276・英知を持つ猫の戦い
ぼくは『
だけど、地面系は交えたってひょいひょい躱されるのがオチにゃ。
それなら……こういうのを使えばいいのにゃ!
「『フラムランチェ』【フラッシュアウト】!」
「なにっ!?」
まずぼくは目眩ましの魔法を放って、同時にイメージした炎の槍をキーシュラにぶつけたにゃ。
いきなり目潰しをやるとは思ってなかっただろう彼は、咄嗟に目を閉じてそのまま立ち往生。
そこに向かっていくのは、以前の『フラムランチェ』よりも荘厳な雰囲気を纏った装飾が施された大きな炎の槍。
我ながら本当にすごくなったにゃ……なんて感心するほどにゃ。
「ちっ、こんな手を……! 『
「卑怯だなんて言わせないにゃ! 『ドンナーデル』【ラピッドガントルネ】!」
槍で防ぐ体勢を取っていたキーシュラはその全てを防ぐことが出来ずに至るところにかなりの火傷の痕が見られたにゃ。
それを彼は無理やり回復魔法で身体を治癒して、ぼくのところに迫ってこようとしている間に、キーシュラの周囲に極太の雷針と、ぼくの目前に複数の雷球を出現させたにゃ。
「は、ははっ……こりゃあいいや」
「……喰らうにゃ!」
ぼくは『グリジャスの杖』を思いっきり振り下ろすと、円状に展開した雷針が一斉にキーシュラに襲いかかっていったにゃ。
「はあああああ!!!」
あえて『ラピッドガントルネ』は魔力を込めてより強力にしようとしていたんだけど……それは正解だったにゃ。
なんと、キーシュラは槍をくるくる回しながら両手を駆使して自分の周囲を旋回させ、身体を動かしてぼくの『ドンナーデル』を次々に迎撃していくにゃ。
なんて動きをするんだと、一瞬呆けそうになったけど、そんな事してる場合じゃないにゃ。
キーシュラは回避できない針だけを甘んじて受け、他は全て受け止めているにゃ。
彼が後ろを向いたその瞬間、ぼくは『ラピッドガントルネ』を一斉に解き放ち、そのまま後退しながら更にどう動くか考えることにしたにゃ。
やはり、今の攻撃を察知したキーシュラは、そのまま回転させた槍で『ラピッドガントルネ』を受け止めて、周囲に拡散させていってるにゃ。
普通、あんな風に槍をくるくる回しただけで魔法が防げるはずがないのにゃ。
何らかの魔力を込めて発動させることが出来る魔槍なんだろうけど……それをあんなふうに活用してくる彼の技術もまたすごいのにゃ。
「ちっ、流石猫人族……いや、『
魔法の扱いに関しては相当なものだな。」
にやりと笑いながら拡散しきれなかった『ラピッドガントルネ』に貫かれたキーシュラは、再び『
今は全く気が抜けないにゃ……!
「『アイスミスト』【サンダーストーム】!」
次に使ったのは行動を阻害することに重きを置いた魔法構成にゃ。
冷たい霧で敵の視界を遮り、更に雷の竜巻で身体を痺れさせながら傷つけていくにゃ。
この組み合わせはすごく相性が良くて、『アイスミスト』で出現した霧が、雷を周囲に伝えていって、魔法の範囲を更に増やしていくにゃ。
「さ、流石に魔法のオンパレードだな。
だが……俺も負けていられない! 行くぞ! 『
キーシュラが魔法を唱えたその瞬間、バチバチとなにかが爆ぜるような音が聞こえたかと思うと、大きく光り輝く雷の狼が現出して、力強い咆哮を上げていたにゃ。
「くっ……な、なんにゃ、それは……!」
「俺の最大の魔法……ってやつだ。とっておき、喰らえよ!」
ぼくの方に狙いを定めた『
これは……まずいにゃ。
「『フラムソレーユ』【サテリットネール】!」
雷の狼が迫ってくる前に、ぼくは一番得意としている空に炎の太陽と雷の星を出現させる魔導を放ったにゃ。
――これなら、あの魔法に対抗できるにゃ……!
そう思ったぼくは、キーシュラがそれでも不敵な笑みを浮かべているのを見て、今の状況から更に何かを放つつもりだと悟ったにゃ。
「そういう強力な魔法を使ってくるってのはわかってたらさ、こっちだってこういう対抗も出来るんだよ! 『
キーシュラは更に魔法を使って……次に出てきたのは巨大な土の龍だったにゃ。
地面からせり上がるように出現したそれは、『光光・
そうして……『フラムソレーユ』から放たれた熱線は雷の狼を。
『サテリットネール』で次々に撃ち出される雷線は土の龍をそれぞれ攻撃して、互いにぶつかり合っていったにゃ。
なんとか『
それはそうだろうにゃ……土は雷を吸収するにゃ。
だからキーシュラはわざと自分が出現させた雷の狼と相反するような土の龍を出現させる魔法を使ってきた……そういうわけだろうにゃ。
だけど……ぼくがいつまでも同じだとは思わないことだにゃ!
――イメージするのは冷たい氷の流星。数多降り注ぎ、敵を凍てつかせ、全てを冷気の檻に閉ざす氷の星々!
【――イメージするのは風の隕石。巨大に渦巻くそれは、全てを巻き込んで斬り刻む緑を纏い……地上を覆う風の隕石!】
「『アイスミーティア』【ヴェオリーテ】!」
新しく出現させたのはどちらも上空から降り注ぐ魔導にゃ。
一つは複数の氷の星を象ったものが降り注いで、もう一つは強力な風を纏った隕石にゃ。
速度的には『アイスミーティア』の方が速く、氷の星々が次々と土の龍に向かっていて、徐々にその身体を凍りつかせていって……やがて龍の氷像のようなものが出来上がったにゃ。
そしてそれを砕くのが『ヴェオリーテ』で呼び出された風の隕石。
土の龍を削り取っていき、粉々にして……そのままキーシュラめがけてゆっくりと迫っていくにゃ。
「は……ははっ……はははははははっ!」
なんというか、もう笑うしかないって感じの高らかな笑い声を響かせて……キーシュラは『ヴェオリーテ』で呼び出された隕石をまともに喰らってしまったにゃ。
――
全てが終わったその大地は凄まじい戦闘の跡が残っていたにゃ。
大きな窪みの中央……そこにはぼろぼろの状態のキーシュラが槍を支えにして立っていたにゃ。
恐らく、直前で魔法を更に出現させて、なんとか相殺を図ろうとしたんだろうにゃ。
彼の姿は風で切り刻まれた……というよりも炎での火傷が目立ってるような気がしたのにゃ。
いくら魔法さえ唱えれば回復力の高い身体をしていても、完全に復活しきるまでにぼくが懐に飛び込んで左胸の核を打ち砕くことが出来るにゃ。
それがわかっているから、彼も回復魔法を使わずにぼくのことをじっと待っているのにゃ。
「やれやれ、こんな魔法を使うやつと戦うことになるとはな……。
ま、楽しかったからそれでいいんだけどな」
「キーシュラ、君はすごく強かったにゃ。だから……君のことをいつまでも忘れず、戦って行くにゃ」
ぼくの言葉に驚きに目を見開いて……すぐに破顔したにゃ。
きっと、彼はぼくの言葉をきちんと理解したんだろうにゃ。
「ああ、ならお前も……戦いを楽しめ。
鬼神を倒した事を、誇りに思って進め! 世界は、こんなにも面白いことで満ちているんだからな!」
ぼくはキーシュラに最期の一撃を放ち……完全に息の根を止めたにゃ。
……戦いはまだ続いてるにゃ。
キーシュラを倒しても、気を抜かず、ぼくは再び死を纏った兵士たちが攻めてくる戦場へと、飛び込んでいったのにゃ――。
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