第2話
私と彼と
目が覚めてまず顔を洗うのが私の習慣である。それが不味かった。
彼がいたのである。彼は少し得意気な笑みでこう言った。「おや、遅いお目覚めだねぇ日はもうそれは高く昇ってしまっているよ。」と、私は少しむっとしてこう返す「言われなくてもわかっているよ!そんなことは。」と。
普段は逆の立場でこのやりとりをするため今朝はとても機嫌が悪くなった。
そういう彼はいつもどうり夕方だというのに一昨日の新聞記事ををカップ一杯のコーヒーと一緒に摂取しているのだった。大半の記事は読み飛ばし「つまらないなぁ今日も」と呟くのだ。それを聞き流し私も自分のコーヒーを淹れた。
最近の彼の科学の嗜好は航空力学である。私にはさっぱりであるが彼曰く、深くて面白いらしい。私のコーヒーがまだ熱くて飲みづらいうちに唐突に彼は出掛けようと言って、私にペーパーウエイトと化した重そうなカメラを持たせ外に連れ出された。
久しぶりに外に出た気がする。なぜ夕日はあんなに赤くなるのだろうか彼なら知っているだろう。レイリー散乱とか言うものだろうか‥と思いながら彼の跡を追う。
とある公園についた。夕日に照らされ赤く燃えるような色が移る青い奇妙なタコの遊具の上に寝そべって彼は私を隣に呼んだ、正直汚れるのが嫌だったが渋々彼に従った。
「ここに来てごらん」というと彼は渋々承知した。素直でいいね。彼には大切な仕事がある。ゆっくりとした時間が流れた我々に言葉はなくただ風に揺れた木葉たちのサァサァという音と姿の見えない鳥の鳴き声がきこえていた。
しばらくすると、ゴォォーという轟音と共に空が大きな影に覆い隠され同時に隣でパシャという乾いた音がした。うん、実にいい仕事ぶりだ彼にねぎらいの言葉をやろうと思い彼の方を向くと、少し夕日に照らされて実に晴れやかに空を見上げる彼の横顔があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます