16話-1、vsオカルト研究員

 この前、香住かすみ達にプレゼントをする際に電話をしないで部屋まで行ったけど、やっぱりそれだと私の意に反してる気がするし、かなり物足りなさを感じちゃった。

 あの一件で、お互いにすごく嬉しい気持ちになった。けれど、逆に私の頭の中に、モヤモヤとした変な何かが生まれちゃったわっ。


 もちろん理由はわかってる。モヤモヤの正体は、電話をしないで部屋まで行って、ついでに驚かせちゃったからだ。


 もう止めようとは思ってたんだけど……。この変なモヤモヤを晴らす為には、電話をして人間を驚かせるのが一番よね。

 香住や清美きよみばかり驚かせてたから、普通にやるのはかなり久々だわっ。やっぱりにメリーさんの性があるせいか、不思議と胸がワクワクと躍ってきちゃう。

 さてと、ちゃっちゃと終わらせてモヤモヤを無くし、早く香住の部屋に遊びに行こっと。


 プルルルルルル……、プルルルルルル……、ガチャッ。


「誰だね? なぜこの番号を知っている」


「私、メリーさん。いま、公園にいるの」


「んっ? メリー、さん?」  


 ガチャッ……、ツーッ……、ツーッ……。


 電話に出た奴、困惑したような声を出していたわね。なかなかの好感触だわっ。

 よしよし。これは良い恐怖に怯えた表情が期待できそうだわっ。それじゃあ、今電話に出た奴の家に向かおっと。





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 電話に出た奴の家の前まで来たけど、本当にここに住んでるのかしら? どう見ても廃屋じゃないの。

 所々がボロボロで洋館チックな二階建てで、今にも崩れそう。屋根にカラスが二羽いて、カーカーってひっきりなしに鳴いてる。まるでお化け屋敷ね。

 それにこの辺りに来た途端、辺りが急に薄暗くなってきて、空気がひんやりと冷たくなってきた気がする。私以外の怪異やお化けが出てきそうで、なんだか怖いわね。帰ろうかしら?


 電話に出た奴は、私の電話で恐怖に震えているハズ。このまま放置するのも、ある意味一つの手よね。

 いつ来るんだろうという、終わりの無い恐怖を味わってるに違いない。

 ……だけど、さっきの奴は本当に怖がってるのかしら? 一応電話して確認してみよっと。


 プル、ガチャッ。


「私、メリーさん。いま、あなたの家の前にいるの」


「ほ、本物かい? 君は本物のメリーさんなのかいっ!? は、早く私がいる部屋まで―――」


 ガチャッ……、ツーッ……、ツーッ……。


 恐怖に震えるどころか、なんだかものすごく興奮してたわっ……。この洋館の薄気味悪い雰囲気よりも、こいつの方がヤバそうで怖いわね……。

 なんというか、私に興味を抱いてるような気がする。仲良くなれるかもしれない証だから、別にいいんだけども……。こいつの声や喋り方が、あまり好きになれない。やっぱり帰ろうかしら?

 ……でもここで帰ったら、頭のモヤモヤが晴れないままなのよね。本当に行くのがイヤだけども、様子見だけしてこようかしら。とりあえず家の中に入ろっと。


 門の取っ手に手をかけたけども、錆びついているのか私の力じゃビクともしない。仕方ない、すり抜けていこう。

  

 門をすり抜けて、改めて辺りを見渡してみる。それなりに広い中庭があるけど、手入れが行き届いていないのか荒廃してるわね。

 水が出てない崩れた噴水。真ん中辺りから折れてて、寂しそうに倒れてる枯れ木。ボロボロの洋館に続いてる石畳も、ガッタガタに隆起してる。家って言えるのかしらこれ?

 足を取られながら石畳を歩き、洋館の扉の前まで来たけど、ここもガタついてて開けられそうにないわね。何から何までめんどくさい所だわっ。






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 中に入ってみたけど、外の様子と比べると段違いに綺麗ね。床には一面、赤くてフワフワなカーペットが敷かれてて、それが中央階段の上まで続いてる。

 壁には点々と、金色の額縁に収まってる様々な……、なんかの絵ね。ラクガキみたい。

 部屋の左右に扉が三つずつあって、ここから見える二階にも扉が左右に四つずつある。とても広いわっ。


 天井から吊り下げられているのはシャンデリア、だったわよね。すごく大きくてオシャレだわっ。

 シャンデリアが発してる光がお互いに反射し合ってて、まるで宝石みたいにキラキラと輝いてる。

 思わず目を奪われちゃった。ずっと見てられそう、全然飽きが来ない。……そうだ、眺めてる場合じゃない、本来の目的を済ませないと。


 電話に出た奴がいる場所は、確か地下にある変な機械がいっぱいある部屋だったわよね。

 中央階段の横から下に行ける階段があるから、そこから地下の部屋に行こっと。

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