推理小説の世界に転生したけど第一犠牲者
時雨夜明石
第1話
ちょっと聞いて欲しいのですが、最近親友の様子がおかしいのです。授業中にいきなり
「よりにもよって推理小説の世界に転生かよ!」
と叫びだしたり、
「女子高生尊い!!」
と意味不明な言動をしたり。何か悩み事でもあるのでしょうか?
彼女は名家『
そんな彼女から、
「ちょっとワクドナルドいかねえか?」
と誘われたのです。どう返答してよいものか困りましたわ。そんなファーストフード店など一度も訪れたことはございませんし、先生方もなんとおっしゃるかわかりません。ですが私は、何か悩みがあるのなら、駒形さんの力になってあげたいと思ったのです。
ファーストフード店の一番奥のボックス席で、彼女は足を組みながらこういいました。
「なあ、
私は驚きましたわ。まず、駒形さんが私を苗字で呼んできたこと。いつもは『アイさん』と上品に呼んでくださいますのに。それから、推理小説と言う言葉にも驚きました。だって、人が傷ついたり、死んだりするお話のことでしょう?そんなもの、読んだことも触ったこともないのです。
私がその旨を申し上げますと、駒形さんは心底がっかりした表情で
「そうか……お前は記憶がないのか……」
と言いました。それから、続けてこういうのです。
「伊勢崎。お前は、2日後の修学旅行で殺される」
■
彼女の言葉に混乱しながらも、私は帰宅いたしました。彼女、きっと熱病か何かにうなされているのでしょう。帰り際、私は彼女にお医者様にかかることをおススメいたしておきました。
家に戻ると、使用人の作った夕食が並んでいました。正直、ワクドナルドバーガーでお腹はいっぱいだったのですが、そんな庶民のお店に行ったことを家族には伝えられません。食欲がないと言うことを伝えて、夕食はほんの少ししか頂きませんでした。
ダイニングに行くと、お母様とお父様が映画をご覧になっていました。丁度、海外の男優さんがバイクに乗っているシーンでしたわ。金属の塊を自在に乗りこなす殿方は、とても素敵です。
なんという名前のバイクなのでしょう?お恥ずかしながら私、バイクと言う乗り物には疎くて……。
……。
機種はハーレー、FLSTFファットボーイだ。クラッチ。ブレーキ。皮手袋の感触。バイクに乗る時は『飲み会で吐いたときのように』背中を丸めろと教えられた記憶が蘇る。
片足を付く。アスファルトの感触。ミラーに写る後続車。ヘルメット越しで紫外線が遮られた視界。
「そういや、最近バイク乗ってねえな」
そんな言葉が、口をついて出てきました。
「アイ、何か言ったかい?」
お父様が振り返って、私を不思議そうにごらんになりました。いや、誰だよこのオッサン。父親?は?この男が?
「アイ?」
私は……いや、俺は両手で顔を抑えた。柔らかなほっぺ。細い指。サラサラの髪。マジかよ。
「俺、女子高生に転生してる!?」
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