ラッキー・デイ

750cc

第1話 何かがキてる

 バイトを終えた帰り、ゲームやマンガなどの総合ショップへと立ち寄り出たばかりのコミックを1冊持ちレジへと向かう。会計を済ませようとするとキャラくじが目に入った。そこに並べられているのは俺がハマっているソシャゲのキャラのフィギュア。ものは試しと1回引いてみることにした。


「あ、おめでとうございます。A賞のフィギュアですね」


 …マジか?

 こんなの当たるわけないと思ってたのに当たるものなんだな。



 ちょっと恥ずかしかったので当たったフィギュアは背負っていたリュックに押し込み、アパートへ帰るために駅へと向かう。電車の中ボーっとスマホを眺めていたが、暇つぶしにと当てたフィギュアのキャラがいるゲームアプリを立ち上げる。すると今日のログインボーナスが表示された。

 ログインボーナスはガチャ1回分の石、いつもは10回分たまってからまとめて引いてるが、なんとなく気分で1回引いてみる事にした。

 見慣れたガチャ画面に移動し、まあ出てもRだろうなあと思いながらガチャをスタート。するといつものガチャ演出ではなく、派手な演出が始まった。


「えっ」


 ガチャ結果画面に表示されたのは、さっき当てたフィギュアのモデルとなっている排出率1%のSSRのレアキャラ。バイト代から諭吉さん一人ぶっ込んでもお目にかかれなかったキャラがそこにいた。


「…っし!」


 その場で思わず小さくガッツポーズ。向かいの女子高生が変なものを見る目で俺の事を見てたけどそんな事など気にならない。


 これマジで欲しかったんだよなあと喜びつつもふと思い立つ。そのアプリを終了させもう一つのゲームアプリを立ち上げる。こっちもたしかガチャ1回分くらいは石があったはずだ。

 確認すると1回分の石がある。ガチャ画面に移動しガチャをスタートさせると、今まで見た事もないど派手な演出がはじまり、それが終わると画面に表示されていたのは排出率0.5%のURキャラ。そのキャラ欲しさに沼ったヤツ続出の超レアキャラが表示されていた。

 ガッツポーズも出なかった、ただその画面を見て唖然としていた。



 アパートへの帰り道、レアキャラ2体ゲットでホクホクしながらコンビニへ入り、ジュースやら菓子やら持ちレジへ向かうとレジ横にある流行のアニメのキャラくじが目に入った。ついでにとそちらも1回分買い、その場で引いてみる。


「おめでとうございます。すごいですね、A賞があたりました」


 右手にA賞のクッションがなどが入った袋をぶらさげコンビニを出る。


 ありえない、いくらなんでもこれはありえない。引くもの引くもの大当たりってどうなってるんだ?

 何かキてるのか? 何がキてるのかわからないけど俺に何かキてるのか?


 こんなにツイてる事なんで今まで無い、どうした俺?

 かなり動揺しながらアパートへ帰ろうとすると、ある言葉が頭に浮かんだ。


『一度や二度なら偶然、しかし何度も続けばそれは必然』


 誰が言ったのかもどこで覚えたのかも忘れたけどそんな言葉。

 俺は駅前へと引き返し、ある場所へと向かった。




「…ふふっ」


 バイト中でも笑いがもれてしまう、同僚の女の子が「大丈夫? 何かあった?」とか聞いてくるけど大丈夫だ、問題ない。

 そうだな、キミは俺のフェラーリの助手席に最初に乗せてあげよう、車の免許とか持ってないけど。


 あの日、駅前へと戻った俺は宝くじ売り場へ向かい、そこで1等3億円の宝くじを1枚買った。

 もしあのツキがそのままならきっと当たる、抽選日の2週間後が楽しみだ。


 そして2週間後、俺は宝くじ売り場へと向かった。「ふっ、また当てちゃったか」とクールにいくか、「ええぇぇ~」と動揺しまくるか、当たった時どうしようかとつまらない事を脳内でシミュレートしながら。


「これお願いします」

「はい、確認しますね」


 売り場の人に宝くじを渡す。

 さあ女神、俺に微笑んでくれ。


「こちらハズレ券となります。またよろしくおねがいします」

「…えっ」

「こちらハズレ券と…」

「あ、すいません。ありがとうございました」


 返された宝くじを受け取り、ポケットにねじ込むと恥ずかしさでちょっと赤い顔をしながら売り場を後にした。



 アパートの俺の部屋、一年中だしっぱなしのコタツの上にちょっとクシャクシャになった1枚の宝くじがある。


「…なんでだ」


 21インチの液晶テレビの横に置かれたアニメのクッションを見る。あれで最後だったのか俺のツキは。

 そうだ、宝くじの抽選は昨日だったんだ、ひょっとして昨日行っていれば…。

 いや昨日だろうが今日だろうが当選番号が変わるはずは無いか…。


 ……昨日?


 俺はそこで重大な事に気付いた。宝くじの抽選は昨日だった、だが俺がツキまくっていたのはいつだ? 2週間前?

 そうか、あの日に結果が出るものじゃなきゃダメだったんだ。

 なんて事だ、買うなら1等100万円のスクラッチにしとくんだった。


 なんだかやるせない気分になりながらベッドに横になりスマホのゲームアプリを立ち上げる。


「あ、ガチャ石たまってら」


 まるでやる気のないままガチャ画面へと移動し1回分のガチャをスタート。

 前に見た派手な演出がはじまり、表示されたのは1%のSSRキャラ。


「……」


 ですよねぇ、やっぱ偶然か。まあ世の中そんなもんだよな。

 画面に表示された2週間前には大喜びしたキャラを見ながらそんな事を考えていた。

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