第20話 777回転生してもなお、恋愛防御力を上回ってくるとは!
俺も驚いたが、それ以上に遊者(ライト)とカルバンがそれ以上に驚いていた。
「おい、セブン、この美女は誰なんだ?」
「僕も知りません」
「隠し事はダメでごわすよ!」
......記憶にない。アリナイハン以外の街は知らないし、もし知っていればどんなに魔王を倒すことにしか興味がないとはいえ、これほどの美女であれば嫌でも覚えてしまう。
美女は簡素な服を着ているところから裕福ではないように見えるが、着こなし、スタイルの良さからオシャレに見える。
「覚えてないってひどいじゃないですか! さっきまで二人っきりで会ってたばかりなのに」
美女はくすんくすんと嘘泣きをしている。バレバレな嘘泣きに引っかかる奴など......と俺が鼻で笑いながら横を見ると、勇者(ライト)とカルバンが俺をめちゃくちゃ睨んでいるではないか!
「セブンは女の敵だな」
「許さないでごわす」
いや、許してもらわなくてもいい。だが、思い当たる節が俺にはないが美女だけ覚えているというのは多少気持ち悪いものだ。この美女の言い方だと城に向かってからの話のはず。
となると、城の中で会ったか、酒場の冒険者の中にいたか、それとも教会に? 可能性が高い酒場だとしてもあの中にこんな美女はいなかったと思うし、酒場の連中は俺をバカにしてくれたから好意的に思っていないはずだ。
俺が記憶の中を必死で駆け巡っている中、伴侶(レイラ)と別れたばかりの遊者(ライト)と恋愛経験0のカルバンは羨ましそうにこちらを見ている。
......気持ちは分かるが、美女の方に肩入れするのはやめてもらえないだろか?
その美女は俺に顔を近づけ、満面の笑顔で見てくる。さすがにこれはヤバい。
【この人は逃したら一生後悔するよ】などと俺のキューピットが心に弓矢を何千本と刺してくる。
しかも密着してきたため、その......当たってるから!
777回の転生でもここまでのレベルの美女はいなかった。もし、冒険に出る前に幼馴染設定で出会っていて、今回のように王様に勇者を剥奪される結果になっていたら冒険を止めて彼女と幸せに暮らすのもいいかな? と思わせてくれる。
......思わせてくれる。じゃない!
【今世は絶対に勇者として魔王を倒すのだ!】
それがまだ序盤で
【大切な人を守るため、止めます】
なんて死んでも言えない。神がニヤニヤしながら俺を見て
【あ〜あ、せっかく勇者にしてやったのにのぅ〜】
などということがたやすく想像出来る。
俺が混乱していると美女は俺に対して何の抵抗もなく話しかけてきた。
「イムです! もう思い出しましたよね?」
「イム? そんな名前知らん」
俺の一言で、遊者(ライト)は煌めきの剣を抜き、カルバンは腰を深く落とし、正拳突きの構えをしながら嫉妬の炎が燃え上がらせていた。
無実だ。俺は知らない。本当に知らない。むしろだ、そのやる気をモンスターと戦う時に向けて欲しい。
「まだ思い出せないんですか?」
その美女は顔を膨れさせた。......不覚! 可愛いじゃないか!
777回の転生を繰り返し女性への免疫、かわし方もマスターしてきたつもりだが、俺は勇者の前に男だったということか? それとも思春期で【青春】にという魔法にかかっているのか? 確かに今世はレベル上げに必死で恋愛防御力を上げておくのを怠っていたが、それでも破壊力がありすぎる!
一向に思い出せない俺に痺れを切らして、イムは少し離れて少し首を傾げて人差し指で頬を触った。
「じゃあ、バラしちゃいます! さっき、勇者様に仲間になるようにお願いしたスライムです」
......は?
イム......イム......スラ......イム。スライム!
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