理由
「いざとなったら・・・警察に行くか。というかコジョウはさすがだな。リックを警察に置いてきたのか」
「馬の係がとても優秀の様で、リックも馬同士にもなりたいだろうから。そう言えば、お前リックというようになったな」
「乗せてもらわないといけないからな、なあ、リュウリ」
「ハハハ、でもラランを乗せたままで、手綱さばきができるかな? 」
「リックは名馬だ、できるさ、乗り手が誰でも。それにラランは大のお気に入りらしいからな。サイサイには頭が上がらないが」
「すごいな、サイサイさんはやっぱり」
食事は警察でみんなと一緒に済ませ、町の旅館に泊まることにした。大きな部屋に靴を脱いで上がり、くつろいでいた。
「でも・・・こんなことを話していていいんですか? 」とリュウリが言うと
二人は急に声をひそめた。
「町全部を敵に回したら、怖いは怖いからな。今の所、何も気が付いていないふりだけでもしておかないと」
「ふり? 」
「しっ! 声が大きい。リュウリもわかるだろう、この町はあそこを「ゴミ捨て場」みたいにしているんだ。だからあの道を馬が通れて、枝も払われていた。荷物を運ぶからだ。この旅館の対応も変だったろう? 他の客には愛想がよくて俺たちにはぎこちない、まあ、ある種正直なのかもしれないな」
「こういうことが一般人に横行したから、あの時代命色の家は隠れたと言われている。祖先を正当化するつもりはないんだが」
「そうだ、罪人を聖域の山に捨てたりしていたらしいな、今は犬猫ってところなのか」
「だから、強く獣の匂いがしたのかな・・・・・怖いな・・・・・本当に」
「何がだ、リュウリ」
「ラランが・・・・・怒ると怖い、こんなことをしているから・・・」
「まあ、それはさておきだ、命色の方法を考えよう、ああ、キザン、お前は学校で本当に強かったな。喧嘩でも格闘技の授業でも負けなしだろう? 」
「いやいや、何を言っているんだ? お前には到底かなわなかったよ、やりあうつもりもなかった」
薄い壁で仕切られた部屋の中、大声でわざと話す二人をリュウリは本当に頼もしく思えた。
次の日、ラランと署長、数人の警官と一緒に現地に向かった。
「これは・・・ひどい・・・聖域の山だ」署長は驚きを隠せずにいた。しかしラランは初めて近寄ったにも関わらず、表情を変えることなく、落ち着いて感覚のすべてを研ぎ澄ましているようだった。何かの声を、これから行う命色の後に何が起こるのかまでを、しっかり見届けようという覚悟をしているようだった。
森は朝靄が晴れて、日差しが徐々に強くなり始めていた。途中まで聞こえていた鳥のさえずりは全く聞こえず、彼らがこの場所を危険と察知していたに違いなかった。
「命色を始めてください」
「わかったララン」
「三人で一緒にやるって初めてだよな」
「そうだな、声がバラバラになってもいけないな、ラランに言ってもらおうか」
「わかりました、ゆっくりでいいですよね」
「お願いするよ」
三人は白化したものの周りに間隔をおいて立ち、その横には水の入ったバケツが置いてあった。その水の量はそれぞれに違っていて、リュウリが一番少なく、コジョウはバケツに並々と、そしてキザンは、リュウリたちのものより二回りほど大きなバケツが左右両方にあった。
「神の怒りを受けぬもの」
ラランの声と同時に三人の男は手を水に突っ込んだ。
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