後衛
「コジョウ・・・・・」
小さな小さなラランの声に、リーリーはなんと言ってよいかわからなかった。ウオーフォーに二人で乗って逃げているが、小さな石が降ってきて、何よりも土埃で視界が全くないような状態だった。ズーの速度も普段の半分だ。
「ラランに告げていいものか・・・でもみんな本当に大丈夫なのかしら・・・」
だが神の娘と数人しか知らない作戦をラランに打ち明けた所で、それが即、恋人の無事には繋がらないだろうとも思った。
「とにかく、私たちは安全な所に逃げましょう、ララン」
答えることもできないラランを乗せたまま、ズーを走らせるしかなかった。
一方、ユーシンは聖域の山の見えるところに、数人の警官といた。
「ママ!! 」
「パパ!!!」
泣き叫び、山に行こうとする子供たちを必死で止めていた。
一時間前まではこの二卵性の双子と楽しく遊んでいた。
「え! 神の娘の見習いじゃなくて、もしかしたらこの子たちは
神の娘の娘と息子? 」
救護所になっている場所に自分と一緒にいた。ユーシンはこの中でも創色をしようと戦う仲間たちを思いながら集中していた。
そうしていると「これが戦いである」とまだ十分理解できていない子供たちが、自分の所にもやって来た。
「何をしているの? 」
「色を作っているんだよ」
「面白そう」
試しにやらせてみると筋が良く、二人とも案外嫌にならずにやっていたのは、この緊張を感じ取っての事なのかと思うと、心が痛んだ。
「ママとパパ・・・かえって来るよね・・・」
次々とけが人が運びこまれてくると、彼らも不安になり始め、そして
「ガン!! ガラガラガラ!!!! 」
体の奥底まで響くような大きな音、それが続き、土煙の大風が吹いた途端、
子供たちは暴れ出した。当然のことだ。
「ママ!! ママ!! ママ!!! 」
「パパ!!! 」
「行っちゃだめだ、ここで大人しく待っていて、ダメだよ!! 」
そう言うことしかできない自分が情けかったが
「みんな・・・・無事でいてくれ!!!」
テントの者たちの祈りはそれしかなかった。
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