ぼっち姫、めりにゃんにめろめろ。


「サクラコさんお腹へったよー」


「うるせぇな今そんな場合じゃないだろうが!」


「セスティ、ビスケットでよかったら儂が持っておるのじゃ♪」


「わーい♪ ありがとめりにゃん大好き☆」


「だだだだ、大好き!? まったく! セスティはそういう事を気軽に言うんじゃから……」


 なんて能天気なやり取りをしてる訳だけれど、ちょっと今笑えない事になってたりする。


「なぁ元魔王よ。で、ここはどこなんだ?」


「むむっ……魔力の方角としてはこっちで合ってる筈なのじゃ……多分」


 絶賛迷子中です。

 遺跡に潜ってから結構時間も経ってて、お腹減っちゃったんだよね。

 めりにゃんがお菓子持ってて助かった。


 ビスケットをボリボリやってたら口の中がパッサパサになっちゃってすっごくしゃべりにくい。


「サグラゴさんみずぼってない?」


「あぁもうお前らはっ!! なんだこれあたしは幼児の遠足引率者か何かか!?」


 まったく失礼しちゃうわ。

 人の事園児呼ばわりとか。

 どうでもいいけど水ないの?


「……はい、これ」


 無言で後ろからついてきていたショコラが私の脇腹のあたりをちょんちょんってつついて水の入った容器を差し出してきた。


 まったく、ツンデレだけど有能な妹だわ!


「ぷはぁっ! ありがと♪」


「あまり水分取るとトイレ行きたくなって困るから気を付けろよな?」


 サクラコさんがなんか恐ろしい心配をしてきた。

 確かにこんな所でトイレ行きたくなったら大変だ。


「あっ、でも最悪の場合メリニャンに転移でここから出してもらえば……」


「……それがのう……」


 メリニャンはなんだか少し申し訳なさそうに俯いてしまう。


「どうかした?」


「それが……なんでか知らんが転移が出来ぬのじゃ。退避路の確保用に試してみたんじゃが何か妨害を受けている感じがするんじゃよ」


「えっ、そうなの? だったらトイレ行きたくなったらまずいじゃん!」


「う、うぬ……そうならぬようにさっさと目的地へ到着できるようにするわい」


 道中でたまに魔族でも魔物でも無いよく分からないものに襲われたんだけどそれはカエルさんが頑張って倒してくれた。


 というより、サクラコさんが道中は蛙が戦えと言って無理矢理そうさせた。


「そういえばさ、アレって結局なんだったの? めりにゃんが前に来た時は居た?」


「いや、当時はあんなものおらんかった。魔物だけじゃったよ。今この遺跡には魔物はほとんど残っておらん。アレがなんなのかもよく分からんな……」


 魔物は動物みたいだし、魔族はグロいのが多い。だけどここで遭遇するよく分からないのはなんていうか無機物……ゴーレムとかに近いような外見してて、私達が近付くと目を光らせて襲い掛かってくる。


「噂をすれば何とやらだぞ。ほれ蛙、出番だ」


「なんであっしだけ……いや、別にいいんですがね」


 サクラコさんの言葉にぶつぶつ文句を言いながらも変なゴーレムを一刀のもとに切り伏せる。


「カエルさんかっこいい♪」


「そうやって労ってくれるのは姫さんだけでさぁ……」


 サクラコさんは動く気が無いしショコラは私をずっと睨んでるしシリルはショコラしか見て無いしめりにゃんは道案内に集中してるからね。


 カエルさんがいくら頑張っても誰も褒めてあげないから私が頑張って応援しているのだ。


 私が戦えばいいんだろうけど、カエルさんがやってくれるんだったらそれでいいかなって。


 面倒だし。


 なんかああいう意識が無い、何かに操られてます~って感じのが苦手なんだよね。

 本当に意思はないのかな? 壊しちゃって平気なのかな? とかいろいろ考えちゃう。


 しかもなかなか諦めないから手加減して殴れば向かってくるし、本気で殴ると粉々になっちゃうしで難しいんだよ。


 だったらもうカエルさんに投げっぱなしにして何も考えない事にした。


「少しずつ近くはなってきておるのじゃ。それは間違いない。……じゃが……本当にこのゴーレムみたいなのはなんじゃ? 個々の力はさほどではないが、あの時のガーディアンを思い出すのう……」


 どうやら以前ここでアーティファクトを手に入れた時、私達がニポポンで戦ったようなガーディアンが居たらしい。


「言われてみればあんときのデカブツに似てる気がするな」


 サクラコさんも思い出したみたい。


「しかしアーティファクトはもうここに無いわけじゃし……それに以前は転移で外に出れた筈じゃが……いや、あれは転移魔法という訳ではなかったか……?」


 めりにゃんが当時を思い出そうとしてあーでもないこーでもない言ってるけど、本当は私もそこに居た筈なんだよね。


 全然思い出せなくてほんと申し訳ない。


「おっ、どうやらこの先で合ってるようじゃぞ」


 目的地まで大分近付いてきたみたいで、めりにゃんが「後はこれをまっすぐじゃ♪」と言って尻尾をぴこぴこさせながら少しスキップ気味に歩いていく。


 かーわーいーいー!


 私はめりにゃんが現れてからというものかなり上機嫌だった。

 自分でも不思議なくらいにテンションがあがっている。


 なんでだろう? 覚えてはいないんだけど、この体が覚えてる、みたいな感じ?


「どーじゃどーじゃ!? ちゃんとついたのじゃっ!!」


 ドヤってるめりにゃんも可愛いよ!


 ……でもさぁ。


「なんか扉閉まってるじゃん。開くの?」


「……それが、その……開かないのじゃ」


 しゅんとしためりにゃんの感情に連動しているかのようにしっぽもしょんぼりしている。


 かーわーいーいー!

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