届くはずのない手紙を貴方に

雪鼠

手紙

 この手紙を読んでいる貴方へ


 貴方は今、どこにいますか? 目の前には何が広がっていますか? この手紙が届くということは、きっと近くにいるのでしょう。


 私の名前は水樹みずきあおいです。水隆すいりゅう神社を知っていますか? そこに私は住んでいます。ここには龍神さまがいると云われていて、そのおかげか今も綺麗なまま残っています。もう亡くなってしまったおじいさまも、ここを支えてくれているのだと思います。おじいさまは大きいから、遠くからでも見つけられるのではないでしょうか。


 実は今日、大きなスイカが流れてきました。ここは色々なものが流れてくるんです。そのどれもが新鮮で、適度に塩が効いて美味しくなるんです。スイカに塩をかけるのは、昔は定番だったのでしょう?

 私もいつか、貴方たちが美味しいと言うカレーだとかオムライスだとかハンバーグだとか、そういったものを食べてみたいです。もしオススメのお店があれば、私を連れて行ってください。

 お店に行くってどんな感じなのでしょうか? 欲しいものを言えば、それを持ってきてくれるって。そのお礼にお金を払って、ありがとうと伝えるの。ただお金というものが、いまいち想像できないのだけれど。


 私はここから出たことが無いから、貴方たちの世界を見てみたいです。もちろん昔の姿だけじゃなくて、今の姿も含めてのことですよ。昔の姿は心惹かれて、私の心臓は持たないんじゃないかしら。

 私を止める人はもう誰もいないのだけど、足を踏み出すことはできなくて。面倒ですよね。自分でもそう思うんです。それでも決心することはできなくて、本当に困ってしまいます。


 だらだらと書いてしまってごめんなさい。結局何が言いたいのか分からなくなってしまいましたね。もう書くスペースも少ないですし。

 この手紙はできるだけ遠くまで飛ばしますから、見かけたら受け取ってください。こんなこと、ここに書いても意味ないですね。ごめんなさい。


 この手紙を読んでくれた貴方へ。


 ぜひ水隆神社へと遊びに来てください。私はいつもそこにいます。少しで良いので、お話をしませんか?


 水樹葵

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