騎士物語
ぴょんすけ
第1話
ずっと泣いていた。
来る日も来る日も。
どうして泣いているんだっけ?
その理由も忘れてしまった。
ただ、胸に押し寄せる悲しみに耐えることができずに涙を流し続ける。
その時、何かが割れる音がした。
そして、少女のいる空間に光が差す。
少女は自らのいた空間が暗闇に閉ざされていたことをその時、始めて知った。
少女は涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げる。今までに経験したことがないほどの刺激を瞼に感じ、目を細める。
何が起こったのだろう。と、考える間もなく一人の青年が少女の前に立っていた。
そして、彼は少女よりも一回り大きな手を差し伸べる。
彼は無言だった。
しかし、彼は頬を赤く染め、視線も少女とは合わせられずにうつむいたままだった。
まるで、少年が好きな女の子に告白をするかのように。
少女はそんな彼の様子を見て微笑み、自らの右手を彼に差し出した。
彼と共に少女は歩き出した。
こんな感覚は久しぶりだ。
右手から彼のぬくもりを感じ、氷きった心が溶けていく。
この先私たちはどこに行くのだろう。一抹の不安が少女の心に押し寄せる。
しかし、彼と一緒ならどこへいってもいい。
根拠は一切ない。
彼と一緒にいること。
それが今の私にとって最大の幸せであるように感じるのだ。
私は彼の手を強く握った。
もう絶対にこの手を放さない。
心でそう呟きながら。
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