ぼっち姫、けだものに取り囲まれる。



「よしよくやった。お前ら思ったより連携が取れてるじゃないか」


 思ったよりも個人の能力は低かったが、その分連携がしっかりとれていれば問題ない。


 最低限の戦力と、あとはしっかり情報収集さえしてくれればそれでいい。

 どうせリュミアを見つけるまでの付き合いだ。



 呼吸を整えた二人はトロールからそれぞれの剣、短剣を引き抜き意気揚々と俺の居る方へ帰ってきた。


「でもな、ちょっと緊張を解くのが早いんじゃないか?」


「「え?」」と二人が仲良くハモりながらトロールの方を振り返る。


 俺の言葉にまだ息があると思ったのだろうが、そうじゃない。


「お前らだけでアレをどうにか出来るか?」


 そう問いかけてもまだピンと来ていない二人だったが、周りをキョロキョロ見回して、やっと自分達が置かれている状況を理解する。


 仲間がやられて怒りに震えているトロール二体が五十メートルほど離れた場所からこちらの様子を伺っていた。

 あれだけ殺意を放ちながら冷静にチャンスを伺うのだから大したものだ。

 頭がでかいだけあって知能もそれなりにあるらしい。


 二人がトロールに気付き、カタカタと震えだした。


 でも、実はそれだけじゃない。


「グルルルル……」


 低い唸り声をあげて数十匹のウェアウルフが俺達を取り囲み、じりじりと包囲を狭めてくる。


 遅れてそれにも気付いた二人が、泣きそうな眼でこちらを見つめ、口をパクパクしている。


 さすがにこの状況は対応できる限界を超えているだろう。


「お前ら合図したらその場に伏せろ。ちゃんと伏せろよ?死んでも責任取れないからな」



 俺はこの身体になってからというもの昔のような戦い方が出来なくなってしまった。

 以前は問答無用でとにかくぶん殴るか切り付ければそれでよかったのだが、どうもしっくりこない。

 その代り、この身体の奥の方からあふれ出てくる魔力が俺に新しい力を与えてくれた。


 腰から片刃の剣を抜き、そこに魔力を注ぐ。

 やがて刀身がうっすらと白く輝き始めた。


 まだ加減がわかんねぇんだよなぁこれ。


「おい、ちゃんと伏せろよ。いくぞ?三、二、一……うぉりゃぁぁぁっ!」


 俺はその場で乱暴に剣を周囲に向けて振り回す。


 激しい音は一切なかった。


 ただ、剣から放たれた冷気が全てを切り裂き、そして切り口からそれらを凍らせる。


 後には不自然に体の中心から凍ったウェアウルフとトロール二体、そして切れたのに凍りついて崩れ落ちる事のない木々たちが残った。


 うーん。もうちょっと弱めでもよかったな。

 もともと自分の力じゃねぇから扱いが難しくて困る。



 でも私ってやっぱりちょーつおいっ♪

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