貧弱な俺が男装幼馴染と美少女弟子に守られる件

貫咲 賢希

第1話 少年と少女たちの日常


「はぁ、はぁ────あぁ、これじゃあ遅刻しそうだな」


 息切れしながら街中を走る少年、弦木つるぎタケルが愚痴を吐き捨てる。

 朝のHRまでにはまだ時間があるが、その余裕もすぐに無くなってしまうだろう。


「タケルくん、大丈夫?」

「タケルさまに心体共に御苦労を負わせるとは、失態です」


 道中、通りかかった人間に怪訝な視線を向けられ続けながら、タケルが我ながら情けないと台詞の内心落ち込んでいると、左右から優しい声がかけた。

 左側から可愛い声が、彼を心配する。

 右側から清涼な声が、現状を反省した。

 双方とも美声の持ち主。容姿も揃いに整った二人の少女たち。


 只、二人共、常人と比べて外見は特殊だった。


 片や雪の様に白い髪に白い肌。紅玉のように赤く円らな瞳を持つ顔は愛らしい。

 

 彼女の名前は園原そのはら天花あまか

 

 遠くから見れば老人、傍か見られても異国の人間にでも間違えられる場合もあるが、彼女は間違いなく日本人の女子高生である。

 もう片方は人形のような綺麗な顔立ちの女性でありながら、服装は男性の物であった。

 彼女はタケルと同じ服装、私立鳴川学園の黒い男子生徒用の制服を着用している。

 

 男装少女の名前は輝橋かがやばし生鐘うがね

 

 本来の性別であればもう天花同様、同じ学園の白い女子生徒用の制服を纏わなければならないのだが、とある事情で彼女は男子生徒として学園に通っていた。

 二人共タケルと同じ15歳だ。

 三人は同じ距離を走っているが、見るからに疲労困憊のタケルに比べ、彼女たちの体力はまだまだ余裕だ。

 だが、二人の顔色は、疲弊しているタケルよりも優れない。

 それは、隣で走る少年の身を彼女たちが按じているからだ。

 その事実にタケルの中で情け無さが倍増する。

 だが、己の自尊心は別にして彼女たちの声は心に温かく染みるので、素直に嬉しかった。


 逆に──。


『止まれ────っ!!』


 自分達の背中から追っている連中は何とむさ苦しいことか。

 相手は数十人。服装は全員袴状の道着。

 皆、刀や両手剣、斧や槍を所持。中には弓すら担いでいる武装した集団であった。

 別にタケルたちは彼等に何もしていない。

 タケルたちの三人が登校中、待ち構えていた彼等に出くわし、“ある”身勝手な要求を言い渡された。

 その要求はすぐに断った。

 しかし、相手は断固として退き下がらず、仕方なくタケルたちは遅刻もしたくもないので、彼を無視して逃げる様に去ろうとする。

 そんなタケルたちを彼等は憤慨しながら追走して、今の流れに至るのだ。

 

『待って─────っ! 勝負から逃げるとは、それでも武人かっ!!』


 彼等が揃って、何度目かの同じ台詞を叫ぶ。

 タケルはそれを聞いて、とても嫌気がさした。

 武人、武術者。武術を扱う人間。

 彼等は出逢いがしら、タケル達に勝負を挑んできたのである。それが身勝手な要求だ。

 こういった存在は、二一二八年──現代の世によく存在している。

 日本国内には次の様な法律があるのだ。


 規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要があるため、人民が武を保有する権利は、これを侵してはならない

 

 すなわち、個人は自衛のために武器の所持、保有を認められている法だ。

 タケル達が追っている彼等が白昼堂々と武器を所持している理由は、法によって認められているからである。

 このような法令は、先進国に殆どに存在していた。

 歴史上、多くの大国は自由の力の促進のため、民から戦う力を奪う事なく、それゆえ、多くの人間は戦う力を長い歴史で、力を今尚も研磨し続けている。

 鍛え、元来の身体能力を上昇させ、武器を鍛造するように効率の良い武力を編み出す。


 ゆえに、『武術ぶじゅつ』という力が飛躍的に発展するのは必然だった。


 『武術』。武器を持った古武術、あるいはそういった武器を持つ人間に対する拳法。

 衰退した数多くの神秘よりも以前に誕生し、人間サイズの機械人形が平然と街中で闊歩する今の時代まで練達され続けた人の業(わざ)。

 武術は拡大し、血脈は繋がり続け、従来よりも人間は際限なく高め続けられている。

 例を上げるならば、学校の授業で武術を取り組み、会社の朝礼で武術の訓練をするのは当たり前な場所もある。

 移動も人によっては車よりも速いと、塀などを駆け巡る通勤ラッシュなど珍しくもない。

 子供が大人を、男が女を、老人が成人を、年齢性別の壁を乗り越えて他者を淘汰することは、皆、武術を学んでいるので珍しくない。強いかは如何に身体能力が高いではなく、如何なる武を身に付けているかになる。

 現代の先進国で武術を嗜む人間は少なくなく、毎日どこかで己が技量を試すように、あるいは名誉を手に入れるため、試合、大会が行われていた。

 玄人と呼ばれる実力の武人たちは、その力を大衆に披露し、戦場の地に立つことをせずとも、多くの人間から敬意と名誉を送られるのだ。

 達人の中には個人で一つの軍隊を壊滅できるという。

 超人と至ったものたちは、奇跡のような現象を武術で引き起こすと噂されている。


 そして、今もなお、武は世界に広がり続けていた。


 武術が繁栄する世の中において、武人同士のやり取りは手合わせで決められる事は珍しくもない。

 武人が、他の武人に勝負を挑む事など、日常茶判事である。

 だが、タケルたちを追う彼等の行動は、褒められない非常識。試合の申し込みにも、節度や手順があるのだ。

 しかし、幾ら非常識であっても、相手が言う事を聞かなければ、危険は向こうから去ってくれない。

 タケルはいい加減観念し、両隣にいる少女たちの顔を一度眺めてから、走る勢いを殺し、その場に立ち止まった。


「タケルさま?」

「タケルくん?」


 突然立ち止ったタケルに驚いた生鐘と天花は、揃って共に走るのを止める。


「先に行っててくれ」


 タケルは少女たちにそう言い残し、自分達を追ってきた集団にタケルは歩み寄った。

 後ろでは不安げな顔でタケルを見つめる少女たち。

 自分の言葉に従わなかったのは半ば予想通りだが、タケルはそのまま同じように停止した集団に向かって歩み寄り、呆れたような溜息を吐き捨てる。


「はぁ、はぁ──アンタたち、いい加減にしろよ」

「なに?」


 疲労の顔を見せながら言ったタケルの言葉に、集団の一人が眉を寄せた。残った面々も、険しい形相を作りながらタケルを睨みつける。

 厳しい視線が自分に集中するが、タケルはそれに全く怖じ気ることもなく彼等に言う。


「武人が勝負を挑むのはいい。だが、場所と時間を考えろ。あと無理強いが一番悪いな。

 両者合意ではない試合は法で認められてない、のは一般常識だろうが」

 

 タケルの言葉に何人か言葉を詰まらせる。

 この国は武術を推奨し、武器の携帯すら認められているが、無差別な乱闘が認められているわけではない。

 街中で暴れれば当然、警察、あるいは自衛隊が駆けつけて暴動した人間を鎮圧する。

 そして、タケルが言ったように、武人が勝負を挑むこと自体は法に触れていないが、今の様な人が良く通る往来では禁止されており、一方的な戦闘の要求も無論禁止されていた。

 気づけば、遠巻きで彼等の様子を眺めていた通行人たちからも非難の視線が集団に向けられていた。

 益々、ばつの悪そうな顔を浮かべる彼等に対して、タケルは仕方なさそうに話しかける。


「こっちはこのまま警察を呼んでもいいんだぞ。分かったら、黙って──」

「五月蠅い、腰抜けっ!!」


 タケルが言い終わる前に、集団の一人が叫んだ。

 彼は憤慨を顔に表しながら、タケルにドシドシと近づく。


「武人ならばどんな勝負も受けるべきだろ! そもそも──」


 タケルよりも頭一つ分身長が高い、丸刈りの男。

 彼は見下した瞳をタケルに向けた。


「我々貴様などに用などない! 我々は後ろにいる二人に用があるのだ!」


 そう言いながら、男は目の前にいるタケルに視線を外し、彼の後ろに控えている二人の少女を指さす。


「音に訊く、《白阿修羅しろあしゅら》、園原天花っ! ここ最近名を伸ばす貴様の護衛、輝橋生鐘っ!

 若きながら素晴らしき実力の武人と、我々は手合わせを所望する!」


 威勢の良い声を張り上げて男は宣言した。

 それを間近で聞いたタケルは、苛立ち気に鼻を鳴らす。


「二人は嫌だと言ってんだろ。いいから、失せろ」

「何だと? 失せるのは、貴様だ、弦木タケルっ!」


 忌々しげにタケルの睨みながら、男は侮蔑の笑みを浮かべる。


「武芸に置いても名高い弦木家の本家にして、あの方に最も近しい人間でありながら、貴様には武人としての欠片すら備わっていない!」

「…………」


 男が叫んだ要因は、現状自分達が置かれた空気の悪さに対する、只の八つ当たりだった。

 しかし、タケルが黙って聞き受けていることをいいことに彼は増長し、更なる不満をタケルに放つ。


「第一、あれくらい走ったくらいでへこたれるような情けない男が、我々に意見するのが甚だしい! そうそうに失せろ!」

「そうだ、失せろ! 金持ちだけの、自分は無力な餓鬼が!」

「脆弱な小僧め! 消えろ! 邪魔だ!」


 彼の勢いに飲まれたか、後ろに控えていた彼の仲間も次々とタケルを貶し出す。

 男たちの言葉をタケルは何も言い返さず聞いた。

 言い返せるわけがない。何故ならそれらの言葉は事実だからだ。

 タケルは彼等の罵詈雑言を粗方聞いた後で、再び口を開いた。


「で、言いたいことは言い切ったか?」

「…………なに?」

「俺を馬鹿にするのは自由だが、武人なら多少は礼節を弁えたらどうだ。程度が知れるぞ?」

「…………っ」

 

 そこで、男が切れる。

 ある程度、暴言を浴びせれば簡単に退き下がると思った子供相手に、上から目線で諭される。自尊心が高い男にとって、それは許し難い屈辱だった。

 

「貴様のような、只、守られるだけの、名門の面汚しに!」


 男は伸ばした手で刀の柄を掴んで、抜刀。

 遠巻きに眺めていた傍観者たちがどよめきだすが、刀を抜いた男の仲間たちは、後方で控えたまま、その蛮行を止める気配を見せない。

 彼等も同じ気持ちだったからだ。皆、家の影に隠れて、偉そうに語る子供の泣きっ面を今か今かと待ち望んでいる。


「戦いの忌避する弱者に! 武を何も知らぬ愚か者如きに!」


 男は、そのまま刀を高らかに上げて、勢いよくタケルに刀を振り落とす。

 

「武を語る資格など、ない!」


 が、刀を振り落としきる前に




「あばぎゃあっ!?」




 男は吹き飛んだ。


 彼等の仲間は、突然の事態に唖然とする。

 近くにいたタケルは、何とも言えない顔で自分の両脇から前に現われた二人の少女を見つめていた。

 少女たち、生鐘は両手にそれぞれ同じ作りの刀を握り、天花は全ての色が白い刀を握り締め、それぞれ片手で刀を宙に突き出している。

 彼女たちは、己が武器を抜刀して、瞬時にタケルと男の間まで移動し、そのまま男を刀で突き飛ばしたのである。


「ふ、不意打ち? そんな、不意打ちで斬るなど、それでも武人か!?」


 倒れた男を見て、ようやく彼等の仲間が絞りだしたように声を上げるが、それを聞いた生鐘は不思議そうに微笑む。

 それを見た男の仲間、背筋をゾクッと凍らせる。

 生鐘が浮かべた笑みは、氷のような寒気を感じさせる冷笑だった。


「不意打ち? 随分と可笑しいことを言いますね。主を危害が及びそうになったので、守りに出たのは従者として当然でしょう?」

「うっ…………」

「ああ、命に別状はありませんのであしからず、ちゃんと《不殺外装》は付けてますので」

 

 生鐘が言った、《不殺外装ふさつがいそう》。

 それは、武器の携帯が許されている代わりに、取り付けが義務付けされている一種の安全装置だ。

 刀剣や槍には刃などに取り付けてられており、生鐘と天花の刀であれば、刀身を透明な特殊な材質で作られた外装で覆い、殺傷を防いでいる。

 実際、彼女たちに突かれて吹き飛ばされた男は、気絶してはいるもの、穿たれた場所から刺傷は見当たらなかった。

 この《不殺外装》は、有事の際以外で認められていない。基本的に武人の公的勝負では、それを全員が装備しているので殺人沙汰になる可能性は極めて低いのだった。

 だが、人を死なないだけ処置なので、その他重傷は免れない。

 気絶している男の刀にも《不殺外装》は施されていたが、腕のある武人が人間の脳天に刀を振り下ろせば、例え《不殺外装》を取り付けてあっても限界はある。

 あのまま彼女たちが止めに入らず、男がタケルに刀を振り落としたならば、普通であれば一大事になっていても不思議ではないのだ。


「友達が、馬鹿にされたら、怒るのは当然だよ」


 冷たい声で言ったのは、天花だった。

 普段の彼女は朗らかだが、今は凍りついたように無表情で男たちを見ている。

 だが、次の僅かな間だけ、その凍結が溶けたように微笑みを浮かべた。


「タケルくんは、純粋で、真っ直ぐで、いっぱい、いっぱい良い所があるの」


 そして、再び顔を無表情に凍らせて、天花は男たちを睨む。


「だから、何も知らない貴方たちに、何一つ、タケルくんのことを言ってほしくない」

「くっ…………!?」

「申し訳ありません、タケルさま。少々、お待ちを。腹が立ったので」

「ごめんね、タケルくん。少しだけ、待ってくれる? 我慢できない」


 二人共、断りを入れた後、彼女たちは前に出た。

 最早止める事は叶わぬと悟ったタケルは、溜息を吐いた後、彼女たちの背中に向かって声をかける。


「気をつけろよ」

『はいっ!』


 何処までも届きそうな声で返事をして、彼女は刀を構え直す。


「御望み通り、お相手してあげますよ」

「その後は、全員タケルくんに謝ってもらう」

「っ…………、全員でかかれ!」


 彼女たちの威勢に怖じ気ついた誰かが、思わず叫んだ。

 だが、彼等はそれに戸惑うことなく、揃って武器を抜き放ち、二人に猛撃を仕掛ける。

 生鐘と天花に対して、彼等の総人数は二十一人、十倍以上の人数差で押し流すように彼は彼女たちに向かった。

 何も知らない人間が見れば、か弱い少女たちが集団に嬲られるのを想像する。


 だが、杞憂なのだ。


 武人の集団たちは、彼女たちが有名な実力者だと知っており、腕試しで勝負を挑んできたのである。

 すなわち、多数の挑戦者を迎え討つ実力が、彼女たちにはあった。

 人数の差は彼等にあっても、戦力の差は彼女たちにある。

 そして、文字通り、次の瞬間には、四方八方に男たちが吹き飛ばされていた。


 鎧袖一触がいしゅういっしょく


 空中に気絶した男たちが舞う中、二人の少女が刀を振るい舞い踊る。

 生鐘は動きを読んでいるのか先制を常に取りながら、相手を翻弄した。

 天花はより単純。ひたすらに剣を振るう。時には相手の武器ごとを両断し、斬り伏せる。

 彼等は多勢で彼女たちに挑んだ。最初は交代での一対一の勝負のつもりだったが、やる気になった彼女たちを見て、恥であろうとも全員で挑まなければ危険と悟ったのだ。

 だが、彼女たちは多勢でも後れを取らない。

 二人共、並の武人に比べれば、一騎当千の強者なのである。

 徒党を組んで挑めば勝機はあると彼等は考えたのだろうが、その程度の力量が更に十倍、もう十倍集まったところで、彼女たちの敵ではない。


「はぁ……」


 その苛烈な光景を誰よりも近くで見ているタケルは、おもむろに歎息した。

 もはや手のつけられない状況になっているので、彼は諦めて終わるのを眺めながら待つ。

 各々好き勝手に武器を振り回しているが、全員、殺傷を防ぐ《不殺外装》人死には出ないだろう。

 天花と生鐘は頭にきているので、やり過ぎる可能性はあるが、殺すまではしない、はずである……。

 それでも挑戦者たちである集団が病院行きなのは確定であるが、それはそれで自業自得なので仕方のないことであろう。

 しかし、それとは別のところでタケルはその場の居心地の悪さに顔を顰める。

 知人の女の子達が戦っている姿を、男が何もせず見守っているだけの状況。

 これには、先程以上に情けない感情が芽生えた。


「まぁ、俺が手伝っても動けるのはもう一分ぐらいだし、ここは二人に任せるか……」


 タケルも剣を嗜んではいる。

 だが、彼女たちのように満足に戦えるとは言えなかった。

 彼は武家の名門出身ではあるが、人並み以下の体力しか持ち合わせていないのだ。

 自他共に認める貧弱体質であり、周りがそれを揶揄することはしばしば。

 しかし、それを彼の目の前で馬鹿にした場合、当のタケルよりも先に鬱憤を溜める人間が近くにいる。

 それは、彼が最近抱える悩みの一つだったりする。もっとも、同時に嬉しかったりもするのだが、それも彼の秘密だ。


「……しかし、奇妙なモノだな」


「くっ!?」


 自分達の劣勢に、天花と生鐘と戦っていた集団の一人が唸った。


「このままでは、幾ら強くとも女子供に我々が負けてしまう。ならば、恥の上塗りだろうとも」


 そう言った男は、何故か戦いに参加していない、タケルに目を向けて、生鐘たちに悟られないように注意し、彼に接近した。


「貴様を捕え、奴らの自由を奪ってくれる!!」


 人質という真剣勝負を望んだ者とは思えぬ蛮行に男は走った。


「…………」


 男が自分に向かって来るのに対して、タケルは無言のまま彼女たちの戦い見守っていた。

 そして、男とのタケルの距離が、ほぼ無くなりかけたその時だ。


「!」


 不思議なことが起こった。

 何故かタケルに襲い掛かった男が、一人でに気絶したのである。

 その様子に気づいていた者たちは、夢でも見ているのかと如く、顔色を変える。

 もう少し知覚に優れた者が目撃すれば、きっと倒れた男の後頭部に『何かしら』の衝撃が発生した様子に我を疑っただろう。


「……しかし、奇妙なモノだな」


 そして、当のタケルとは言うと、自分に近くで倒れた男など目にも止めず、少女たちの戦いを観戦したままだった。


 二人の可憐な少女たちが、連携して集団を駆逐していく。

 意気投合しながら戦う生鐘と天花を、タケルは感慨に見つめた。

 タケルは彼女たちのどちらとも長い付き合いになるのだが、天花と生鐘の二人が出会ったのはついこの間のことである。

 輝橋生鐘と園原天花という二人の少女。

 現在の二人は、普段二人だけでも楽しげに会話もするし、所々趣味、、、、が合う。

 戦闘も見れば解るとおり、息が合っている。


 しかし、彼女たちは『争う関係』でもあるのだ。


 タケルは最初の頃、二人がここまで仲良くなるとは思ってなかった。

 実際、彼女たちは出遭った当初、かなり互いを警戒していたのである。

 獅子奮迅で戦闘しながらも可憐を損なわない少女たちを眺めながら、タケルは三人が揃った日の出来事を思い返していた。

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