ぼっち姫、プリン仮面参上す!
突然現れたライノスという魔物も、言葉を喋っているのだから上級魔物なのだろう。
幹部か、或いはそれ相応の力がある筈。
ゴツゴツとした肌をしていて、腕も足もとにかく太くて堅そう。
一番の特徴はその鼻先にある巨大な牙……じゃないな、あれは角だろうか?なんとなくサイが二足歩行しているみたいに見えた。
俺は屋根の上に立ち上がり、自分が動ける事をライゴスに分かるようにしてやる。
まだこの茶番は続いているのだ。
ここですべてを台無しにするわけにはいかない。
「貴様何しに来たのであるか? ここは手出しさせんぞ」
その言葉を、人々はどう受けとっていいのか分からず困惑しながら新たな闖入者とライゴスを交互に見つめた。
「ライゴスともあろう者が人間の町を守ろうってのか? そりゃ俺達がここで戦えばこんな町はすぐに焼け野原だろうけどな!」
「ここには我の仲間が住んでいるのである。そして彼らがここを好きだというのだから我が守るのは当然なのである」
二人の発言に人々がざわつき始める。
二つの意味で、だ。
まずはライノラスが言った、ここで戦えば焼け野原になる。という恐怖。
そしてもう一つが、どうやらライゴスという魔物が味方になってくれたかもしれない、という事だ。
そしてそれはゴギスタ達が居るから、という意味にも取れる。
このピンチは逆にチャンスかもしれない。
あとは、出来る限り被害を出さずにこのライノラスを始末できれば完璧だ。
ライノラスといえばニーラクの村でライゴスと戦っていたという魔物だった筈。
それならデュクシやナーリアでは難しい。
ライゴスも戦力が拮抗していては戦いが長引き、被害が増える。
めりにゃんなら余裕だろうが、きっと周りに被害が出る。
それなら俺がやるしかないんだよなぁ。
「おいマリス。変化で俺の顔を隠す事って出来るか?」
最近ずっと大人しいので寝てるのか起きてるのか分からないマリスに問いかけると、ピクっと一瞬小さく動いて、すぐに顔全体を覆い隠せるくらいに広がり、俺の顔に纏わりついた。
「なんじゃそれは……? なんだか物凄くダサいのじゃ」
うるせぇよ。
きっと今の俺は頭巾で顔を覆っているような外見だろう。
そして首から下は、そのまま。
不審者極まりない。
「おいマリス。いっその事全身覆えるくらいになれないのか? こう、なんていうか戦闘服みたいな感じで」
「きゅきゅ~?」
マリスは悩むような感じで鳴いた後、さらに大きく広がり俺の体全体を包み込んだ。
そして、まるで赤いドレスのような服装になる。
…めっちゃヒラヒラしてるじゃんかよこれ。
しかも結構可愛いデザイン。
なんだか少しテンションが上がってきた。
「よっしゃ☆ 私にまかせとけーっ!」
「ライノラス。お前がこの町に害をなそうとするのなら看過できぬのである。我がしもべがお主の相手をしよう」
ってこのライオン丸! 誰がしもべなのよ!!
私の殺意が伝わったのか、ライオン丸が一瞬ビクっと肩を震わせた。
「あ~? お前のしもべ、だと? お前と俺の力は互角だったはずだ。お前の部下なんかが俺の相手になるわけ……」
「いでよプリン仮面!!」
ぷ、ぷりん仮面!?
あ、そうか今私顔も覆面みたいになってるんだった。
それを見て適当な名前をつけたのね……。後で覚えとけよー!?
私はライオン丸の言葉を合図にライノラスの前へしゅたっと素敵にカッコ良く登場した。
赤いドレスをふわりと翻しながら現れた私に人々の視線は首ったけよ☆
顔は見えてないとはいえ私が女っていうのは見たらわかっちゃうから、念のためにアシュリーからもらった薬を飲んでおいた。
これ飲んどけばある程度目立っても呪いの進行が抑えられる筈っ☆
「さぁ私の名前はプリン……か、めん……私の相手は貴方ね? ぶち殺してやるから覚悟しなさいっ♪」
さすがにプリン仮面は恥ずかしいよ!
私の名乗りを聞いてライノラスは口を大きく開けてぽかーんとしていた。
そんなに私が気になる? 見とれちゃったって事? 罪な女よね私って。覆面でも隠し切れないプリティオーラがでまくっちゃってるのね。
「ら、ライゴス……なんだこのクレイジーな奴は……? こいつがお前の言っていた部下、なのか? こういうのが、趣味だったのか……引くわ」
「誤解である! 誤解なのである! まさかこんな事になるとは思っていなかったのである!!」
なに二人でごちゃごちゃ言ってるのよ!
「私が来たからにはもう安心よ! ライゴス様がこの町を守ると決めたのなら私もそれに従いましょう♪ って事でほれかかっといで。遊んだげるわ☆」
「こ、この、えーっと、ぷ、プリン仮面? 上等だコルァそっちこそかかってきやがれってんだ!」
「あいよっ♪」
どごぐぉっ!!
あんまり周りに被害を出さないように戦わないといけないから、一瞬でライノラスの頭上に飛んで地面目掛けて頭をぶっ叩いた。
「ぬっ!? ぐおぉぉぉっ!!」
あれ、結構強めにぶっ叩いたのに頭蓋骨粉々になってないなぁ。
ライノラス……名前長くてウザい。サイ男。これに決めた。
サイ男の骨や皮膚は思った以上に頑丈らしい。手加減する必要なかったかな?
「ぐぉぁぁっ、お、お前何者だ!? ライゴスの部下が、こんなに強いわけうごっ!」
「ごっちゃごっちゃうるさーい♪ えいっ! えいっ☆」
ぶっ叩くと、ぼごっと地面から顔が出てくるからその都度頭を叩いてあげる。
「あっと何回叩いたら頭砕けるかなぁ~☆ みんなぁ~♪ ちゃんと見てるぅ~??」
私がオーディエンスの反応を見ようと辺りを見渡すと、何故だかみんな顔面を真っ青にして凄い顔をしてた。
デュクシまで。
プルットやゴギスタは泣き出しそうだった。
屋根の上を見れば、めりにゃんもなんだか苦笑いしてる。
振り返るとライゴスはその場に両膝をついて顔の前で両の掌をすりを合わせ、なんかぶつぶつお祈りしてる。
ナーリアだけが、今の私を見て目を輝かせてた。
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