大地になるのに

冷凍氷菓

大地

 雲の隙間から太陽の日差しはさしていたが、雲は細かい雨を降らした。雨は太陽の日差しにより宝石のようにキラキラと輝いている。私は奇跡をこの目で見たのだと直感した。美しいその景色は天の楽園のようだった。

 私は念願だった。人気の無い山の奥にある草原の中に家を持つことができた。家を持つにはまだ早いと言われてしまうかも知れないが私は何よりこのことを優先にした。

 仕事も辞めた。自給自足でどこまでできるかはわからないが、多分問題なく生活できるだろうと思う。自然の中にずっといることができると思うと心が踊るようだ。

 今日のように晴れた日には森の中を散策して、木々に触れたり、めいいっぱい空気を吸ったりする。夢のような生活が始まった。私は人間であって人間ではなく。人々の束縛から解放された動物であった。私を縛ることなど誰にもできない。私は永遠にここにいるのだ。死ぬときもここにいる。私の肉体が死んで、徐々に腐敗し大地のエネルギーになる。それを想像するだけで私は興奮するし、私のようにあの社会が窮屈で苦しいならそうするべきだと思う。あの社会に入れば死さえも私のものでは無いような気がする。誰かのもの。死は私の宝。誰にも渡したくは無い。

 人がいないことは寂しいこととか。私はいつも孤独を感じていた。常に孤独であった。私にも友達はいた。しかし、常に孤独の感覚があった。なぜだろう、私はそこで気がついた。私が求めているのは人ではないのだと。

 木々に触れたり動物に触れたたり、空気にふれたり、光に触れることに喜びを感じた。これなのだと私は思った。帰る場所に帰る。人はそうする方が幸せなのだ。

 人は皆、同じ存在はない。似ていても、違うものなのだ。その人その人によって帰るべき場所は違う。ある人にとっては家族の待つ家かも知れないし、ある人にとっては職場かも知れない。それが私は自然の中だったというだけの話だ。

 誰にも束縛なんてされない。そう思いなが私は鼻で笑った。口角は上がりっぱなしである。楽しいのだ。嬉しいのだ。誰にも私の邪魔はできない。

 私はここに家を持ってから、生きていることの喜びを感じた。私は人ではいたくない。私は人ではない。人では無いのだ。

 

 喜び、合わせて自然に流れて川に雲を見つめては飛んで見せる。私の影に誰も振り返らない。誰も答えのわからないまま死んでいく。私は大地になるのに

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大地になるのに 冷凍氷菓 @kuran_otori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る