No.16 物語しりとり

「物語しりとりしようよ!」


「なんだ、それ?」


「しりとりで物語を作るの。」


「ほぉー、いいよ。」


「物語しりとり」


「リンリンリン、電車がホームに到着した。」


「助けなど来ない、ここにはもう。何も無い。」


「いつからだろうか、きっと君がこの世から消えたあの日から」


「ラーメンの屋台に入った時にはもう遅かったんだ。その時にはもう」


「迂闊だった僕のせいでもある。」


「る…瑠璃色に光るネックレスが」


「がらがらのシャッター商店街に響く事故の衝撃音とともにバラバラに弾けて宙に舞って」


「照らし出された目の前の景色はスローモーションに見えた。」


「確かに、彼女の言う通り、ラーメンは美味かったけれど。それのせいで彼女は死んだんだ」


「だって、あの時屋台に寄らずに帰ってれば車はもっとずっと後に通ったはず。」


「ずっと、一緒にいたかった。男の頭の中にはそればかりがよぎり、消えてはまたよぎる。」


「ルーレットが回った」


「旅を続けるか否かのルーレット」


「とんだ災難、彼女はルーレットで否を選ばざるおえなくなった」


「だんだんと列車の音が近づく」


「空虚な世界に、君のなき世界にもう用はない」


「1ミリも躊躇がないように男はそうこぼすと」


「TRAIN 迫り来る鉄カゴにその身を預けた。」


「おしまい!ねぇ、もう1回しよう」


「いいよ。結構面白かったから。」

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