4.迎え撃つ
馬は荷馬車のあるエウの元へ帰ってきた。そこには誰も乗っていない。エウはエイレスに何かあったのではないかと心配してエウはその馬にまたがりエイレスの行った場所へと向かった。不安はあったがエイレスのことが心配で仕方がなかった。
その馬は目立つところを走っていたために馬に乗った剣士たちに気づかれ捕まってしまう。
「貴様は何者だ」乱暴に馬から降ろされ縄で縛られ拠点に連れて行かれてしまった。
「私はエイレスの友達なんです。エイレスはどこにいるんですか。」とエウは大きな声で叫ぶ、そこに剣士たちは群がってくる。
「俺達と遊ばないか。」
「良い思いさせてやるぜ」
「すぐに天国へ行かしてやるよ」
「天国とはうまいこと言うぜ」
そこに剣を抜いたエイレスが歩いてきた。男たちはその気迫に圧倒され散ってゆく。エウもエイレスの雰囲気が恐ろしく感じた。
しかしすぐに「エイレス。帰りましょうよ。どういうことなんですか。」と尋ねた。
「私は行かない。もう休暇は終わりだ。お前は帰れ」エウは悲しげな顔で見てくる。
「この者は私が休暇のときに世話になった者だ。」そう言いながら縄を剣で解き「何かの勘違いで付いて来てしまったのだろう。私はどうやら人に懐かれやすいようだ。」周りはそれを聞き笑い始める。
エウに言う「お世話になったな。村の人達にもよろしく伝えておいてくれ」エウの瞳は潤み始めていて次に言おうとした言葉を飲み込み。
エウは馬に乗り走り去って行った。剣士たちは「エイレスが人に懐かれるなんてありえない」
「命知らずの馬鹿だよ」
「ああ可笑しい」この時皆笑い話にして平穏に終わったように思えたが少し離れたところから見ている者がいた。
エウは馬を荷馬車に繋ぎ、村を目指し始めた。エウの表情は悲しげに曇っていた。馬もゆっくりと歩く。
日が沈みかけた頃にエウは一人村についた。ガーディンが彼女を迎え尋ねる。
「エイレスはどうしましたか」エウはうつむいたまま「行ってしまった。戻ってしまった。ガーディンどうすればいいんですか」
それを聞き「とにかく、村長に相談してみましょう」そう言って荷馬車に乗り込みエウの隣に座り手綱をとり馬を走らせた。村長も帰ってくる時間が遅いと感じていたようで家から出てきていた。
「村長」
「ガーディン、エイレスはどうなったのだ。」
エウは降りて謝った「ごめんなさい。私が一緒に行っていたのに、エイレスはこの村を心配して東の村の様子を見に行ったんです。そこで捕まったみたいで、本当にごめんなさい」村長は髭を触りながら話した
「お前たちには黙っていたが東の村が襲われたのは知っていたんだ。心配を掛けたくなくてな、街に行かせたのが失敗だったな。」エウの落ち込む姿を見てガーディンは言う。
「エウ様、気にしなくていいんです。後はエイレス次第ですよ。戻るチャンスがあるとしたらこの村に来たときでしょう」
エウは涙を溜め顔を上げた。村長が頷きこれからのことを話し始めた。
「戦が再び始まろうとしている。昔と同じように戦うのだ。装備は揃っているからいつでも戦える。その時エイレスが私達の方に就いたなら救える。しかし、敵となるのであればやむを得ない」
エウは「きっと大丈夫です。私は信じてますから」と涙を拭った。ガーディンは敬礼をして二人の元から離れた。戦の準備をするためだった。
ガーディンは十人ほどの組織の長であり、この村を守る中心的人物であった。
ガーディンはその十人を集め戦のことを話し始めた「なんとしても、この村を守らなければならない。長年平和だったからと俺達は怠けていたわけではないだろ。外壁ももともと頑丈ではあるが点検し、もし壊れているなどしたらすぐに修復してくれ。敵はそんなに多くない。勝てない相手ではない。」
ガーディンの言葉に皆一斉に雄叫びを上げ士気を高めた。そうしてガーディンは神祈った。戦いに勝てるよう導いてくれと。
小さな村であるので、守る人も少なかった。しかし、一人で数十人の剣士をまとめて相手にできる猛者達だ。勝てる見込みは十分ある。
エウは村長にエイレスが守ってくれたことなどを伝えて、エイレスは良い人だと伝えた。村長もわかっていると言いながら「心配ないさ」と励ました。
エウも頷き「大丈夫です」と自分に言い聞かせているように言った。
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