10話-2、超ファインプレー

「あの、あなたって本物の……、メリーさん、なんですか?」


「そうよ、とっても怖いメリーさんなんだから! もっと怖がりなさいよっ!」


 怒られてしまった……。外見は人間の少女にしか見えないけど、やっぱり本物なんだ。頬をプクッて膨らませて怒っているメリーさんも、また可愛い。

 ごめんなさい。怖がりなさいよって言われても、もう可愛いが頭の中いっぱいになっちゃって、怖がることが出来そうにないんです。


 メリーさんってば、毎日私の部屋に来ているけど、私と一緒で一人なんだろうか? もしそうなのであれば、仲良くなってみたいな。

 人間ではない都市伝説のたぐいの子と仲良くなりたいっていう願望も、どうかしていると思うけど、そんなの関係ないですよね。


「あの……、メリーさんはいつも一人でいるんですか?」


「一人よ、なんでかしら?」


 やっぱり一人なんだ。こんな幼いのに、寂しくないのかな? そういう感情がないんだろうか? もっと色々質問をしてみたい。

 だけど、相手の気持ちを考えないでグイグイ行っちゃうと、嫌われてしまうかもしれない。少しずつ少しずつ、ゆっくり聞いてみよう。


「わ、私も一人なんですよ。よ、よかったら……、私と、お友達に……、なってくれないかなー、なん、て……」


「おともだち? なによそれっ」


 しまった! これは質問じゃない、私の願望であり本音だ! なんで、なんでこんな事を口にしてしまったんだろう……。とりあえず説明をしなければ。


「あえっと! 仲良くお喋りしたりとか、美味しい物を一緒に食べたりする仲……、ですかね? す、すみません、上手く説明できないです……」


「ふ~ん……」


 ああ、終わった。完全に終わった……。これだから私には友達が出来ないんだ。たぶん、怖がらないと分かったら、メリーさんは私の元には来なくなるだろう。

 そうしたら、また一人の寂しい生活が始まっちゃうんだな……。しかし、ジト目で私を睨みつけてくるメリーさんも可愛い。


「……香住かすみと、その、おともだちって言うのになれば……、おいしいものが食べられるのかしら?」


「へっ? あっ……、は、はいっ! 食べられると、思いますよ」


「ほんとっ!? なにが食べられるのかしら?」


「え、ぇえっと! ……え~っと」


 勢いで言ってしまったものの、メリーさんの好物って一体なんだろう? ネットで調べても出てこないや……。今、部屋にある物は、カップラーメン、飴、おせんべい……。う~ん、ロクな物が無い!

 あとは、この前スーパーで何気なく買ったコンロで作るタイプのポップコーン、か。とりあえず、一つずつ出してみよう。まずはポップコーンからだ!


「ぽ、ポップコーン……、とか?」


「えっ、ポップコーンが食べられるのっ!?」


「へっ!? は、はいぃっ! た、食べられますよっ」


「ほんとっ? 食べたいわっ!」


「わ、分かりました! 今すぐ作りますね!」


 おお、おおっ、おおっ! メリーさんってポップコーンが好きなんだ、初めて知った! 買っておいてよかったー! ナイスだ私、超ファインプレーだよ。素晴らしいっ!

 普段であれば、ベッドに寝っ転がりながらおせんべいを食べているんだけど、気まぐれに感謝しなくては。……実は、ポップコーンって初めて作るんですよね。どうやって作るんだろう?

 説明をよく見て、完璧なポップコーンを作らないと。えっと、あけ口というシールを剥がし、コンロの炎から三cm離しつつ水平に振ると……。簡単だ! これなら私でも作れる。


 すぐさまシールを剥がし、コンロに火を付け、早速試してみる。そうすると、中で固まっていたバターがだんだん溶けてきて、ふんわりと良い匂いがしてきた。

 映画館とかで嗅ぐような、ワクワクしてくる匂いだ。お腹がすいてくる香ばしい匂いがしてきたから、そろそろかな?


「香住っ、なにをしてるのかしら?」


「ひゃっ!? び、ビックリしたぁ……」


「あっ、いま驚いたわねっ! やったわっ!」


 居間にいたハズのメリーさんが、いつの間にか足元にて、嬉々とした表情でバンザイしている。

 このアングルからメリーさんの顔を見るのは初めてだ。距離もすごく近い。私に対して警戒心を持っていないのかな? それだと、ちょっと嬉しいかもしれない。


「き、急に声を掛けられたのでビックリしちゃいました……。えと、ポップコーンを作っています」


「……ここからだと見えないわっ」


「たぶん、もう少ししたら出来ますよ。楽しみにしててくださいね」


「うんっ、わかったわっ!」


 とても良い笑顔で笑ってくれた! 私、この笑顔が大好きなんだよな。メリーさんの笑顔を見ると、私も自然に笑ってしまうんだ。……笑うのって何ヶ月ぶりだろう。もっとこの子と一緒に居たいな。

 おっ、ポップコーンがちょっとずつ弾け始めてきた。そろそろ完成するかな。待っててくださいね、メリーさん。

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