第五章 異国料理専門店 プラシット
序 「サクうま、がっつり! 初めてのカツカレー!(5)」
(承前)
「わぁ……! 何これ……! すごく美味しいです!」
アリスは感動の余り、恍惚の表情で目を輝かせていた。
「でしょー! これ食べた事ないって、もうホンッットに人生損してるから!」
正面の席に座っている
「本当に食べた事ない人なんていたんだね……。ちょっとびっくりかも」
アリスの隣では、かなでが驚いた様子でその姿を眺めていた。
「衣をさくっと噛んだ後の、分厚いけどやわらか~いお肉が、シンプルな味付けだからこそ、このとろりとしたカレーにぴったりですね! カレーと一緒に食べるご飯も、甘みがやさしく口の中に広がって……うーん、最高ですぅ……!」
「ふふ、そんなに喜んでくれるなら、誘って良かった!」
目尻を
「それじゃあ、私も……!」
かなでも目を輝かせながら、目の前のお皿にスプーンを入れる。
器用にカレーライスの上に鎮座するカツレツをスプーンで切り分けるかなで。そして彼女は、カレーとライスを適量
かなでは、それを顔の前にまで持ち上げ、もう我慢できないといった様子であんぐりと口を大きく開き、ぱくりと咥え込む。
「おいひいぃ~~~~!」
もぐもぐと
彼女はこれ以上ない程に幸せそうな笑顔を浮かべ、カツカレーを味わっていた。
「さっくりとした衣の後に、豚さんの甘くて芳醇な香りと、カレーのスパイスが鼻にまで上がってきて……しあわせぇ~……」
かなでは一口、また一口とカレーをぱくぱく食べ続ける。
その様子を見ていた翔子とアリスも、汗を流しながら目の前のご馳走を競うように口に運んでいた。
「あれ! もう食べ終わっちゃった……」
翔子が、驚いたように呟く。
気付けば彼女たちのお皿は、先程までこんもりと盛られていたカレーが、きれいさっぱりなくなっていた。
「カツカレーは、いつの間にか夢中で食べちゃうよねー……。美味しいんだけど、すぐなくなっちゃうのが残念……!」
かなではしょんぼりと、もう何も残っていない目の前のお皿を眺めていた。
「だけど、もうお腹はいっぱいです! 食べてる間も何だか幸せでしたけど、この満腹感も感じた事のない幸せですね……!」
アリスが、満足そうに2人へ話し掛ける。かなでと翔子は顔を見合わせ、優しくアリスに微笑みかけた。
「うーん、でも私はもう少しだなあ。……すみませーん、ビーフカレーを1つお願いしまーす!」
かなでが店員に、次の注文をする。
「えぇ! まだ食べるんですか!」
「うーん、かなでは結構食べるんだよね……。私はもう無理……」
「わ、私もです……」
苦笑いで呟く翔子と、困惑したように小さくなるアリス。
その後、かなでがビーフカレーもぺろりと平らげると、3人は店を後にした。
***
「アリスちゃん、どうだった? カツカレー!」
西の空がオレンジ色に染まる帰り道、翔子がアリスへ尋ねる。
「とっても素敵でした! あんなお料理があったなんて……私、感動です!」
「ふふ、そう言ってもらえたら、私たちも嬉しいよ!」
初めて食べたカツカレーの味を思い出し、またキラキラと目を輝かせるアリス。
かなでは、柔らかい笑顔で彼女を見つめていた。
「それじゃあ、また一緒にカレー食べに行こうよ! これからは3人で!」
「え! 良いんですか! ぜ、是非お願いします!」
「もちろん!」
翔子の誘いに、アリスは興奮した様子で答える。
「よーし! それじゃあ、アリスちゃんも『カレ
「か、『カレ友』……?」
高らかに宣言する翔子に、困惑した様子のアリス。
かなでが、そんな翔子の言葉を補足する。
「えーっと、『カレ友』っていうのはね、なんだったかな……。『カレーを愛するお友達の……』?」
「『カレーを愛する美少女JK(自称)達によるカレー友達同盟(仮)』!」
翔子は、曖昧だったかなでの説明を訂正する。
「そのー、とにかく。また……私たちとカレーを食べに行こうね、アリスちゃん!」
夕日の中、微笑むかなで。
「はい! よろしくお願いします!」
アリスの声が、夕方の街に木霊する。
――夕日の沈む中、かなで達3人は幸せそうに笑いながら帰って行った。
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