9 無題
いつからだろうか
空は空色を失い
風は音を失った
海は波を失い
摩天楼は輪郭を失った
人の心から少年の頃の記憶が失われるように
世界は穏やかな終焉を迎えていた
すべてが白黒の版画になろうとしていた
そんな世界の端に、門が現れた
門を支える三本の柱はどんな建物よりも高く
開きっぱなしの戸はどんな道よりも広く
門の向こうの空は何よりも青かった
わたしは、その門の向こうにある元通りの世界に飛び込んだ
極彩色の希望の中に飛び込んだ
紺碧の空に飛び込んだ
空に空色はなく
風に音はなかった
呆然とするわたしの後ろには、色鮮やかな世界の幻影が
なにも言わずに佇んでいた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます