吐息に色をつけようか。

はるまるーん

ただいま(理性)→おやすみ(欲望)?

帰り道、どこからか風に乗り、焼き魚が香ってきた。そういえばもう秋だな、

そう思いながら私は少し高くなった空を見て小走りをしてみたのだ。


 「ただいま」

 「おかえり」


聞き慣れた声。嗅ぎ慣れた匂い。見慣れた光景。私が鍵をがちゃん、と閉める。

君が駆けてくる。


 「ごめんね、今日も遅くなっちゃった」

 「そんなのいいよ、それよりぎゅーして」


全くの甘えたさんだ。しょうがないな、と君の要望通りにただいまのハグをした。

  

 「おやすみのちゅーは?」

 「眠たくないよ」

 「あ、やっぱり?」


瞬く間に交差する会話。もう慣れたものよ。

君はカラカラと笑った。実はそれ好きなの、言わないけれど。


それでも私たちは布団に潜り、脚を絡ませ、徐々に体中は熱を帯びていく。

光は部屋の隅っこのネオンだけ。

君の顔がどギツいピンクだ。

思わず笑ってしまったけれど、君はなぜだか分かっていないでしょう?


そうして私たちは、だんだんと、だんだんと、互いの深淵を覗いていく。

ただの行為のはずなのに、君とはやばいの、もうどうしようもないの。


不意に、君以外の人に一つになって溶けたいと言われたことを思い出した。

君は私の過去が嫌いだからって何も知らないふりするけれど、

ごめんね、私は覚えているよ。

君に私のすべてを聞かれないことだけを願っているよ。




    でも、君となら一つになって溶けていいと思った。ほんとよ。




二人の呼吸が共鳴していく。空間に響き渡る。空虚が二人で埋まっていく。

吐息に色がついていたら、私たちの部屋は二人の色に染まっていくのにな。

そんな馬鹿なことを考え、私たちは弾けていった。


このまま溶けてしまえ、と君以外の世界を恨みながら、

長い長いおやすみをするの。

閉じかける五感は、君を感じながら。

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吐息に色をつけようか。 はるまるーん @harumaroon

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