第29話
伯母様と楽しいお茶の時間を過ごした後は自室に戻り、伯母様の言葉を考える。
部屋の机の上には幾つもの招待状が起こられていた。
伯母様の養子に入った私は、必然的に伯母様の家を継ぐことになる。だから、家を継げない次男以下の男たちから求婚の手紙も届いていた。隣国の公爵令嬢だから身元ははっきりしているし。
婚約破棄の件は王家にとっても醜聞になるので隠されている。だから私が婚約破棄をされたかことを知る者はいないはずだ。
「婚約、か」
視線を部屋の隅に向けるとそこには幾つもの姿絵があった。気に入ったら会って欲しいということで送られてくる姿絵。見る気もなかったので綺麗に包装されたまま部屋の隅に山積みになっている。
◇◇◇
「!?」
「主、目を覚ました。風邪、ひくから。寝るならベッド」
いつの間にか寝てしまっていたらしい。私はジルにお姫様抱っこされていた。ソファーの上で寝ている私を案じてベッドに寝かせよと運んでいてくれたようだ。
私は手を伸ばし、ジルに顔に触れる。大やけど負い、顔を包帯で隠している。私はそっとジルの包帯を解く。
ぱらりと落ちた包帯に隠されていたのは火傷のせいで変色し、でこぼこになってしまった皮膚。古傷を刺激しないように気を付けながら私はジルの顔に触れる。
小さな皮膚の皮がむけ、ガサガサしている。今は服で隠れているけど彼の体にも火傷の跡がある。奴隷になってから良い主に出会わなかったのだろう。初めて会った時は表情はなかった。奴隷商人も言っていた。彼は世界一醜い顔をしている、と。だから買手がつかなかったようだ。
「主、どうか、した?」
私だけが知っている彼の素顔。
大の男相手に変な言葉かもしれないけど、きょとんとした顔が何とも可愛らしいと思ってしまった。
「ジル、いつものように一緒に寝ましょう」
「まだ、日が高い」
「そうね。でも、たまにはお昼寝門悪くないでしょう」
「・・・・お昼寝」
「そうよ。お昼寝」
ジルはまるで壊れ物でも扱うように私をそっとベッドの上に降ろした。そして、いつものように私の隣に来てくれる。私は彼に抱きしめられながら目を閉じる。
「・・・・・・温かい」
今間のままじゃダメなのかとは分かっている。それを祭り上げようとする者もいる。私たちはそんなあなたを守らなければいけない。この先、たとえ何が起きようとも。
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