魔神ノ恋物語(ラブストーリー)

6様の下僕

第1章 岡山物語(オカヤマストーリア)

episode:0 「晴れの日」

俺達は突如現れた“腐心病患者”から逃げまくった。


炎天下の中多くの自衛隊員が俺のいる駅前の商店街に来てくれたが、兵器でも全く歯が立たない…それどころか足止め程度しか出来なかった。


8割破壊された店と、血の海に沈む住人。彼等と店を横目に俺らは走って地下シェルターを目指す。


「母さん、昇太連れて行くのは俺がするよ?」

「いいんだよ進太郎!ほらサッサと行きな!」

走りにくそうなパティシエの服着てるのに、母さんはタフな言葉を吐く。


俺は10歳の時からある武器が使える。“他人には見えない”武器が。

「ヤマタノオロチ」と名付けたそれを思い出し、俺は母さん達を守る為に戦い始めた。


次々と襲い掛かる“患者”をバッタバッタと倒しながら俺達3人は進み、やっとの思いで地下シェルターに辿り着く。


“母さん達を守れたんだ”と思って安心したのも束の間。入り口付近で俺らは患者達に囲まれた。


「おいおい…これは無理だ…」

「進太郎兄ちゃん…」

泣きながら俺の服を掴む昇太を見て、俺は優しく言う。


「母さんと一緒にシェルターに入るんだ!」

「え…進太郎兄ちゃんだけになっちゃうよ…」


心配する昇太を抱き締め、俺は励ます。

「俺は強いから大丈夫だ!何より8歳のお前と母さんが誰よりも好きだ!大丈夫だ、後で俺も入るから。」


昇太は泣き止み、側にいた母さんの元へ行く。

昇太抱っこした母さんが「死ぬなよ」と言い残す。


奴等を一掃した後、深手を負ったままシェルターの中へ入った。が、母さん達の姿が見当たらない…


沢山人がいる中頑張って探し、「まさか」と思っても探し続けた。夕方まで探し続けた俺は現実を受け入れた…


患者から昇太を守った母さんと、患者に殺された昇太の遺体を見て…


俺は只管ひたすら号泣し、声にもならない声を上げ、懺悔した…


そして俺は誓った。母さんも大事だったが、小さかった昇太の為にあいつの家族を守り続ける…と。


あれから1年経ち、17歳になっても昇太の家族を守り続けた。“あれ”の事を知るまでずっと。


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