第27話 777回の転生でも嫁の前でそれはちょっと‼︎

「瞑ったぞ?」

「はい、ありがとうございます。これからパフパフをするのでじっとしていてください」


 ......今、なんと言った? いきなり部屋に連れ込んでパフパフとは! ちょっと待て、嫁がいる前で何てことをしようとしているんだ! この女性は。

 とりあえず、イムが女性を赤に染めないことを願ってなすがままにされることにした。ある意味、目を開けるのが怖かった。

 10分ほど経つと店主の手の動きが止まる。


「目を開けても大丈夫です」


 と女性が言うので、目を開ける。そこには無事に生きていてくれる女性と

 イムの姿。

 俺は特に何かされたわけでもなく、ちょっと顔をポンポンと優しく叩かれている感じだった。


「これで大丈夫です」


 これで大丈夫? 意味がわからなかった俺に、何も言わずイムは手鏡を俺に向けてくれた。

 なんと! 綺麗にお化粧されているではないか!

 女性の手に化粧をするときに使う【パフ】があるということは.......パフをポンポンするから、パフパフ‼︎ 実に紛らわしいじゃないか!

 イムは目を細めて俺を見ている。


「今、よからぬことを考えてましたよね?」


 正解だ。男なら誰でもそう考えてしまう。だが、話を聞き出すためには止むえなかったと思う。

 女性はパフを化粧道具入れに戻し、俺に目を合わせてきた。


「これであなたはどう見ても女性です」


「いや、化粧をされる意味がわからないのだが」

「理由、それはある魔物が村にまたやってきた際にお守りするためです」

「守る?」

「はい、東の洞窟に魔物が住んでおりまして、成人した男を攫っていくのです」


 ほう。やっと冒険らしくなってきたではないか。


「それで?」

「私たち女性は対策を練ってきました。その結果、化粧さえすればある程度はごまかせるということが分かりました」

「よく思いついたな」

「はい、村の入り口にいる女性いましたよね?」

「ああ」

「あの子は化粧が趣味の男性です」


 衝撃的だった。普通の村のはずなのに村一番に出会う人の化粧が趣味で、女性のような振る舞いで話していたことに!


「......冒険は侮れんな」

「成人男性を労働力にしているとは思うのですが、私たちでは何もできず、今まで男性がこなしてきた農作業や力仕事などをやらなければいけなくなりまして」

「なるほどな。それで疲れているというわけか」


 俺は女性の話を聞きながら【高速タオルたたみ】をしていた。どうも【宿屋、タオル】というフレーズで俺の【転生スキル】が発動してしまうようだ。

(癖というやつで、いつ発動するか多少心配な部分もあるが)

 イムは俺の顔を見ては、目を逸らし、見ては、目を逸らしていた。


「イム、言いたいことがあるならはっきり言え」

「私はセブンの趣味が女装でも受け入れますから」


 勘違いだ! 一部始終だけではなく、全部を見てたよな? 俺は手を使わずに化粧など出来るわけがない。というか誰もできやしない。

 まあ、そういうところはイムの可愛さではあるな。

 ※別にのろけてなどいない‼︎


「で、もう男性が連れて行かれてどのくらい経つんだ?」

「はい。かれこれ一ヶ月くらい」


 近くの村でこんな事件が起きていたとは。もっと早く旅に出てさえすれば......いや洗礼の儀式を受けない限り勇者として認められないから、仕方がないのか。


 俺が少しのもどかしさと戦っていると、イムは俺に抱きついてきた。


「大丈夫。大丈夫だから。私は一生セブンの妻よ」


 ...... ん? 何が明らかに俺の気持ちを察しての大丈夫ではないことは分かる。

 イムよ、人前ではなるべく避けてほしいものだ。

 ほら、よく言うだろ、人前でいちゃつくカップルは○○○○だって。

 イケメン、美女の場合はどう映っているのだろうか?

 などと考えていると、


「ぎゃああああ」


 遊者(ライト)とカルバンの叫び声が聞こえてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る