姫魔王は性別が行方不明。
「さぁ、こちらへどうぞ」
私達はテロアに連れられて城の中を進む。
前に来た時はいろいろと雰囲気が違うかな。
前に来た時よりはピリピリ感が少ない。まぁ以前は直接王のところへ行っちゃったから城の内部まではちゃんと見て無いしね。
「しかしセスティ殿、今までどうされていたのですか? 皆心配していたのですよ? ナーリア殿は無事に合流できたのでしょうか?」
あぁ、まだ何も説明してなかったっけなぁ。
「大丈夫。ナーリアもステラもちゃんと一緒に居るから心配いらないよ」
「そうでしたか! ステラも全然報告をよこさないもので不安だったのですが……そういう事ならばよかったです」
兄に連絡入れないって……まぁ魔物フレンズ王国もいろいろあったからなぁ。
下手に報告入れたら心配させるとでも思ったのかもしれないな。
「ん、そろそろ到着しますよ」
あっ、見覚えあるとこに来た。これが謁見の間の入り口かな。
「皆様は少々お待ちください。王へ取り次いできます」
謁見の間に入っていくテロアを見送りなが私はアレクに疑問を投げかける。
「そう言えば王って忙しいんじゃないの? 私達がいきなり押しかけて大丈夫なのかしら?」
「せ、セスティ殿、言葉が……」
「ん? どうかした?」
「こいつは前もこうだったでしょ? 気にしたら負けよ」
アシュリーがアレクによく分からない説明をしている。
何か変だったかな……。
「とにかく、王は重要な事はきちんと優先出来る手腕の持ち主ですから大丈夫でしょう」
その時、そろーっと大きな扉が開き、中からテロアが帰ってきた。
「あ、あの……申し訳ないのですが……王が後にしてほしいと」
「なんですって!? いったい王に何があったのですか!?」
アレクがさも意外そうに驚き、何かとんでもない事態が起きたのではないかと心配し始めたが……。
「いえ、実は……リンロン殿から先日贈り物が届きまして、どうやら同盟成立の祝いの品らしいのですが……」
……リンロンって確かロザリアが言ってたロンシャンの第二皇女だっけ?
「海産物が大量に届いたので王も喜んでいたのですが……どうやら船で輸送されてくる間にその、少々傷んでいたようでして」
海産物が痛んでいた……って事は。
「お腹痛いから後にしてほしいと」
「な、なんと……」
アレクはその場にガックリと崩れ落ちた。
私はちょっと気になってる事があったけど口には出さなかった。
もしかしたらそのリンロンって子は、日数的に生ものが傷む事も計算して送ったのだとしたら?
死にはしないまでも、これは……。
壮大な嫌がらせなんじゃ?
ふいに袖をくいくいっと引っ張られた。
「アシュリー? どうかした?」
「しばらく無理そうだし、私達だけで買い物にでも行きましょう?」
えっ。でもアレクはどうするの?
「はは……私の事は、お気になさらずに……。王の具合が良くなり次第通信機でお呼びしますので……」
アレクは急に十歳くらい老け込んでしまったように力なく笑った。
「アレク様もこうおっしゃっていますし何か用事があるようでしたらそちらを先にすましてはいかがでしょう? 何でしたら私が案内を……」
「いらない」
「え?」
「邪魔」
「そ、そうですか。分かりました……でしたら、その……お二人で、行ってらっしゃいませ」
私とアシュリーは二人に軽く手をふりつつ転移で城の外へ出た。
「ねぇアシュリー、さすがに好意で案内するって言ってくれたのにあの反応は酷いんじゃない?」
「だって邪魔だったんだもん」
アシュリーが口を尖らせて「ぶー!」と言わんばかりの表情をした。
「なんだかアシュリー少し柔らかくなった感じするね。その方がいいと思うわ」
「そ、そう? 別に誰にでもこうじゃないわよ」
「じゃあ私にだけって事? ありがとね♪」
「ば、ばばば馬鹿じゃないの!? そんなわけ……ないわよ」
私にだけっていうのはさすがに思い上がりだと思うけど、良い物が見れたから良しとしよう。
やっぱりアシュリーは少しくらい気を抜いているくらいが可愛くていいと思う。
『主、先日も言いましたがこの女の事を可愛いなどというのは異常です思考エラーです』
「おいてめぇ……この腐れアーティファクト野郎、今日これ以上口を挟んで来たら本気でぶっ壊すからな」
『主、主助けて下さい』
「うーん。これはメディファスが悪いかなー。だから今日は大人しくしておきなさい」
『ぐぬぬ……不本意ですが、従いましょう』
「ほら、もうメディファスは大丈夫だから機嫌直して。……ね?」
「う、うん……」
アシュリーも今までいろいろ苦労してきた分最近やっと落ち着いてきて緊張の糸が切れたのかもしれない。
でも私は彼女がこのくらい気を抜いて生活できるような世界がいい。
平和なままを保てればそれが一番だよね。
その為にも、いろんな問題を少しずつ片付けていかないと。
メリーに入ってる本物のロザリア。
そして今どこで何をしてるか分からないアルプトラウム……。
「はぁ……」
私は無意識にため息をついてしまった。
「やっぱり……私と一緒じゃ、つまらない?」
「あ、違う違う。いろいろ問題があるからアシュリーがいつまでも笑顔で居られる世界を作らなきゃなって思ってさ」
「……そう、なんだ。……ばか」
『た、耐えられぬ!!』
「「うるさい」」
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