人工知能と夜明けの街で
ロゼマカヌラ
第1話
ホームレスの彼
しかもこの
「.........雪だもんな」
そう小さく呟いては夜空を見上げる
もう夏も随分過ぎて12月の半ば、本格的な冬が到来し雪が何センチ積もっているのかと街頭のニュースで見かけている
例え名前に雪が入っていようと夏と冬は現実的に大敵なのである
何故かと言うと夏場は日差しの強い炎天下が降り注ぎ、日陰に逃げようものなら割と人が休憩してたり自信に向けられる目と言う物が痛く人目につかない場所を探すしかない
それにコンビニ等の店に入る事は他のお客さんに迷惑がられる。
何せ何か買う金もない
それと同様で冬は外にしか居場所が無いのだ。
人権はちゃんとあるが、その人権に悲観している
人間ではあるが真っ当な人間とは言えない早川にとって大勢の目があるかもしれない場所はとても耐え難いものだ。
ダンボールと新聞を抱え、人気のない木下で寝支度を整えていく
なんとか気の葉が雪をくい止めているとしても、間から抜けて来る風や少量の雪には勝てそうにない
来ている服でさえ穴が空いており、それを埋める事は出来ない。
手や足が寒いを通り越して痛いと言い始める
それをどうにも出来ないまま
明日になれば、朝が来ればと早川は目を閉じていく
その時にはもう感覚麻痺を起こしていた
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
最初に覚えたのは違和感だった
あまり聞き慣れていない音がすぐ近くから聞こえたもので重たい体を起こしてみる
寝ぼけているのか寒さでやられたのか。
目が霞む様でハッキリとしたものは見えてはいなかった
100メートル位先に喧嘩か何か2人の人が街灯に照らされて動いているのがわかる
何を言っているか内容まではわからないが、お互い黒い服を着て殴り合いをしているようだ
内輪揉めとか痴情のもつれか。
それにしても止むことの無い喧嘩を力のない自分が止めに入るのも薮だと横目で目を合わなさい様にしていると、刹那終止符が打たれた
銀だ。
銀色の尖った刃が光に反射して一瞬時を止めたようなに空気を止める
自分は何を見ているのだろうかと空気が進み出した頃にはそのナイフは赤みを帯びていた
まるで目の前が爆発したような緊張感が走る
ただの喧嘩の現場から殺人現場に変貌したのだ
息を潜める思わず動きを辞める
場所的に暗くこちらは見えない事が不幸中の幸いで
早川は犯人が来ないことを祈っていた
目の前で起こっている出来事を見ているのに脳が記録をしようとしない
あまりにも現実が空想のように見えて、頭の中には記憶が上書きされず空白になっている
犯人が去った後の車のエンジンがやけに響いて
汽笛の様な合図に走り出す
何も思わず、何も言えず。
あるだけの体力全て使い人生最速記録を更新したような心拍の速さに合わせて、その人を中心に血溜まりが広がり汗が落ちる
「どうしよう...ッ連絡、この辺公衆電話」
見渡してもない。
そもそもよく見かける物なのに状況が違えば思い出すことが出来ない
あそこにあった、それはどこ。
わかるか、わからない
急いでポケットを漁り今ある全財産を広げる
資源の一円玉がどこかに転がっても見ず知らず、視界にも入らない
10、20と数えて電話かけるくらいのお金はある
その後がわからないのだ
「助けれくれ...誰か誰か変わってくれ」
早川は初めてそれに相応しい絶望を味わった
ホームレスになった時でさえ後悔はしたものの、絶望と言う言葉が浮かんだのは人生初めてだった
我を忘れたように服を脱ぎ出血している箇所を抑えるジワジワと血が湿り土が泥のように手に滲んでも必死だった
フォンと無機質な音が響く
「ご要件はなんですか」
人の声に似て違うもの、コンピュータの声でもない
女性に似た声が目の前の人のポケットから光が漏れている
恐る恐るそれを片手で抜き取ると四角い機械が光っているので見てみると画面には先程の文字が書かれている
それは人が当たり前の様に使っているスマートフォンだ
早川はスマホが普及する前にホームレスになった為使い方も触ったことの無いものを頼りにするのは自身でもよくわからないまま叫んでいた
「今すぐ救急車を呼んでくれ
「わかりました」
画面が変わる、119番が表示され画面の向こうから「どうされましたか」と声が。
解けない緊張を描いたように話していく
男が目の前で刺されたところを目撃した事
自身はホームレスである事
簡易的ではあるが出来るだけ聞かれた事を詰まりながらも説明をした。
「今すぐ向かいます」
その言葉だけで気持ちだけ報われたような気がした
ほんの少しの嬉しさが沸き立っては現実に目覚めていく
男が咳き込む口に滲んだ血で呼吸が小さくなっていく
ヒューヒューと零れている僅かな息をもっと吐き出せと抑える場所を強めると汗がどんどん滲んでいく
「助かってくれ」と願った祈りでさえ
公園に見えた赤いランプが全てを消した
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