を何十通りもシミュレートしとるんから。あんさんの得意分野で戦ってあげるさかい、存分に挑んできや」
「……とんだ自信ですね。あなたがボクに全ての分野で上回っているとでも?」
「さあ?やってみないとわからないけど。ただあんさん、星見やないんやろ?先代は星見やったし、それこそ仰山才能があった子やったけど。先代を知っている分、あんさんには期待外れってところや」
「先代と比べるのはやめていただきたいわ。あんな裏切り者」
思わず声が低くなってしまった。ボクだって嫌なことくらいある。その内の一つが先代麒麟と比べられることだ。
ボクも会ったことがあったし、実力も知っている。だからこそ、彼と比べられるのはごめんだ。彼は瑞穂でもなく、ただ優秀だっただけの陰陽師。だけど、彼を知っている人はボクと実力を比べると必ず先代の方に軍配が上がる。
その理由もなんとなくや星見だから。星見は戦闘に用いることはできないのに、陰陽師として格が違うだのなんだのと言う。それ以外は大差がないと当時から思っていたし、瑞穂さんほどの開きを感じなかった。
だというのに貶されて貶されて。挙句の果てには麒麟としての責務を放棄して、ボクにお鉢が回ってきた。麒麟になるのは目標だったし、実力で奪い去るつもりだったのに、邪魔していた本人が投げ捨てたものを空白にはできないからと受け取った屈辱を今でも覚えている。
だからボクは先代麒麟が嫌いだ。彼はあれだけ人々を守りたいと言っていたのに、その責務を放棄してどこかへ雲隠れした。今も生きているのかすら知らない。今でも人々を守っているボクと逃げ出した軟弱者。この二つで比べられるのは癪だ。
目の前の瑞穂さんにだけは比べられたくなかった。彼女なら敵わないとわかっていたから認められるが、それこそ肩を並べられていた先代と比べて劣っていると言われるのは気分が良くない。
その発言の主である瑞穂さんは不思議そうな顔をしていた。
「裏切り者?あの子、なんかしたん?」
「突然麒麟をやめて、呪術省を襲撃するような人を裏切り者と呼ばないで何と呼べと?呪術省にも悪い所はたくさんありますが、必要悪です。呪術省が組織として崩壊すれば、人類は簡単に衰退します」
「……これだから千里眼も過去視もできない子どもは」
フゥーという音が聞こえてくるほどの大きな溜息を瑞穂さんがする。
呪術省が判官贔屓をせず、上層部だけの利益を肥やしている俗物だというのは理解している。それでも呪術省がなくなれば陰陽師の育成と管理が滞る。いつかは革命を起こして変えなければならないが、代わりの組織を立ち上げるまでは存在していてもらわなければ困るのだ。
順序を変えてはいけない。もし呪術省に代わる組織を立ち上げられる状況になったら呪術省へ反旗を翻しても何をしても良いが、その準備もできていない状態で呪術省を潰すのは理に適っていない。
先代麒麟やこの人たちがその準備をしているとも思えない。だからこそ、この人たちの行動も否定する。
「あの子が何をしたって言うんや。裏切り者だのなんだの……。そもそも世の理を理解してへんのは呪術省の方や。実力不足の子はこれだから……」
「文句があるならブツブツ言わずにハッキリと言ってくれますか?ボクは人類の守護者として、責務を果たします」
「人類の守護者?……うん、ええんとちゃう?そういう信念持つのは大事やと思うんよ。あたしらはそこら辺の陰陽師も殺してる悪党だし、あたしらにも信念がある。大多数の正義のために動くことは間違っておらんよ。ただあたしらは、大多数よりも個人を選んだだけ。勧善懲悪っていうのは、正義が勝たんといかんのやろ?なら人類の守護者さん。あたしっていう悪に勝ちなはれ。悪の方が強かったら、世界の滅亡やものなあ」
クスクスと楽しそうに笑う瑞穂さん。瑞穂さんが余裕でいられるのも今の内だ。麒麟の力は絶大。四神を超える力を持ち、倒せない敵はいない絶対の守護神。いくら強力な式神と契約していても、麒麟を超える存在は出てくるはずがない。
腰のポーチから黄色で作られた呪符を取り出す。特別な一枚。これで呼び出せるのは一体限り、呪術省から預けられた特別な式神。
ソウタくんが詠唱の際に守るために矢面へ立ってくれる。だけど瑞穂さんは邪魔立てするでもなくただこちらを眺めているだけ。
その余裕も今の内だけだ。ボクの霊気で呼び出す麒麟は、負けたことがないんだから。
「天上天下轟け雷音!全てを包み込みし神々の頂点、ここへ顕現せよ!地水火風の頂すらも越える無敗の王者、因果の鎖を破りて悠久の刻より目覚めよ!来なさい、麒麟!」
呪符に霊気が集まって、その肉体を構成していく。四本足に天へと届く一本鎗を生やした一角獣のようなフォルムに、白銀の毛を纏ってその上から火花が散るほどの雷を帯電させた幻想的な獣。
見たことがある人ですら一握り。出せば必勝が約束された神の一柱。四神にも負けたことがない式神が、負ける相手なんているはずがない。
かなりの霊気を持っていかれたが、その代償分の働きは期待できる。
「大仰な詠唱やなあ。五芒星の大術式ってわけでもあらへんのに。これが現麒麟の真打ちねえ……」
「あなたも、式神を出されたらどうですか?」
「あら、お優しい。それじゃあ遠慮なく。
詠唱も呪符もなく呼び出した式神。簡易式神ならそれでも驚かないが、呼び出された式神を見てそんなことを思えない、かなりの格の式神だということがわかる。
岩石龍、とでも言うべきか。全身が堅い岩でできた身体の龍、しかも黄龍ときた。それは五行思想でそれぞれが司る龍の内、麒麟が担当する龍。
ボクですら契約したこともない、見たこともない式神。
「やっぱり、麒麟を何度も呼び出しておらんね?式神なんてちゃんと交友関係を結べばこんな簡単に呼び出せるゆうのに」
黄龍は瑞穂さんが伸ばした手で撫でられるのを嫌そうにせず、むしろ嬉しいことかのように受け入れていた。龍なんて特に意思疎通が難しいのに、そんな龍を手懐けているなんて。これは旗色が怪しくなってきたかもしれない。
「そろそろオーディエンスも充分やろ。事実を知るのは本人と呪術省ぐらいでええんよ。というわけでソウタくん、眠っててな?」
瑞穂さんに左手の人差し指を向けられただけでソウタくんは崩れ落ちる。白目を剥いていたが、意識を失っているだけのようだ。頭が屋根にぶつからないようにぎりぎりで支えられた。
霊気を飛ばしてたのはわかったけど、詠唱もなしにそこそこの実力者を無力化するなんてアリ……?やっぱりこの人、昔から破天荒な実力を持っていたのは変わってない。
それに、ただ眠らせただけではないみたい。さっきから眠りの解呪術式を使ってるけど目を覚ましそうにない。となると。
「幻術……?」
「ちぃっと強力なもの使ったからねぇ。当分目を覚まさんと思うよ?翔子ちゃん、術比べの続きといこか?この子たち、同じ麒麟門に属す子たちやろ?戦ってみたら面白いんちゃう」
ソウタくんを少し離れた所に寝かせて、臨戦態勢に移る。
これは夢にも思わなかった一戦だ。永遠に超えることのできなかった壁への再挑戦。あの時じゃ比べるのもおこがましいことだったけど、今ならやり合える。
ボクは今日、歴代最高峰とまで呼ばれた瑞穂さんに挑む。
そのことがこんな状況だというのに、嬉しく思ってしまったことは墓まで持っていくつもりだ。こんな不謹慎なことを思っていたら正義の守護者失格だからね。
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