第18話 777回の転生をしても恥ずかしいセリフは言いたくないのだが

 雨が止み、空に大きな虹が架かった。

 自分の不甲斐なさに悔しんでいる遊者(ライト)の肩を叩き、俺はニコっと笑い、やりたくもない演技をする。


「ライト、辛いかもしれないけど魔王を倒しに行くには仕方ないことなんだ」

「......セブン」


 よし、俺もこのムードになんとか乗れているようだ。


「この経験を糧にして、魔王を共に倒しに行こう。ほらあの虹が僕たちの冒険を見守っているから」


 俺が虹を指すとライトは虹を見て思いつけている。


「あの虹が俺たちを......」

「ああ」

「セブン、お前......よくそんな恥ずかしいセリフ言えるな」

「は?」


 遊者(ライト)は俺に対してこいつ何を言っているんだ? と冷たい目で見てくる。俺は空気を合わせてやったのに、その仕打ちは何だ! と思ったがここは抑えて、穏便に話を進めることにしよう。


「すみません。何だか二人を見ていたらうらやましくなっちゃったんですかね?」

「俺からのアドバイスだけど、そういうセリフを街の中でいうと変な奴だと思われるから気をつけろよ。たまたま人がいなかったから良かったけど」


 俺の顔に怒りのマークが三つ出ていますが気づいていらっしゃるでしょうか?

 俺はやりたくもない演技、言いたくもないセリフ、周りの気遣いなどなど、どうしようもない遊者(おまえ)のためにやったというのに......。

 このままだと遊者(ライト)に会心の一撃、いや会心の二撃を与えてしまいそうだ。


「やっちまったもんはしょうがないな」


 遊者(ライト)は立ち上がり、背を伸ばした。


「あれカルバンは?」


 そこにいる。

 レイラの攻撃に耐え切れず。棺桶で仮眠中だ。また教会に行くのも面倒なので蘇生魔法を使って蘇らすとするか。


 俺は蘇生魔法【リバイブ】を唱えると、カルバンが棺桶から出てきた。


「おいどんはどうしたでごわすか?」

「ちょっと気を失っていたみたいです」

「そうでごわすか? それよりもレイラの姿が見えないでごわすが」


 カルバン、空気を読んでくれ。

 遊者(ライト)は空を見上げ


「カルバンよ。男にはな決断しなければいけない時があるんだよ」

「決断でごわすか?」


 ......何を語り始めるんだ?


「レイラは魔王を倒す冒険には連れていけない。危険すぎるんだ。ほらあの虹が俺らの冒険を見守ってくれている」


 遊者(ライト)は空を見上げるが虹はすでに消えていた。

 ......言葉が出ない。ほんの数分前のやり取りを見せてやりたい。それに俺のセリフ丸コピーしてるんですが、遊者(おまえ)、人には恥ずかしいと言っておきながら自分で言っているじゃないか! いつか返す! この恩はいつか返す!


「......そうでごわすか。さすがおいどんが認めた男でごわす」


 認める要素がどこにあったのか知りたいが、また長くなるのは嫌なので、次に展開に持って行こう。気疲れのせいか、濃密な時間を過ごしているように思える。まだ転生を1回したほうが楽な人生かもしれない。

 それに俺が言いたいことは、まだ街から一歩しか出ていないのだ。


「ライト、色々済んだことだし、次の村へ行きませんか?」

「それもそうだな。仲間も一人減ったことだし、さっきの武道家でも連れて行くか?」


 絶対に嫌だ! 遊者(ライト)は足早に酒場に向かおうとしたので、【エアー】の魔法を使って城下町の外へ飛ばした。

 これ以上、この場所に滞在するとろくでもないことが起きそうな感じがした。

 ......レイラとの第二章が開幕しそうで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る