異世界ヲ救ウモノ

早崎佑

第1話 霧島幸誠という生涯

 両親は、共に俺を救おうとして死んだ。


 父は、溺れた俺を助けるために川に飛び込み、母は、暴走するトラックに轢かれそうになった俺を突き飛ばし、共に還らぬ人となった。

 その日から俺は、誰かを救うために生きようと心に決めた。

 俺の命のために、二人の人間が命を落としたのだから、それ以上人の命を救わなければ釣り合いがとれない。

 消防士か、救命救急士か、医師か、警察官か……なんでもよかった。

 人の命を救える仕事なら、なんでもいい。


 そして、俺は死んだ。


 街中のマンションで起きた火災で、逃げ遅れた子どもの兄弟を救出しようとして、死んだ。

 確か、幼い弟を救出して、兄の方をマンションの外に逃がそうとした所までは覚えている。あの子は、無事に逃げられたのだろうか。きっと、逃げられたはずだ。

 そう思っておかなければ、この世に未練が残ってしまう。

 結局俺は、俺を含む三人の命を犠牲にしながら、たった二人の命しか救うことができなかった。


 もっと、救えたはずなのに。

 そんなことを薄れゆく意識の中、ぼんやりと考えながら、俺、霧島幸誠は18年の生涯を終えたのだった。


 あぁ、もし生まれ変われるなら、もっと多くの人々を救えますように。

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