シタアバルのこどもたち

作者 杏野丞

20

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★★★ Excellent!!!

名詞の言葉選び、地の文の描く世界の鮮やかさ、それぞれの子供達が書く手紙のそれぞれの文体のやわらかさ――この小説を構成する素材のどれもが積み重なって、とても美しい世界が目に浮かぶよう。
それは大人になるにつれて忘れてしまった、子どもの頃に見た美しい景色のようにも感じられます。
(ただし実際にこの物語で描かれている世界は、きっと私たちの誰もが知らないものです。)


空によって分けられた2つの場所で生きる子どもたちは、どうして文通を始めるに至ったのか。
竜の子がいけない「ヨルの国」とはなんなのか。
(実は昔別所でしていた連載を追っていたのでもう少し先までお話を知っているのですが)まだまだ明らかにされていない事項はたくさんあります。
それが今後明らかにされるのか、それとも明らかにはならないのか……
もちろん明らかになれば嬉しいのですが、ならないならならないであまり気にならないな、とも思える小説です。
それくらい、シシトトやキネの日々のよしなしごとを眺めているのが楽しいなと思える不思議な小説です。

これから読むひとにはぜひ、肩の力を抜いて、小さい頃のお気に入りの本の、お気に入りのページを読むくらいの気持ちで読んでほしいなとこっそり思っています。