第5話 はじまり

リナ「お父さん、お母さんありがとう。」

ナミ「頑張ったね。」

タクロー「おめでとう。」

旦那「お父さん、お母さん、わざわざありがとうございます。」

ナミ「頑張ってね!パパ!」

旦那「パパかー。パパですよねー!」

タクロー「しっかりな!」

旦那「はいっ!」

リナ「女の子!」

ナミ「そー。わたしはどっちでも元気に生まれてくれればそれでいいの。」

ナミ「なんか、お父さんは男の子がよかったみたいよ。」

リナ「そうなのー?」

ナミ「お父さんね、リナが結婚するときもすっごく寂しがってさ、だから男の子がいいってずっと言ってたのよ。」

タクロー「おいおい。」

旦那「僕もそうなりそうです。」

タクロー「おいおい、君まで。」

ナミ「名前は?」

リナ「もう決まってる。」

旦那「リナの希望で。」

ナミ「で、名前はっ?」

リナ「マナミ!」

タクロー「えっ!!!」

リナ「聞こえなかったのお父さん。」

リナ「マナミよ。マナミ。」


タクローは思い出していた。あの日からずっと引っかかっていた何かを。

数日過ごしたあの時のこと。

「起きろー」

「わたしピザ食べるのはじめて。」

「おかえりー」

「いただきまーす」

今全てを思い出した。

いきなりきて泊めてくれと言った。

わけわからないこと手伝ってと言った。

ピザははじめて食べると言った。

約束守って、そしたらまた会えると言った。

あの、マナミのことを。

これは偶然なのかそれとも?


リナ「お母さんのナミに、ただ、マをつけただけなのー。」

旦那「嘘つけ!結婚した頃からずっと言ってたくせに。女だったらマナミって。」

リナ「あー、言っちゃったー。」

ナミ「なんで、マナミなの?」

リナ「小さい頃からなぜか頭に浮かんでくるの、マナミって名前が。今まで友達でマナミって子いなかったのに。」

リナ「だから、結婚して子供産まれて女の子だったらマナミにしようって。」

ナミ「へ〜、そうなの?でもかわいい名前よ。マナミ。」

ナミ「お父さん、どうしたの?さっきからボーっとして。」

タクロー「あっ、いや、かわいい名前だなって思って。」


また会える…

その言葉をずっと信じていた。

いつどこから来るのか、そんな事ばかり考えてた頃もあった。

あの日からもう随分経った。

だいぶ歳もとった。

かなり記憶は薄れてても完全に忘れることはなかった。

また会えた…

タクローは孫の誕生と同時にあの日に約束した再会を果たした。そう思った。


マナミ「おじいちゃーん。」

タクロー「おー、マナミじゃないか。」

マナミ「受かったー!」

タクロー「おー!やったなー!」

ナミ「マナミおめでとー!」

マナミ「ありがとう!おばあちゃん。」

タクロー「随分頑張ったもんな。」

マナミ「うん。わたし学者になるのが夢だから、まだまだこれからよ。」

タクロー「頑張れよっ!」

マナミ「アインシュタインを超えるの!」

ナミ「凄いっ!頑張って!」


タクローは確信していた。

あの日突然来たあのマナミは他でもない、今目の前にいるマナミだって事を。

肩にかかるくらいの髪、小柄で可愛いいこの感じはもう他の誰でもない。

マナミなのだ。

数学の道に進むと聞いて、時間の研究をしてると聞いて、あの日と全てが繋がった気がしたのだ。


タクロー「マナミは本当は何を研究したいんだ?」


タクローはずっと聞きたかった質問をした。


マナミ「時間。過去と現在と未来の関係。」

タクロー「なんか難しいな。」

マナミ「へへへっ!」

タクロー「笑わないで聞いてくれないか?」

マナミ「どうしたの?いきなり。」

タクロー「もしも、マナミの研究が進んで過去にいけたら…」

マナミ「えっ!?」

タクロー「おじいちゃんがおばあちゃんとはじめて会った日に起きる事を助けてほしい。」

マナミ「えっ?どういう事?」

タクロー「実は…」


タクローは話した。

マナミだって事以外は。

いきなり来た誰かがしてくれたということにして。


マナミ「それって…、もしかして…」

マナミ「いや、なんでも…」

ナミ「マナミ〜」

マナミ「はーい。」

タクロー「おばあちゃんには…」

マナミ「わかってる。」


長い時間気になっていたなにかがタクローの中で全てつながった。

ホッとしたその時、

ドサッ


医者「残された時間はあと少しかと…」

ナミ「…わかりました。」

リナ「お父さん…」


危篤…


マナミ「おじいちゃん。」

ナミ「わかる?お父さん。」

リナ「お父さーん。」

タクロー「ああ、うん。」

リナ「お母さん、先生呼んでくる。」

タクロー「母さん、お茶飲みたいな。」

ナミ「すぐ買ってくるわ。」

マナミ「おじいちゃん…」

タクロー「マナミ、あの事…」

マナミ「わかってる。おばあちゃんの事、おばあちゃんとの思い出もわたしが。」

タクロー「頼んだよ。」

リナ「先生連れてきた。」

ナミ「お父さんお茶!」

医者「…わかりますか?」

タクロー「はい…」

タクロー「リナ、マナミはホントいい子に育ったなぁ。」

リナ「お父さん…」

タクロー「母さん、いや、ナミ。あの日会えて本当に幸せだった。」

ナミ「わかってるわよっ!そんなこと言わなくても、わかってるわ…」

タクロー「みんな…あ、り、がとう…」


全てが繋がってそれで安心したのかタクローはこの日静かに生涯の幕を閉じた。


マナミ「おばあちゃーん。」

ナミ「なあに?」

マナミ「この目覚まし時計は?」

ナミ「ああ、それはおじいちゃんが昔から大事に使ってた目覚まし時計よ。そういえばマナミが生まれた頃壊れて、それからずっと動かないわね。」

マナミ「わたしもらっていい?」

ナミ「マナミならいいわ。大事にね。」


もう鳴らない目覚まし時計。

また、ここからはじまる。


…おじいちゃん…約束…

きっとまた会えるよね。


















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でも、目覚まし時計[どうした?目覚まし時計続編] オッケーいなお @k160204989

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