まおうみみ

 また、


『まおうさま、今日は魔界へお戻りにならなくてよいのですか?」


 黒猫キャラで売り出したのですが、いつのまにか自然に「魔界の魔王」キャラまでもがついていました。

 これも、本人が普通に自称しているからです。「ワシは、まかいのおうにゃ」と。


 カラスは正体がバレては大変だと心配しましたが、魔王には、なにかを隠すことなど、難易度が高かったのです。


「にんげんかいのくいものは、まかいより、ずっとうまいのにゃ」


 こういうことも、平気で口にします。

 でもリスナーは、そういうキャラだと思ってくれているようです。


 カラスにとっては意外なことに、にゅーちゅーぶの配信者には、自称「魔界から来た魔王」も「天界から来た天使」も、ごまんといるのだそう。

 人間界という所は、驚くことばかりあります。


 コメント欄に並ぶ人間たちからの言葉から、好意的なものだけを選んで、カラスが魔王に読んで聞かせます。


『まおうさま、いつもかわいくて最高です』


『食べっぷりが気持ちいい。しあわせそう』


『就活失敗してもうつみかなと思ってたけど、まおうさまが食べる姿を見ているとどうでもよくなってきたわ』


『生きがい』


『まおうさま、ふんでください』


『まおうさまのお屋敷の玄関マットになりたい』


「にんげんどもめ、かわいいやつらにゃ」


 ちやほやしてくれるコメントを耳にして、魔王は大満足のご様子です。


 もちろん人気の上昇に従って、反感の声も大きくなりました。

「こんなのをメディアに出すな」「生意気すぎる」「教育上よろしくない」という声も出てきました。


 でも、そういう否定的な意見はカラスが読み聞かせないこともあって、魔王には届いていないようです。

 それに魔王脳は、とことん己に都合よくできていますので、自分に都合のいい言葉しか、入らないようになっています。


 最近の魔王は、「大食い黒猫魔王系いばりん坊幼女」という、かくしだてのないてんこ盛りの属性を武器にして、あちこちのチャンネルに出演していました。テレビ出演も果たしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る