第25話 777回の転生につき、村人だった記憶を覚えています。

「なあ、聞きたいことがあるんだが」

「ここはニコルの村だよ」

「なあ、聞きたいことがあるんだが」

「ここはニコルの村だよ」

「なあ、聞きたいことがあるんだが」

「ここはニコルの村だよ」


 遊者(ライト)と入り口に立つ女性は同じ会話を続けた。

 ……そうだ。俺も経験がある、それ以上話すことの出来ない現実、もどかしさ。

 一度だけ聞いておけばいい人物に何度も聞くのは筋違いだとは思うが、その後も遊者(ライト)はその女性から情報を聞き出そうとしていた。

 その女性に一言アドバイスを後でしてあげよう。俺が前勇者に試した方法を。

 遊者(ライト)はイムにかっこ悪いところを見せたくなかったんだろうな。

 引き下がろうとしない。


「なあ、そろそろ答えてくれよ」

「ここはニコルの村だよ」


 遊者(ライト)よ、無理だ別の人物から話を聞こうじゃないか。

 それよりも……早く休みたいというのが本音だ。


「なあ、ライト、情報収集は明日にしない? みんな疲れていると思うし宿屋に……」

「おいどんは大丈夫でごわす」


 カルバン、空気を読んでくれ。


「でも、ライトは中ボス(スライムだが)と二回も戦ったんでしょ?」

「まあ勇敢だからな」


 おいおい、威張るところではないぞ。完全敗北しているんだから。


「だったら疲れを取ってからの方が効率がいいと思うんだけど」

「いーや、仕事は今日中に片付けておくもんだ後回しにするとろくなことにならない」


 遊者(ライト)よ、先回しにすると更にろくにならないことが起きてしまうということが分かっていないのかい?

 今はその序章に入ってしまっているのだよ。

 それにアリナイハンを中々出ようとしなかった張本人の言うセリフなのだろうか?

 もう少し言葉の信憑性を上げたのなら、ちゃんと行動をしてから言って欲しいものだ。

 イムが俺の疲れを察してくれたのか、遊者(ライト)に近づき


「ねえ、宿屋に行きたいな」

「よし、宿屋に行こう!」


 口の根が乾かないうちにとはこういうことだ。

 遊者(ライト)の中での俺の優先順位が知りたい。

 ……カルバンより下だったら、さすがに凹むな。勇者が戦士? に負けるのだぞ。

 現状から言うと自勇者と戦士? だからいい勝負ということなのか?

 それはそれで腹が立つな。


「ビビビ(イム、ありがとうな)」

「ピピピピ(いえ、その代わり二人っきりになったら……そのスリスリしてもいいですか?)」


 イムは顔を赤めて俺を見つめている。この様子だと顔スリスリが、ただのスリスリではない

 別に意味があるように思えてくる。まあ人間では顔スリスリくらいどってことはない。


「ビビビビビビ(いいよ)」

「やった!」


 イムは俺に顔をスリスリしてきた。

……先ほど、二人っきりになったらと仰ってませんでしたか?

 もしかして、イムの中では遊者(ライト)とカルバンは見えていないという認識でよろしいでしょうか?

 高速でスリスリをしてくるところから、そうであろう。

 ……遊者(ライト)は確実に

(あまり旅先でラブラブするなって言ったよな?)

 という目で見てきている。不可抗力だ。

 カルバンに限っては猫耳キャップをくしゃくしゃにして悔しがっている。

(お前ら諦めたんじゃないのか!)

 俺は心の底からそう言いたかった。


 そんな二人から目を背けて俺らは宿屋に向かった。

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