第2話 この国の雨に

 人のため息が湿気となってこの国を覆う、それは恐ろしく永く続き空を埋め尽くし、太陽をを遮る、やがて雲に変わり雨になり地へふりそそぐ。


 人々を濡らす負の水は水溜りになり、池になり、湖へと広がる。


 ある日人々は気がつく、足元が水に浸かっていることに。


 歩きづらい。


 ある人は言った、「船をつくろう」

 ある人は言った、「泳げばいいじゃないか」

 ある人は言った。「海に流そう」


 その間も雨は永く永く降り続けていた、船をつくっている場合じゃなかった、泳ぐにはもう疲れていた、海との境界は、わからない。

 その状況に人々はまたため息をついた。


 人々は水のない山の上へ我先にと登っていった。

 雨はやまず水かさは増すばかり、山は人々で一杯にあふれていた。


 それでも人々は上へ上へと登っていった。人々は必死で気がつかなかった、


 山だと踏みしめていた土台が死体だということに。

 目の前の人を踏みつけ上っているということに。


 人々は思ったこのまま進み続ければいづれ雲をぬけ、太陽に手が届くのではないか?


 人々の中には立ち止まる者もいた、彼らは決まって下をみて死体に気がつきそして、少し悲しくなって涙を流した。涙は流れ落ち水かさは増えていく。

 彼らはもう二度と動こうとしなかった。


 それでも雨は降り続けて人々は上り続けた。


 とうとう頂上まで上りつめたとき、もうたった一人になっていた。


 死体の山の頂上で彼は一人雨がやむのを待ち続けた。雨は小降りになりやがて

 止み、雲の間から陽が漏れて、辺りを明るく照らし出した。


 すべてを照らした現実が彼に涙を流れさせた。


 増え続ける水かさが彼自身を飲み込むまで、涙は止まることはなかった。

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