第21話 777回の転生でも人間関係には手を焼きます。

 先ほどスライムに【人間の姿なら連れてやってもいいのに】と言ったが、転生にしては早すぎるし、そう簡単に人間になれるわけではない。


「ビビビ(マジで?)」

「ピピピ(マジです!)」

「ビビビっビ? (変化でその姿になっているのか?)

「ピピピピ(神様にお願いしたら人間に転移させてくれたんです)


 犯人は神様(あいつ)か。

 ライトとカルバンはモンスター語が分かるわけではないので、首を傾げている。


「ビビッビビ(あいつがそんなに簡単にするわけないだろ!)」

「ピッピ(セブン様の名前を出したら、すぐに)」


 .......神様(あいつ)。冒険の邪魔ばかりしやがって。絶対にいつかこの思いを何倍かにして返してやる。

 俺が神に対して怒りを向けていると遊者(ライト)とカルバンはイムの周りをぐるぐると回りながら見ている。


「いや〜、世間は広いな」

「本当に美女でごわす。奥さんにしたいでごわす」


 イムは分かりやすい作り笑いをしながら、何事も起きていないかのように立っている。俺があんなことされたら、真っ先に教会送りだ。


「ビビ?(イムの美貌も神(あいつ)のオプションか?)」

「ピピピピピピ(美貌だなんて、セブン様に言われると嬉しいです。自分で言うのは恥ずかしいんですが、スライムの一の美貌と言われてまして、ほら、勇者様が倒したスライムと婚約するはずだったんです」


 あー勇者スライムCではなく、確かスライムAだったか。


「でもちょっと嫌だったのです。顔がタイプじゃなかったんで。そしたら勇者様が......」


 スライムの顔? すまんこっちには何ら違いがないように思えていた。


「すまんが、勇者と呼ぶのは止めてくれ。セブンと呼んでほしい」

「セブンはイムにはタメ口なのでごわすな」

「いや、なんか話しやすくて。あははは」


 カルバンめんどくさい!

 イムは俺をジッと見て人差し指を俺の鼻にツンツンしてくる。

「なら、これからはセ・ブ・ンって言いますね」


 ......スライムだと思うとある程度は理性を保つことが出来そうだが、それでも可愛いな。すでに人間なんだよな? 人間だと思うと意識が持っていかれそうになる。

 と言うか、なんでラブコメ展開が序盤で行われるんだ? 俺は勇者として冒険したいのに、こうもまあ周りが邪魔してくるとは......俺は絶対にブレない! ブレないからな! と自分を奮起するように言った。

俺は自分を奮い立たせていると遊者(ライト)が俺の肩を叩いてきた。


「……わかったよ。セブン」


 ライトよ、何が分かったというのだ?

 ライトは少し緊張した面持ち、いや下心丸見えの顔をしてでイムをチラ見しながらこう言った。


「この子をたっ旅につっつれて行こうよ」


 お前が一緒にいたいだけなのだろ? 俺をダシに使うなよ。


「おいどんはどっちでもいいででごわすからね!」


 方言が邪魔してツンデレの可愛さが全く出てないぞ。

 イムはライトとカルバンにニコニコしている。よく出来たスライ……女性だ。

 仲良くやってくれるならそれでいい、むさ苦しいのも解消されるし。

 これで少しでも冒険に本腰を入れてくれるのであれば俺は問題ないがイムはどう思っているのだろう?


「ピ(薄汚い目でこっちを見るんじゃねえよ! お前らぶったおしてやろうか? 私はセブン様と二人で冒険をしたいので当分の間、棺桶と仲良くなっていただこうと思います。それではさようなら。さようならというかおやすみなさい。永遠に)


 とイムは笑っていた顔が一瞬で真顔になり、息を大きく吸い遊者(ライト)たちに向けて口から炎を吐き出そうとする。

 こいつ、本気(マジ)でやる気だ。


「ちょっと待て!」

「どうしたのですか? セブン♡」


 言葉が分かるって怖いな。それに俺とは違い我慢というものを知らない。俺がイムの教育係を請け負うしかない。

 二人旅は潤滑に冒険を進められるかもしれないが、棺桶を引っ張りながらの旅など求めていない。

 ここは穏便に、穏便に。


「イム、お前はまだわからないことがたくさんあるだろうから、困ったことが何かあるのなら俺だけを頼れ」


 イムの満面な笑顔。……その後ろで俺に対して憎悪を向けてくる遊者(ライト)とカルバン。おいまさか、イムと二人で冒険をしたいとか考えたんじゃないよな? だとするなら止めておけ、お前らが対処出来るような女性ではない。

 とりあえずだ。その格好では露出が強すぎる。服が欲しい所だな。

 ......そういえば、レイラの装備が一式ある。それを当分の間は着てもらえればいいな。


「イム」

「はい。セブン」


 嬉しそうに返事をするではないか。


「その格好では今後、あれだ、刺激が強すぎて変な男が付いて回るかもしれない」


(すでに付いて回っているが)


「だから、これを身につけろ。文句は言わせないぞ」


 と俺はイムにレイラの装備を一式渡した。

 残念そうにイムを見ている遊者(ライト)とカルバン。お前ら女性の気持ちになって考えてみろ。仲間がずっとニヤケ顔で見てくるとか嫌だろ。


 それにだ。逆にお前らの命を救うことになる。俺は今思いつく最善の対処策を取ったつもりだった。

 イムは俺から渡された装備を見て、ポロポロと涙を流し始めた。


「セブン、いいんですか? 私が身につけて」

「当たり前だ。お前以外いないだろ」


 煌めきのローブをカルバンが装備できるわけもない。イムが身に着けるのがベストでだろう。

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