命色師 リュウリとラランの物語
@nakamichiko
神話
そこがどこなのかはわからない。別の星、別の宇宙、次元の違う世界、これを考えたらきりがない。しかしそこがどこでも、生物が生まれ育てば、私たちと同じようなことが起こる。
でも、やはりどこかが違う、それを面白いと感じるか、恐怖とみるかはこのお話を聞いてからにしていただきたい。
それでは、この世界の人間に近い生き物(面倒なので人と呼ぼうか)が語り伝えてきた昔話をひも解こう。
この世界を創造した神は、すべてに色を付けなかった。沢山の種類のものを平等に考えてのことだったが、しかしその世界で生きているものにとっては不自由極まりない。そして人がつくられ、しばらくたった時、彼らは神様にこう言った。
「神様、私たちをつくってくださり、本当にありがとうございます。でもできればもう少し、ものと物との違いが分かればと思っております。誤って毒のものを口にして、命を失う子供があまりにも多いのです」
それを聞いて、神様は人間に色を付けることを許した。人は石を砕いてすりつぶし、それをものに振りかけると色が付いた。こうやってあっというまに総てのものに色が付き、人々は暮しやすくなったものの、他の生き物の声など全く聞かない。自分たちが食べられるものだけにはきれいな色を付け、他のものには余った色を使ったりした。神様は何度かそのことを諫めたが、人間は
「色は我々が作っているのだから」という始末だ。
とうとう神様は怒り、地上のほんの一部分だけを残して、人間から色を奪った。不自由な世界に戻された人々は、やっと自分たちの身勝手さに気づき、その生活にしばらく耐え、神の許しを得た後また、色を付けることを許された。
このようなことを二度と起こすまいとの強い誓いを証明するため、人間は良い色石(色のもとになるもの)が取れる幾つかの山を神に捧げた。色を付けないまま残し、そこを聖域として、誰も近寄れないようにした。また色を失ったものには、その声を聞いて、色をつけることとした。このやり方こそ、神の怒りを唯一免れた人々のものであり、これができる人を命色師と呼び、今なお存在し続けている。何故なら神の命に背くものは必ず現れ、また色を失い、また付けていかなければならなかったからだ。
そして何よりも現実として「色のない聖域」は存在している。そこに入れば人間も動物も植物も色を失い(白化という)やがては死に至る、色がなくてはもう生きることはできないというかのように。そしてこの聖域に近づくことのできる者、それはほんの一部分の許された者たちだけなのだ。
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