魔法少女に気を付けて!
黒イ卵
ウワサ
ねぇ……知ってる?
魔法少女のウワサ。
また出たんだって。今度は隣の街の商店街。
深夜二時。魔法少女のコスプレをした女の子が突然出てきて、魔法の呪文を言うの。
それが……呪いの言葉なんだって。
それを聞いた人は、
---ベルの音が鳴り、話を途中で止める---
あっ、もう終わっちゃった。
そしたら、またね、バイバーイ。
---学校帰りの少女A。先ほど話をしていたクラスメイトは塾があり、先に帰宅。1人で下校中である---
最近のクラスメイトは怖い話やウワサ話にハマっている。
本当なのかウソなのか、話始めると止まらない。
深夜二時に隣街の商店街まで行くような生徒はいない。
魔法少女のコスプレも、ハロウィンの時期ならいるだろうが、今はその季節ではない。
以上から、彼女の創作である可能性は高い。
だが……。呪いの言葉が引っかかる。
クラスメイトは、呪いの話は嫌うのだ。
夜、寝る前。なんとなく寝付けずにいると、LINKがきた。
---LINKとは“ツナガル、ツナゲル、リンクスル”で有名なトークアプリーーー
ウワサ好きのクラスメイトからだ。
<<<今から出てこれない?>>>
<<<なんで?>>>
<<<隣街に、今夜、魔法少女が来るの>>>
<<<二時に隣街に行くの?>>>
<<<お願い、出てこれないかな?>>>
<<<……今日だけだよ>>>
---いつもと様子の違うクラスメイトを案じ、承諾する少女A---
---午前二時、隣街の商店街---
シャッターの下りた商店街には、電灯の明かりのみで、人っ子一人いない。
何もないじゃない。そう思ったその時。
あれ……と、クラスメイトのつぶやき。
ーーー突如、魔法少女が現れるーーー
煌々と虹色に光る髪をツインテールにまとめ上げ、銀色のブーツ、銀色のミニスカートに紺のジャケット、いくつか星の形のバッジを留めている。片手には魔法のステッキを手にしている。
なにあれ、光ってる。
髪に電気が点いてるの?
気付いた魔法少女が振り向き、こちらにやって来る。
ーーー魔法少女は先端がハートになっているステッキを振り上げ呪文を唱えるーーー
『ハートいっぱいデテコーイ★
妖精さんに飛んで行けー☆
くるりんくるりんららららん♫』
くるりと回りながら、ステッキをこちらに向けた。
コスプレ好きの、変な人か。
刺激しないうちに逃げよう。
クラスメイトと目と目で合図し、走りだそうとした途端。
すううっと血の気が引いて、座り込む。
魔法少女の前には、どくどくと脈打つ赤いもの。
宙に2つ浮かぶそれらは、それぞれが規則的に収縮し、白い電灯の下に照らされている。
ーーー電灯はかちっかちっと音がして明滅を繰り返すーーー
呪いの言葉を唱えると、心臓が捧げられるんだって。
なにそれ、何かのパクリ?
数分前には、そんな会話をしていたのに……。
抜き取られた2つの心臓が、ひときわ色鮮やかに輝き、赤く燃えた。
ーーー『
☆★☆
---魔法少女の画面を見つめる少女B---
「あ~あ、このゲーム、この街からなかなか移動できないな~」
あたしはレベルを確認する。経験値は溜まり、確実にレベルは上がっているのだ。
なのに、次の街へ進まない。
「う~ん、ハートの数が足りないのかな?」
あたしは魔法少女になって、ゲームの夜の街をうろうろして、ちょっとしたクエストを解決しながらレベルを上げる。今回のクエストは、【ハートをいっぱい集めること】なのだ。
「ハートを集めて、妖精さんに差し出してるんだけど……」
集めたハートは、赤く光って妖精さんのもとへ向かっていく。幻想的な光景の映像が出て、何回見ても楽しい。
「もしかして、街の人全員からハートをもらわないといけないパターン……?」
攻略に時間がかかるなあ。何かヒントなかったっけ。
もう一度、妖精さんのもとに向かう。
「ハートをいっぱいありがとう~☆彡もっともっと、ハートがほしいな☆彡」
ハートをあげたからご機嫌だ。でも、まだまだハートがいるみたい。
「ハートたくさんで、すっごくいいものを呼び出せるからね☆彡」
そうか!集めたハートで、何か召喚するんだ!さすが妖精さん!!
「三日後の満月の夜までにたのむよ☆彡」
うんうん、三日後までね!もっとがんばるね!
あたしは嬉しくなって、魔法少女をくるりと回らせた。虹色の髪が軌跡を描く。
セーブして、明日またやろう。
セーブする直前、画面の妖精さんが、ニヤリと笑ったように見えたのは、気のせいかな?
ーーー
魔法少女に気を付けて! 黒イ卵 @kuroitamago
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