第11話 継承
ごっ!!どどっ!!がががっ!!
・・・天空魔城を揺るがす程の凄まじい激突が続く。
一撃放ち、一撃打たれる度に・・・シーティアは少しずつ理解していった。
今なら、かつての勇者イブがこの天空に浮かぶ孤独な城で何を考えていたのかわかる。
・・・望んでいたのだ。こうして意志を継ぐ者が現れるのを。
全てを終わらせてくれる者が現れるのを。
世界を滅ばさんと己を乗っ取ろうとする闇の力と、それを止めたいという心の奥底の思い。相反する二つの意思をその身に宿し続けるのは・・・もう疲れた。
だが、かつて勇者だった者として・・・これだけは伝えねばならない。
「分かっているはずだ、勇者なんてものは所詮魔王あってのもの。俺を討ち滅ぼせばその瞬間お前は勇者ではいられなくなるんだぞ?・・・お前にはそれを受け入れる・・・それに耐えるだけの覚悟があるのか?」
十中八九、魔王である自分を倒せば今度はレルシミカが人々に忌み嫌われる存在になるだろう。
だからこそ、その覚悟を確かめねばならないのだ。この悲しみの連鎖を終わらせる為に。
そしてレルシミカは剣を降ろすと・・・ゆっくり答えた。
「・・・分からない。実際にその状況になってみなければ、『僕は魔王になんてならない!』なんて無責任な事は言い切れない。でももし仮に魔王になってしまったとしても、それならそれで構わないんだ。」
「・・・意味がわからないな。つまり、その時になれば自身が世界を滅ぼそうとでもいうのか?」
しかしレルシミカは首を振りそれを否定した。
「勿論、そんな事はしない。貴方の話を聞いて気付いたんだ・・・世界を救うのに勇者か魔王なんて関係ないってね。だからもし魔王になったとしても構わない。新たな勇者が僕を倒しに来るまで・・・それまで僕は魔王として世界を守り続ける・・・!」
「・・・!!」
それは考えてもみない答えだった。
この少年はつまり・・・己の行く末を知った上でそれに抗わず、全てを受け入れ世界を守り続けようと・・・魔王でありながら、勇者でもあり続けようというのだ。
「分かっているのか?自分が何を言っているのか・・・。半端じゃないぞ、魔王に襲い来る憎悪と絶望は・・・!」
シーティアは真剣な目で問い掛けた。
「きっとそれは想像もつかないんだろう。・・・でも大丈夫、僕はそれをやり遂げた人を知っているから。」
「・・・!!」
・・・そうだったのだ。
この勇者の言う、魔王として世界を守り続ける事・・・。
シーティアは図らずもそれを行ってきたのだ。己の中の憎しみを必死に抑え、魔物達の進軍を留め続ける事によって・・・。
これまでの迷い続け、絶望に囚われる日々は無駄では無かったのだ。
「・・・そうか、ならその片鱗だけでも味わってみるといい。お前にこれから襲い来るかもしれない、魔王の持つ己の心をも飲み込むほどの闇の力を・・・!!」
シーティアはその腕に全てのエネルギーを収束させた。
レルシミカもまた、最大の一撃を構える。
「行くぞ・・・うおおおおっ!!」
「やあああああっ!!」
二つの閃光は互いを飲み込まんばかりにぶつかり合った。
そして勇者の剣は・・・魔王へと叩き込まれた。
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