ご都合主義が嫌いな俺と異世界少女

@oekakiman

第1話 ご都合主義は嫌い

「異世界転生物語は現実逃避じゃないよ。」


 俺の幼馴染の口癖だ。




 まともに取り合う気はないのに、いつも同じことを俺にいってくる。


 女のくせに男が好きそうな「異世界転生」や「ハーレム」ものの小説を好んで読んでいる変わり者だ。


 黙っていれば美人なんだけどな・・・。




 + + +




 俺の名前は「太郎」。高校2年生。


 本名ではないがみんなから太郎と言われている。


「完璧超人すぎるから平凡なのがいいな」と幼馴染がつけたあだ名だ。




 自分でいうのもなんだが俺は結構恵まれてると思う。


 実家はそこそこ裕福な家庭で俺に過度な期待もしなければ干渉してくることもない。


 高校一年生の時に出場した夏の大会時点ですでにサッカー部のエースだったし、今年はキャプテンを任されている。


 テストの点数も学年TOP3に毎回入ってる。3年間続けたら学校初の快挙らしい。


 彼女はいないけど告白された回数ならもう両手じゃ収まらないくらいだ。




 周りは俺のことをうらやましがるけど、俺だって何もしないでこうなったわけじゃない。 


 みんな「お前は完璧すぎる」とか「何も悩みとかないだろ」って言ってくるがそんなことはない。


 俺は天才ではないから部活も学業も両立しようと思ったら人の倍やらないといけないし、少しでも調子が落ちようものならすぐに噂になってしまう。


 あいつはヤリチンとか悪口を言われていることも知ってる。


「悪口とか気にしねえし言いたい奴は言わせておけよ。」


 そんなセリフを何度吐いたかわからない。






 本当は他人の評価はすごく気になる。






「・・・ハァ」






 学校への登校中はいつもため息が出る。


 異世界転生チート能力物語が好きなアイツからしたら俺は悪役か主人公の従順なしもべか。


 考えるだけで吐き気がしてくる。


 俺が何の努力もなく今の成績だと思ったら大間違いだ。


 だけどそういう「努力」とか「夢」とかいうのはご都合主義者たちからしたら「無いもの」なんだろうな。




 異世界転生チート能力物語のストーリーでは主人公は最強能力を持ってて、努力をすることもなければ挫折することもなく物語が進んでいくのが一般的らしい。




 なにそれ。くだらない。




 アイツはそういう物語も読めば面白いというが信じられるわけがない。


 そういうのは、自分が現実世界でうまくいかないのは運や才能だと思いたいやつが見るんだと思ってる。


 情けないやつらが見るもんだ。俺には合わない。


 あいつらはおとぎ話のような奇跡や一発逆転が現実世界にはないと知っているから作品の中に自己投影して現実から逃げているんだ。






「誰のために俺が努力してると思ってるんだ。」


「俺の気持ちもしらないで・・・・クソッ!!!」






 ご都合主義者なんか大嫌いだ。

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