JSらんぶる★ろりこん更生委員会!

カピバラ

#1 天使、そして、天使

 




 ここに当真とうまこんという男がいる。


 彼は自宅のリビングにあるソファーで夕方のニュースを映すテレビの液晶を、何を考えるでもなく、ただぼーっと見ている。


  男性にしては綺麗な黒髪ミディアムヘアにあまり日焼けもしていない肌、ソースか醤油で例えるなら醤油顔で目付きはあまり良いとは言えない。左目尻には小さな泣きぼくろがある。


 歳は十九、体格はどちらかと言えば細身で体重は平均。服装は白いワイシャツにゆったりとしたタイプのボトムスを好んで着用していて、今日は深緑のボトムスにワイシャツ姿である。


 すると玄関の扉が開く音と共に、紺の前に姿を見せたのは真っ赤なランドセルを背負った制服姿の少女だった。


「おーい、紺兄っ、学校帰りにタ○ンワーク取ってきてあげたよ?」


 少女は彼を紺兄と呼ぶ。そしてその手にはコンビニなどで無料で手に入る求人雑誌。

 そう、彼は訳あって無職なのだ。


 当真紺、そんな彼の前に現れた少女、それこそ太陽を肉眼で直視するよりも眩しい…そんな屈託のない最高の笑顔で紺に話しかけるのは妹の朱音あかねである。


 彼女は所謂ニートの兄に帰り道のコンビニから取って来た無料の求人雑誌を手渡す。


 健康的な肌に明るめの赤茶色オレンジブラウンのミディアムヘアを高めの位置で結ったぴょんぴょんと跳ねるサイドテールがチャームポイント。


 少女故に未だ女性的なラインを感じさせないボディライン…そのくせスカートからちらほら覗くのは細くも肉付きの良い女性特有の太もも…膝にはいつも絆創膏が絶えない。

 そんな彼女だが服装は極めて女の子らしいものが好きで短めのスカートを好んで着ることが多い。


 そんな元気が取り柄の妹、朱音はリビングのソファーに座る兄の膝にちょこんと座りその大きな緋色の瞳をキラキラさせる。


「いいお仕事あるといいね?紺兄っ!」


「可愛いやつめ~!こうしてやるぅ!」


 頭を撫でられると朱音あかねはくすぐったいよと身をよじらせる。


「こ、紺兄はお家の為に頑張ってるんだからいいのっ…ほんとはバイトなんてしなくてもいいのに…」


 二人が戯れているとその背後に人の気配がする。


 仲良く求人雑誌を見る二人を見て首を傾げる少女の姿がそこにはあった。

 綺麗な深黒色ディープブラックの長い髪、雪のように白い肌、マシュマロのような極上の頬っぺが何とも愛くるしい。

 彼女もまた、紺の妹の一人である。


 五年生の朱音より背の低いその子の名は藍音あいね。二つ歳下の三年生だ。

 甘えん坊で兄の紺にべったりな藍音の性格は朱音とは正反対で控えめな女の子だ。基本的に朱音のお下がりを着ているのでフリフリの女の子らしい服装がメインである。もう三年生だが絵本を読むのが好きでいつも肌身離さず何かしらの本を抱えている。

 朱音と違って運動音痴で走るとすぐに転ぶほどの彼女にも譲れないものがある。


 藍音は朱音が紺に甘えるのを見て、はっ、と持っていたお気に入りの絵本を床に放り投げる。

 そして大好きな兄の膝を姉から奪わんと奮闘する。しかし朱音もそこは譲らない。


「…ぅぅ…紺にぃに…」


 今にも泣き出しそうな表情で紺を見上げズボンの生地を引っ張る藍音。

 そのような顔をされては紺の我慢も限界だ。

 そんな藍音を紺はひょいっと片手で抱き上げては片方の膝に乗せてやる。朱音は少しばかり不満そうだが仕方なく片膝を譲ってあげた。






 そんな兄にべったりな妹達と紺は暮らしている。正直、可愛くて仕方がないといったところか。


 そんな彼にとっての幸せな時間が、音を立てて崩れ去ったのは、そう遠い未来の話ではなかった。



 ……

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