魔王様とウザい奴等。
王国を空から見下ろすと、多くの魔物達が戦闘配置について襲撃に備えている。
我が魔物フレンズ王国では知能のある魔物達に対しての教育も行っていて、各種魔法を使えるようになった者達も多い。
勿論そこまで強力な魔法を使えるのはほんの一部の者達だが、それでも皆が協力して畑に障壁を張っていくのを見ると感無量である。
魔物なんてほんのちょっと前までは人間の敵とされていた。
それが今では王都にも認められた種族、一国家として認められている。
俺がいつかこうなればいいなと思っていた世界に近付いている。
いい国だ。
「セスティ、どうやら来たようじゃぞ」
空を埋め尽くすほどの魔物の群れ。
その先頭に一際大きな体の魔族が二体。
その二体が何やら指示を飛ばし、王国全体を包み込むように魔物が展開していく。
人工魔物はほとんど知性は無く、与えられた命令を聞くだけの哀れな生き物だ。
魔物同士、とは言え遠慮はしていられない。
皆もそれは分っているだろうから手心を加えるような事はないだろう。
さぁ、戦闘開始といきますかね。
さっさと倒してメアの所へ行こう。
「ショコラ、一人任せていいか?」
「勿論。二人でもいいよ」
「一人で十分だ。めりにゃんは後方から俺達のサポートを宜しく頼む」
「わかったのじゃ」
「めりにゃんには負担が増えるかもしれないけど、俺達意外にも出来るだけ王国全体を注視しててくれ。苦戦してるところがあればその都度対応してもらえると助かる」
少し負担をかけすぎにも思うが、めりにゃんならこれくらい余裕で出来ると分かっているから、信用しているから頼んでいる。
それに、彼女の返事はもう分かってる。
「任せておくのじゃっ♪」
同時にいろんな事が出来るのはある意味才能だよなぁ。
俺にはマルチタスクとか無理だ。一つ片づけてからじゃないと次に移れない。
という訳で、
「じゃあ行くぞショコラ」
「あいよっ」
相変わらずノリが軽いなぁこいつは。
でもこれくらいいつもと変わらない方が安心する。
ショコラにはそういう不思議な力があると思う。
その代わりシリアスな空気を完全にぶち壊す諸刃の剣ではあるが。
俺達が魔族を目指して突き進んでいくと、あちらは腕組みして待ち構えていた。
「おいおいいつからお前らはそんなに優しくなったんだ? 俺達がくるのを待ってたっていうのかよ」
「カカカカッ! 人間の魔王が何か言ってるぞガゴール」
「ケケケケッ! そう言ってやるなよゴイール」
「しかし足止めとは詰まらん仕事だなぁガゴール」
「いやいや。足止めとはいえど殺してしまってもいいのだろう? ゴイール」
うっとうしい奴等だな……。
どうやら二人セットらしい。
「こっちは二人で戦うつもりだがお前らはどうだ? 見た感じ二人ワンセットだろ?」
せっかく俺が聞いてやったというのに、あいつらはそれを聞いてまた笑い出す。失礼な奴等だ。魔族ってのはどうしてこうお喋り好きなのかね。
「俺達二人のコンビネーションを知らないと見えるなガゴール」
いや、知る訳ねーだろうがよ。
「無知というのは恐ろしい物よなゴイーぎゃぁぁぁっ!!」
「お前らうるさい。イライラする」
まだガゴールとかいう方が喋ってたのにショコラが問答無用で光の剣で一刀両断。
「なっ、ガゴール!?」
「私はお喋りに来たんじゃなくてお前らを殺しに来たんだよ。そこのところしっかりわかれ」
「くっ、これは面倒な相手だぞ我々も本気で相手をしようじゃないかガゴール」
……ガゴール? 今ショコラが切り伏せた相手に呼び掛ける違和感に、地面に落ちて行った残骸に目をやると、既に元の形に戻ってこちらに飛んできていた。
「再生力が異常だな……疑似アーティファクトか?」
「「如何にもっ!!」」
二人の声が被る。
ショコラはといえば、目の前で繰り広げられるよく分からない展開を呆れ顔で興味なさげに眺めていた。
「行くぞガゴール!」
「おうよゴイール!」
二人は手を取り妙なポージングをして、「アダプトレーション!!」と叫ぶ。
すると、気持ちの悪い事に合わせた掌からお互いの体がずぶずぶと溶け合っていき、二回りくらい身体が大きくなった一体の魔族が生まれる。
「「ふははははは!! 我等ガゴール! ゴイール! 二人合わせてガーゴゴイル!!」」
「きっしょ」
ずぱん!
ショコラがげんなりした顔で一刀両断。
しかし、今度は切れた部分が超スピードで再生、という訳ではなくショコラの剣が奴の身体をすり抜けたように見えた。
「うぇ……キモっ」
すり抜けは気持ち悪いが……そこまで言わんでも……。
とりあえず俺もメディファスに炎の魔法を纏わせ切りつけてみるが、そこでやっとショコラの言ってる事が分かった。
俺の攻撃もするりとすり抜けるが、よく見ると剣が当たる直前にその部分だけ切り離されたように剣を身体が裂けて避けた。
それを物凄い速さでやっている為すり抜けたように見えるだけで、本来は当たっていないのだ。
「「ふははは! 我等が魔族王様に与えられた疑似アーティファクトは二つ! アーティファクトが一つ! 負ける要素など皆無っ!!」」
あー意外と手間のかかる奴だ。しかも本物のアーティファクトも所持してるとなるとただの魔族と侮るのはまずいかもしれない。
しかしこいつにそれだけの物を持たせるなんて随分大盤振る舞いじゃないか。
ロザリアの奴本気で後の事考えてないな……?
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