三題小噺~三つのお題で世界を創造しましょう~

橘花やよい

1. 「闇」「残骸」「眼鏡」

 眼鏡をかけた。視力を補強する役割をもっている眼鏡のくせに、かけたところで何かが見えることはなかった。真っ暗なのだ。辺り一面が闇に覆われている。

――ここはどこだ。

――私は誰だ。

――私は何をしているのだ。

 目をこらしても、何も見えない。孤独だ。

 私は怖くて、後ずさった。

 何かを蹴った。弾力のある物体だった。

 私は振り向いて、目をこらした。

 しゃがんで、物体をまさぐった。

――何だ、これは。

 周囲がぼうっと照らされた。青白い炎が浮かんでいた。まるで、怪談に出てくる人魂のようだと思った。

 眼鏡の硝子越しに、足元の物体を見た。

 残骸だった。

 それは私の残骸だった。

 目前に、私の残骸が転がっている。

 私だったものが転がっている。

――私は何だ。

 私もまた、人魂だった。

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