魔王様戦場へ。


「な、なんだ!? 何が起きた!! 」


 王はまだ何が起きたか理解出来ていない。

 俺達のミスだ。まさかロンシャンがこれほどの破壊力を持った攻撃が出来ると思っていなかった。


 もし事前に分っていれば障壁を張って攻撃を逸らす事も出来ただろう。


「めりにゃん!! 城全域に障壁張れるか!?」


「障壁を張るなら私の方が適任だ!」


 俺の言葉にアシュリーが反応し、即座に城に障壁を張った。


「どの程度維持できる!?」


「私がここから動かないの前提ならばいつまででももたせてみせる!!」


 頼もしい大賢者様だぜ。


「本当なら魔導兵装対策をしっかりしていかなきゃいけないところだけどそんな余裕がなくなった。俺達も出るぞ!」


「セスティ、しかし実際問題あの魔導兵装はどうするのじゃ!? 儂らが下手に攻撃したら……」


「それは何とか加減して兵装を剥がすしかないだろう! それとも何か……この中に何かいい案がある奴いるか!?」


 ……誰も具体的な解決案がある奴は居ない。

 それならやはり直接対峙して考えるしかないだろう。


『まどろっこしい事を……中身の人間ごと吹き飛ばしてしまえばよかろうに』


「お前は黙ってろ。人間相手なら出番はないぞ」


『ふん、元より手を貸す気などないわ。我は高見の見物でもしていよう。せいぜい頑張るのだな』


 オロチの奴……あの玉の中からでも外の様子が見えてるのか? それとも奴の力で外を見ているのだろうか?



「今回は俺やメア、めりにゃんよりもロピアやサクラコ、ライゴス、ショコラの方が頼りだ。負担が大きくなるかもしれないがよろしく頼む」


「あたしに任せときな。要は外身だけ破壊すりゃいいんだろ? そういうのは得意さ」


「うちはどっちかっていうと中身にダメージ与えるんは得意なんやけど……外だけっていうのは難しいで……やれるだけやってみるわ」


「我も出来る限りの事はするのである!」


「私は……物を見て見ないと分からないけど、解体出来るかもしれない」


 ロピアは確かに内側に攻撃を打ち込む攻撃が得意だから難しいかもしれないな……ショコラとサクラコに頼るしかない。


「俺やメアはとにかく相手にへばりついて無理矢理兵装を一匹ずつ引き剥がすしかない。下手に攻撃したら中身が死んじまう」


「……面倒だけど仕方ないわね」


「儂はどうしたらいいじゃろうか……力は無いし魔法で攻撃というのも確か効かぬのじゃろう?」


「めりにゃんは俺達が引きずり出した人間をどんどん城の中へ転移させてくれ。戦場に一般人が転がってたら邪魔だし巻き込まれるかもしれないからな」


「了解じゃ!


 あとは……ナーリアか。


「……ん? おいナーリア、弓はどうした?」


「そ、それが……その、非常に言いにくいのですが……」


 戦場に弓を持たずに来るなんて……というかナーリアの持ってるそれはなんだ?


「それはいろいろあったんじゃ。儂の責任なので責めてやらんでくれ。しかし攻撃面ではなんら問題無いのじゃ」


 クリスタルツリーの弓よりも、今もってる四角い筒状のアレの方が火力が出るのか?

 いや、今はそんな話をしてる場合じゃないな。



「ナーリアはどうする? 出るか? ここにいるか?」


「私は……その、新しい武器の力加減ができないのできっと中の人を殺してしまいます」



 どういう事だよ。そんなに強力な武器なんてどこで見つけてきた?


「……まぁいい。それなら少し大変だが住民の避難誘導を頼めるか? 今外はきっと大混乱だろうからな」


「かしこまりました!」


「住民の避難なら是非城に集めてくれ。ここが障壁にて保護されているのならここが一番安全であろう?」


「個人的には砲撃もされてるし何もかも一か所にってのはおススメ出来ないが……障壁張る人員を割く都合もあるからそうするしかないな」


 何か所かに分散してそちらにあの砲撃をくらったら住民が一網打尽になってしまう。

 それならここで纏めて守る方がまだマシだろう。


「メアさん……私……」


「ヒールニント、気持ちは分かるけど今回はあいつと戦う事にはならないと思うわ。多分どこかで見て笑ってるだけよ。だから……」



「……分かりました。ここに居ます。だから、気を付けて下さいね」


「うん。行ってくるわ」


 ……よし、これで一通りOKだろう。めりにゃんに視線で合図を送る。


「では……準備はよいな? 皆行くぞ!」


 俺達が大体の流れを決めた所で、王が声をかけてきた。


「諸君らに任せきりになってしまうようですまない……出来れば罪もない民たちを救ってやってくれ」


 ドガァァァァァァン!!


 城がガタガタと震える。


「ちっ、あいつら第二弾を撃ってきたわよ! 思ったより短いスパンでぶっ放せるみたいね……早く行ってなんとかしてきなさい!」


 アシュリーの怒鳴り声を聞きながら俺達は戦場へ。


 アシュリーがきちんと障壁を張っていてくれる間はレオナも大丈夫だろう。


「さて……こりゃすげぇな……」


 めりにゃんの転移で俺達は戦場の上空へ。

 彼女の魔法により空中に浮かびながら辺りを見渡してみると、相当数の魔導兵装ががちゃがちゃ音を立てながら進軍してくる。


 大きさは人を横に三人分、縦に二人分くらいのサイズで、重装歩兵の鎧のような外見で、色は真っ黒。

 アレ一つ一つに人間が入ってるわけか……。


「みんな、厄介な闘いになるがよろしく頼んだぞ!」


 一斉に皆が返事をしたのを合図に、俺達はそれぞれ戦場へ降り立った。

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