第26話 主の炎は殺意の具現である
「またコイツを着るのか……」
衣装ケースの前で主が愕然と呟く。
目の前には現代日本人の感覚では随分とアレなデザインの礼服が堂々と鎮座している。
帝国の最高学府にして研究機関、サマーダム大学の学長ゴドウェイン・ゼマリノフはカトリエル女史の恩師だ。
そんな人物と対面しようというのだから、それなりの格式が要求される。
帝国式の礼服にレーベインベルグを合わせると――
「前に着た時も思ったけどコスプレ、だな」
鏡に映る姿に主があまりにも憮然としているものだから、「わん!」と一吠えして、お手の要領で主の足をペシペシと叩く。
「ん、ああ……そうだね。こっちじゃこれが礼儀で常識だからな。この際、自分の価値観なんてどうだって良い。何より、不貞腐れてちゃ、用立ててくれたカトリエルさんとロイド親方にも悪いもんな」
肯定の意味を込めて、尻尾を振ってもう一度「わん!」と吠える。
礼儀は大事だ。吾輩だって食事の前にはお手とお代わりをするし、鼻を鳴らして一礼して、いただきますとごちそうさまをする。
吾輩にこの概念を持ち込んだのは主なのだから、主の礼節が吾輩に劣るなんてことがあってはならないのだ。
「それにカトリエルさんからも、まだ礼服に着られているから日頃から着る習慣を付けて身体に馴染ませるようにって言われてるしね。相手は彼女の恩師だ。無様な姿を見せるわけにはいかないし、胡桃さんも頼むよ」
吾輩も頼む。つまり行儀よくしろ――なんて単純な話ではない。
行儀の悪いことをしていたら、今みたいにまた忠告してくれと言っているのだ。
吾輩が沈着冷静で理知的な天才犬だから頼りにするのは至極当然だが、大の大人の男が犬に頼むことではないな……これが日本なら主の常識を疑われているところだ。
人間性とか社会性を疑われても仕方が無いような人間だから今更かも知れないが。
それでも吾輩は、ご主人様に忠義深い柴犬で、頼られることに否はないから別に良いのだが。
さて、そうこうしている内に合流したカトリエル女史は、血のように濃い赤のロングスカートのワンピースに黒のケープに黒のブーツ、黒のカチューシャ、黒いフリルがついた黒いレースのリストバンド、黒黒黒黒黒黒、兎に角、黒の装飾品。
「綺麗ですね。まるでこれから舞踏会に出るお姫様みたいだ」
カトリエル女史の恰好も帝国における礼服なのだろう。
二人が向かい合って立っていると違和感なく調和しているのが柴犬でも分かった。そういう服飾文化なのだなと納得がいった。
つまるところ、彼女の恰好もまたコスプレチックなわけだが、主は鼻白むわけでもなく、口にした言葉は心からの正直な感想だった。いい加減な男め。
「白やピンクじゃ少し子供っぽいと思って背伸びをしてみたのだけれど……これなら貴方の隣に立ってもちゃんと釣り合いが取れそうね」
「釣り合い?」
何を言っているのだ、この才女は。思わず主と顔を見合わせる。
「若干19歳で一人前の錬金術師ってだけでも凄いのに、ソウブルー要塞の錬金術師組合の組長。つまりはソウブルー要塞で一番の、帝国全土を含めても五指に入る超一流の錬金術師の貴女が自分と釣り合いって……寧ろ、自分の方が色々と不足しているのんじゃ……」
主に至っては住所不定では無くなったものの、ほぼ無職みたいなものだ。
絶世の美女と言っても過言でない才媛と釣り合いが取れていないのは主の方だ。
「あなたは自分の価値をまるで理解していないのね」
カトリエル女史が深々と溜息を尽いた。
「あなたは邪神ガエルの復活を阻止した龍殺しで、先帝の無念を晴らさんとする忠義の士。更には復活した魔人との戦いを決意した勇士。それが世間での評価よ」
そうやって成し遂げたことを列挙されると、なんだか主が凄い人のようだ。
吾輩の主というだけで値千金であることは事実だとしても、本質的には化け物じみたフィジカルだけが取り柄の怠け者。それが吾輩の主だ。
「そんな大人の男に釣り合おうとわたしが努力をするのは当然でしょう? 何より、あなたはわたしの神殺しなのだから」
恥ずかし気もなく言ってしまえる彼女の姿は何処となく男前だ。
それに引き換え、吾輩の主は――気恥ずかしそうに曖昧な笑みを浮かべている。女に不慣れな思春期の子供じゃあるまいし。何か気の利いた気障ったらしいセリフの一つや二つ、勿体ぶらずに吐けば良いのに、何かを言おうとして何も言えず仕舞いだ。
「それじゃあ行きましょうか」
言いたいことを言った彼女は、何かを言いたげな主を放置して踵を返し、さっさと馬車に向かっていく。
クールビューティに見えなくもないが、流れる蜂蜜色の髪からかすかに見えた首筋が、ほんのり朱色に染まっているのを吾輩の鋭敏な動体視力が捉えた。カトリエル女史の肌は色素が薄いからよく目立つのだ。
スマートに言ってのけたように見せても、彼女の本質は対人経験の不足を起因とする幼稚性だ。服装同様、背伸びした言葉だったのだろう。
これなら主が上手いことじゃないにしても、何かを言えば、物凄く真っ赤になってお互いに意識せざるを得なくなっただろうに。
主は勿体ないことをしてしまったなと思いながら、二頭牽きの馬車に乗り込む。
「今回はエルベダ、トルトーネ、ムンセイス、三つの街を経由するんですよね。前は燃える馬に乗って一っ飛びだったから立ち寄りませんでしたけど」
燃える馬――地獄から召喚したカトリエル女史の愛馬。
像と同じくらいの大きさで毛先からは魔力光が真っ赤に燃え盛る炎のように輝きを放っている。炎のようにと言うか、炎にしか見えず、主も吾輩も恐る恐る乗ったものだ。
「あの時は、わたしの目的のためにもあなたを放っておくわけにはいかなかったのだけれど、あなたがどんな男なのか分からなかったから接触する時間を最低限にする為にも召喚するしかなかったのよ」
神を恐れぬ人間は彼女にとってこれ以上ない人材だが、妊娠がそのまま邪神の復活と自らの死を意味するのだから、男というだけで最大級の警戒対象でもある。
「貴女の事情を考えたら当然の対応ですよ。いや、事情が無くても初対面の男なんて警戒し過ぎるくらいで丁度いい」
「そうかも知れないわね。けれど、あなた相手にはもう必要ないでしょう? ソウブルー要塞からサマーダム大学まで
「自分もソウブルー要塞周辺以外の地理には明るくないので、色々と見て回れるのは嬉しいです」
それは吾輩も同じだ。お散歩のルートは多ければ多いほど良い。
新しい景色を見て歩くことで教養も磨かれるというものだ。
「しかし、大きな馬車なのに乗客は自分たちだけですか」
「当然よ。貸し切りにしているんだもの」
「貸し切り? それはまた剛毅な」
「あなたがいれば大丈夫なのだし、大げさなのは分かっているのだけれど、万が一があっては困るもの。男を近づけさせずに済むなら、それに越したことはないわ」
「少し浮かれ過ぎていましたね。確かに大袈裟なんてことはないか」
「習慣化しているのもあるわね。あなたがいるのだから過剰に警戒する必要が無いことも分かっているつもりなのだけれど」
「良いんじゃないですか。貴女が子供の頃の話もそうでしたが、助けてくれた誰かさんに任せようとする一方で、出来ることがないかって召喚術、神学、錬金術を修めたのでしょう? 人任せに出来ないのが貴女なんですよ。それだけ生きることに一生懸命って証拠ですよ」
「そう言われると少し恥ずかしいわね」
「恥ずかしいなんてことありませんよ。堂々と胸を張ってください。貴女は生きることに一生懸命だ。人の姿勢として一番尊くて、美しい姿だと自分はそう思いますよ」
生きることに一生懸命じゃない男が羨望の眼差しをしているから、その言葉は口説き文句では無く、噓偽りなく本心から出てきた言葉だ。
「あなたに肯定されるとなんだか安心ね」
主の真っ直ぐな視線と言葉にカトリエル女史が赤くなった顔を隠すように俯きながら言った。
「そりゃ肯定できることしかしていないからでしょう」
――と、カトリエル女史のことを全肯定していた主だったが……
「あ、篤い信頼は嬉しいのですが、流石に同室は……」
日没前に辿り着いた一番最初の中継地点、エルベダ。
牧歌的な街並みを軽く散策した後に陽気な地元住人たちで賑わう飯屋で食事と地酒を楽しんだ後の宿泊場でトラブルと言うには反吐が出る出来事が起きた。
カトリエル女史が――
「わたしを独りにしないと言ったのはあなたよね?」
「い、いや、しかしですね、これは流石に問題があるでしょう!?」
「そうかしら? わたしとしてはあなたと同室の方が安全だし、安心できるのだけれど」
といった具合で一歩も譲らない。
しかも、主も口ではダメだダメだと言いながらも鼻の下が伸びている。
もう観念すれば良いのに。面倒臭い。もう勝手にやってくれ。
「あなたは不埒なことは決してしない。そうよね?」
「そんなことは当たり前です!」
「なら問題ないわね。最初に言った通り二人一部屋で良いわ」
主が強い口調で断言すると同時に、彼女は即座に宿の女将に向き直って言葉を放った。
主が肩を落とし、そのまましゃがみ込んで吾輩の顔を覗き込む。
「胡桃さん頼む。無いとは思うけど、万が一俺が暴走して何か仕出かしそうになったら全力で止めてくれ。いっそ首狙って良いから」
そう言って、主は自らの首に指先を突き立てた。
主に主の暗殺を依頼されてしまった。吾輩は主の忠実な
そして――、
「やっぱり同室にして正解だったわね」
夜明け前、トルトーネ街に警報代わりの鐘が鳴り響き、カトリエル女史が得意げに言うが、宿の窓からは必死の形相で逃げる人々の姿が見えて、それどころではない。
ソウブルー要塞と違って人口が少ないことが幸いして、避難はドラゴンの襲撃と比べたらスムーズに行われているが――
「あの黒い靄のような塊は?」
「悪霊の類、かしらね。何か霊的な力を感じるのだけれど、わたしの知識にないモンスターね」
黒いモヤの中から獣の臭いがする。それに呻き声。何かに苦しんでいるようだ。
あのモヤが悪霊だとか霊的な存在であるとして、その中にいるのは命を持つ生物のように思える。
「衛兵団も苦戦しているようだし、レーベインベルグの試し切りをするには丁度良さそうだ。ちょっと行ってきます。胡桃さん、彼女を頼む」
婦女子を守るのは男子の本懐だ。頼まれるなら、こういう誇らしい気持ちになれる役目が良い。
無礼を諫めたり、色欲に負けて不埒な真似をしようとするのを殺す気で止めろなんて頼み事は情けなさで死にそうになる。
「いえ、わたしも一緒に行くわ」
「え?」
「あなた悪霊と戦ったことは?」
「ありませんが、衛兵団もああして立ち向かっているわけですし、彼らの見様見真似でやれば問題はないでしょう」
「わたしには悪霊の類を滅ぼした経験が何度もある。彼らの見様見真似よりもわたしの方が遥かに効率が良いし、何より被害が少なくなって済む。その方が後味も悪くならない。そうでしょう?」
「それは……」
言い争っている時間が勿体ない。主の手首を甘噛みして出撃を促す。
「そうだな、胡桃さん。要は街の人たちが悪霊に襲われないように、何より反撃を受けて彼女にかすり傷一つでも付けられる前に、光の速さで斬り殺して二度と現世に戻ってこれないよう地獄の底の底、一番奥底に叩き落してやれば良いだけだ」
それが一番早くて合理的だ。そして、一度こうと決めたら話も動きもずっと早くなるのが吾輩の主だ。部屋の窓を開けて身を乗り出す。
「ここ五階なのだけれど……」
「あのモンスター達まで少し遠いですからね。跳んだ方が早い。やっぱり、此処で待ってます? 抱っこして行っても良いですけど……」
「いえ、魔力で骨と肉、神経を補強すれば問題なく付いていけるから結構よ」
主の言い方が矜持に傷を付けたようで、反射的に言葉を返したカトリエル女史の目には決して薄くない不満の色に染まっていた。
「分かりました。先行します。行くぞ、胡桃さん」
主に抱きかかえられ、カトリエル女史と目線が合った。と言うかガン見されてる。
抱きかかえられた吾輩の姿に、反抗期真っただ中の少年少女のような反発をしてしまったことを後悔している匂いがする。
今頃、この人に抱かれていたのはわたしだったのに――と目が妬ましく光っている。
主の腕の中でもがいて、床に飛び降り、カトリエル女史に飛びつく。
「急行するからって抱き潰したりしないよ?」
違う、そうじゃない。いや、確かに潰されそうだという恐怖と不安は確かにある。
それ以上に反発したことを後悔するカトリエル女史の姿にいたたまれなくなった。
「えっと……」
「すいません。胡桃さんを頼みます。なんか自分だと不安みたいなので……」
「え、ええ……構わないわよ」
彼女は恐る恐るといった調子で吾輩を抱き上げる。
闘争や狩猟は好きだが、身内同士のケンカや不和は落ち着かなくなるから嫌いなのだ。
そういう時は愛想よく可愛さをアピールして険悪な空気を有耶無耶にして霧散させる。
これもアニマルセラピーの一種だ。
「じゃあ今度こそ……ッ!!」
主が窓から屋根に飛び移り、鋭く息を吐いて跳んだ。
屋根を力任せに踏み抜いて破壊するんじゃないかと不安になったが、意外にも主の疾走は静かなものだった。駆け出した一歩の歩幅は余りにも大きく、一歩で屋根の端から端を飛び、二歩で空を駆け、次の建物の屋根に着地する。
「出来の悪い冗談みたいに早いわね。あれで魔力で補強していないなんて嘘みたい。なんだか自信無くすわね」
その必要はない。女性のフィジカルとは言え、魔力で補強した肉体と同等以上の身体能力と強度、制御能力が素で備わっている主の体が普通じゃないだけだ。
「でも、あなたが彼を嫌がってわたしを選んだのも分かる気がするわ」
いや、違うぞ。吾輩は決して怖がってなどいない。
確かにカトリエル女史は速度だけなら主と同等であるものの、揺れずに安定していて、なんの衝撃も感じないし、なんなら周囲を不可視のクッションのような物に包まれて安心感が段違いだが、あくまでカトリエル女史のご機嫌取りのために――
「もう交戦に入るわ。まるで低空飛行する鳥ね」
気を取り直して主の方に目を向けると、既に地面に着地していた主が跳躍なのか飛翔なのか定かでない歩幅で黒いモヤの怪物に肉薄し、脇口へと駆け抜け、背後に回り込むと怪物の身体が上下に分断された。
「すれ違い様に横薙ぎの斬撃。上手いけどそれ以上に早いわね。抜刀の瞬間が見えなかった」
怪物と正面から対峙していた時点では確かに背中に納刀していた筈が、背後に回り込んだ時には主はレーベインベルグを両手で構えていた。
そして、柴犬の吾輩ですら思わず見とれてしまう程の剣閃の綺麗な軌跡を描いて地面ごと化け物を叩き斬った。
化け物と地面の断面に既視感を覚えた。ソウブルー要塞を襲撃したドラゴンの爪だ。隆起し、鋭く両断された地面を彷彿とさせる威力だ。ドラゴンの一撃に勝るとも劣らない斬撃で四等分に分断した主は、後方に飛び退き、一息で建物の屋根に飛び乗って周囲を見回している。
トルトーネ街に入り込んだ他の化け物を探しているのだろう。
「凄い切れ味ね。彼の身体能力も驚嘆と称賛に値する程素晴らしいけど、霊的な怪物ごと地面を斬るなんて相当な業物よ。ロイドは彼のことを余程気に入ったようね」
吾輩の主なのだから篤い信頼も当然だ――と言いたいところだが、ロイド親方が主のことを、そこまで気に入るというのは矢張り変な話だと改めて思わせられる。
カトリエル女史が主に懸想するのはまだ分かるのだ。彼女にとって主は唯一無二の存在で、しかも男と女のことだから。
ロイド親方にとって主は唯一無二の何かを持っている存在と言えるのだろうか?
「黒い靄の中でデカいのが蹲っていた!! 巨人だ!!」
主が大声で叫ぶ。吾輩たちだけでは無く、周囲を逃げている人たちや駆けつけてくる衛兵に向かって警告を発した。
呻き声の正体が分かった。黒いモヤの中に押し込められ苦悶の声を漏らしていた巨人たちは襲撃に現れたのでは無く、苦しみもがく内に人里になだれ込んできただけなのだろう。
それなら血の匂いもなく、被害の少なさにも頷ける。
「モンスター同士の縄張り争いにしては異質ね」
黒いモヤVS巨人にしては確かに変だ。あの黒いモヤが霊的な存在だとして容易く巨人を押し込めておきながら、それ以上は何もやっていないどころか、主に両者まとめて斬り捨てられている。
「わん!!」
異変を察知して一吠えして警告を発する。
「再生……早すぎる。蒼一郎さん!!」
吾輩の警告を理解したカトリエル女史が大声を発する。
四分割にした敵がまだ死んでいない事よりも、彼女がそんな大声を出せたことに主が驚愕を顔に浮かべるが、すぐ様気を取り直して屋根から飛び降りる。無理もない。吾輩も彼女の大声に驚いた程だ。
降下中の主が再生途中の黒いモヤ&巨人に斬撃の雨を降らせると同時に吾輩たちも戦いの場に到着した。
「靄が断面同士を繋いで巨人の再生を補強している……違うな。巨人の傷口から寄生しようとしているのか?」
主の見立て通りなら、この期に及んで巨人と黒いモヤの戦いは中断されることなく未だに続いているということになる。主を前にして呑気な奴等だと嘲笑したくなると同時に、両者の戦いが終わった時、その力の矛先が何処に向かうのかを考えると未知数の恐怖が沸き上がってきた。
「寄生型の亡霊は珍しくない。巨人が完全に取り込まれる前に魔力を刃に込めて斬りなさい」
「親方も刀身に魔力を込めたら込めた分だけ切れ味やら強度が増すって言ってたっけな」
化け物じみた身体能力同様に元から備わっていたのか、それとも帝国に召喚されて身についたのか、主から直接的な言及があったわけではないし、多寡さえも不明だが、主の身体には確かに魔力が宿っており、魔術兵装の起動ができることや狩った獲物の寄生虫処理に電撃の魔術を使っていることからも制御する能力があることも明らかだ。
しかし、魔術兵装の起動に必要な魔力量は極僅かで、電撃の魔術に至っては寄生虫処理用なのか戦闘で使っているところを一度も見たことがない。
魔力を攻撃的に使うのはこれが初めての筈だ。
「月並みですが――」
しかし、主は気負った様子も無く、レーベインベルグを一閃させる。
空を斬る鋭い音では無く、ガスバーナーに似た音と共に刀身が炎を纏った。
「お前たちは此処で殺すぞ、豚」
創世神話の時代、レーベインベルグから放たれた原初の火が世界の全てを焼き払ったとロイド親方は言っていた。同時に、主に引き渡した剣には、その機能が備わっていないとも。
だとすれば、あの炎は魔力によって具現化された主の殺意だ。
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